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進路変更?

「ねえ、本屋に寄って。」

塾の帰り道、たいてい週に一度くらいの割合で翔兵が言います。塾の授業が10時に終わってから寄れる遅く店は限られているので、そんな時に寄るのはいつも県道沿いにある大きな本屋。目的はたいてい、本などの参考書よりも文房具です。

進学校だけあって、ノートやペンの消費量がハンパない。クリアファイルもすぐに壊れます。ノートも普通の厚さのものではすぐに使い切ってしまうので、ページ数が多いもの、特に100枚ノートがお気に入りです。ペンも本体ごと換えるのではなく、替芯をまとめ買いです。しかし、そのペンも何回か交換しているうちに本体が天寿をまっとうするので本体の買い替えも度々。シャープペンシルも傷んでくると、持ちやすさと好みのルックスの物を楽しそうに選んでいます。この日のお買い物は三色ボールペン。色を使い分ける時にペンを持ち直すのが億劫だからと。シャープペンシルは見ただけで買いませんでしたが、この色いいなあ、などと言いながら楽しそうに手に取っていました。

「理工学部に進んで、こういう書きやすいペンの開発をしてみるのも面白いかもなあ。」

買い物を終えて車を発進させた時、翔兵はそんなことを言い出しました。

翔兵は物理か数学の先生になりたいと一年生の頃からずっと言っていたので、意外でした。本人が頑張れるのであればどちらでも良いのですが、違う進路のことを言い出したのは入学以来初めてなので驚きました。


学校の先生になるのも悪くないだろうけど、元不登校児という事実が生徒や父兄に知られた際、どう映るのかという不安もあったし、どうしても教師の中でも学閥があるということで、有利に進もうと思うのであれば、学部どころか大学も限られてくるということも不安でした。そんなわけなので違う進路を視野に入れていることに少しホッとしたのも事実です。


特に元不登校という過去については、生徒や父兄を不安にさせるかもしれないし、逆にその過去が父兄に過剰な期待を持たせるかもしれません。どちらに転んでも本人への負担になりかねません。しかしもう私の手を離れた次元のことですから、私は反対するわけでも賛成するわけでもなく、見守るだけです。

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