気づいたら。
「ねえ、大学まで行きたいと思うんだけど、どうしよう?」
完全不登校だった翔兵が突然そう言い出して、入院および院内学級への通級を決めたのはこんな時期だった。当時の翔兵は中学二年生。気づいたらあれから3年が経っていた。
入院してからは夜になると、「こんなことなら、サボらずに勉強しておけば良かった。」「不登校だったことを院内学級の友達に知られてしまった。」などとガラケーで泣きながら電話をしてくる翔兵を、心が折れないようにとヒヤヒヤと見守る日が始まった頃でもあった。今は頑張っている様子をずっと更新しているが、今だって手放しで安心しているわけではない。
中学三年生の復帰したばかりの時期は、少し帰りが遅くなると、不登校だったことでいじめられているのではないかと心配ばかりしていた。受験が大詰めになってきた頃だって、突然やる気をなくしてまた引きこもってしまうのではないかとヒヤヒヤしてきた。不合格への不安からよく泣いた。「いっそこのまま…」などという物騒な言葉まで飛び出した。しかし受験に大して全く不安がない子供なんて、ごく一握りだろう。不安になるのは、それだけ受験に向き合っているという証拠でもあると思って、愚痴にも極力つきあった。
大変だったけど、あの時期をなんとか乗り越えたことで翔兵は少しは強くなった。一時期は五月雨登校になった璃子も、進学校で頑張っている翔兵を見ているせいか、大学のことも含めた高校受験を考えている。私も手を離すということを覚えた。夫は、どうなんだろう。少なくとも、翔兵の高校受験に比べてピリピリしていない。




