璃子の志望校選び。
璃子がいよいよ高校受験を迎えることになった。璃子は五月雨登校までは経験しているが、不登校まではしていないので、夫も今回はそれほどピリピリしていないのが救いである。あの石つぶては勘弁してほしいものである。
公立が本命だが、私立も受けなくてはならない。志望校を決める際には多少なりとも話し合いをした。
「将来、何になりたいとか、何をやりたいとかいうのが全くない。」
「大学のことも行きたいとも行きたくないとも思っていない。」
こういう考えの中学生のほうが多いのが実情であろう。私もそうだったし。
「じゃあ、なんとか入れそうな学校の中から、進学率の良い普通科がいいんじゃないかな?大学に行きたいと思ったときに身動きが取れるようにしておこうよ。」
「わかった。そうする。私立と公立ならどっちが本命にしよう?」
「この辺は公立に行く子のほうが多いから、公立に行けば誰か知っている子が一緒だと思うよ?」
「じゃあ公立にする。」
そんな程度で話はまとまり、あとは志望校を絞ってプリントに書いて提出のみ。通学の便利さ、制服のデザイン、校則の厳しさ具合、そして成績との兼ね合い等々をネットで調べて照らし合わせる。
「こういう高校だと、おばあちゃん(私の母)イヤがるかなあ?」
私立のすべり止めについて調べていると璃子が言った。そこは、私の頃からガラが悪いことで有名な高校。間違いなく私の母が何か言うだろう。母が見栄っ張りでそういうことにうるさいことも、孫のことにまでとやかく言いたがることも、璃子も熟知している。
しかし、それについては私が母を黙らせれば良い。私の心配は別のことだ。
「おばあちゃん云々よりも、ガラの悪い学校は璃子がやりづらいと思うよ。おばあちゃんのことは心配しなくていいから、本当に通うことになった場合に納得して通える学校を選べばいいよ。」
不安が少しもない受験生なんて一握りもいないだろう。その状態へ、横やりを入れるのは失礼千万である。見栄よりも自分が居心地がよく、納得して通える学校を選んでほしい。公立が本命といっても、私立の高校に行く可能性もゼロではない。
「そっか。」
真面目な気質の彼女は今でさえ、不良グループの子たちに恐怖感や嫌悪感を抱いているのだから、そういう学校に通うというのはさぞかし居心地が悪いだろう。成績の面でいけば、流されなければトップクラスに居られるだろうから、進路には困らないだろう。ただし流されなければ、の話。
璃子二人、頭を突き合わせて相談した結果、すべり止めも本命もそこそこにおとなしめの高校の名前を記入して提出。後日、成績との兼ね合いも、すべり止めを受けなくても大丈夫かもしれない、ということを担任から言われたそうなので、ホッと一息。




