表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/92

未だに居座る黒くて重い石。

この春休み、璃子が卒業旅行に出かけました。翔兵もお友達と旅行に行く予定があります。行くことに反対するつもりはありませんでしたが、複雑な気持ちでした。そう。私の中の黒くて重い石がずーんと重みを増しました。

というのは、私は高校を卒業したときの卒業旅行、何ヶ月も前から友人と約束していたのに行くことが叶わなかったから。

どうしてかって?私はその春、本命ではないにしろ短大に合格し、それなりに現役合格を手にしたのですが、一浪していた年子の兄がどこにも受からず、「お兄ちゃんがかわいそう」という理由で、私は合格してからというもの、母に無視され、残りの日程の受験に持参する弁当すら作ってもらえず、それでも家の手伝いだけは頼んでくる、という異常にいやな思いをしたから。

旅行は、最初から親がお金を出してくれることになっていたのに、ダメといわれたので、自分の口座のお年玉を使おうとしたところ、母が口座から勝手にお金を引き出していて、身動きが取れなくされていました。


そして、このあたりの地域だと、卒業と同時に自動車学校に通うのが通常なのですが、兄が「大学に受かってからね」ということになっていてまだ免許を取っておらず、二浪に突入する前に気分転換に免許を取らせることにしたのです。それについても「七帆のほうが教習の進みが早かったらお兄ちゃんがかわいそうだから、免許を取りに行くのを待ってくれ」と言われ、同級生と一緒に受けられるはずのものも受けられず。


卒業旅行か自動車学校、どちらかは叶えてほしい、家の手伝いだけはするから、と何度言ってもダメの一点張りで、私は本当の子じゃないのか、とか私はそんなに価値がない人間なのか、と合格通知を手にしたのに、本当に悲しい春でした。


そのことについて、後から父が「あのことは本当に悪かった。」と何度も謝ってくれましたが、母からは謝罪らしい謝罪もなく。そして私にしてみれば、進路の決まっている18の春という、そのタイミングを最悪のものにされたことが許せませんでした。このとき私が父に返した言葉は「悪かったで済むことならここまで残念がったりしない」でした。

その後、親なりにいろいろとフォローをしているつもりだったと思われる行動はありましたが、時間は戻せない。だからこそ今でも許していないんだと思います。

本当ならもう時効にするのが大人なんでしょうけど、今でも何かにつけて、兄の家の事情に巻き込まれたり、いろいろとあるので、時効にできないままでいます。


この黒くて重い石が消せないままでいることで、翔兵の不登校を引き起こしたんだと思います。

もう子供たちは二人とも元気にしていますが、私の中のこの石は今でも居座っています。いずれ親の介護だのなんだのという問題が出てきたときにまた重みを増すのかもしれません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ