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マンガ読んでくる。

翔兵はマンガ喫茶が好きだ。以前は私が行くときに便乗してきたりもしたが、例によって多忙なため、便乗のタイミングがなく。「連れてって。」と言ってくるときは私が一緒に行くほどの時間が取れない。または送っていくのは良いが、迎えに行くのが厳しい。という状況だったから。

とはいっても、我が家の周辺にはマンガ喫茶やインターネットカフェは5軒ほどあり、そのうち3軒は高校生の体力なら自転車で行ける。だから自分で自転車で行けば?と言うとそれはイヤだというので、放っておいた。かねてから、塾の送迎以外で車を出させないでほしいと頼んであるし。

そんなある日のこと。夕飯の揚げ物をしている最中に言い出した。

「マンガ喫茶行きたい。連れてって。」

「夕飯の支度してるから無理だよ。」

「もうやってらんねーよ。行ってくる!」

そう言って勝手に出て行ってしまった。久しぶりにワガママが出た。イラっとしたが、食事代を渡さないつもりで放っておいた。普段の外出なら食事代を持たせるところだが、こんなに急に勝手に出ていく奴に食事代を持たせる気はない。やってらんねーのは、こっちですけどね。それに、本当に行きたかったら、こうして自転車で行くことができるのだから。いちいち車を期待されてもね。

まあ、夕食を食べてから行くと、高校生が利用できる時間帯の制限にひっかかるので、急ぎたかったのだろうが、突然言い出されても困る。

その日は3時間ほど、マンガを堪能して9時過ぎに帰宅し、揚げ物とともにカップラーメンをすすっていた。さすがに、自分勝手なことをしたという自覚だけはあったので、食事代は期待していなかった分、空腹をガマンしてマンガを読んでいたんだとか。

以来、彼は「マンガ読んでくる。」と言って時々、出かけるようになった。当然ながら食事代以外は自腹だし、自転車利用。予算にしてもお小遣いをそれほど与えているわけではないので、本人にしたらちょっとした贅沢であろう。

自転車で自分で出かけることの気楽さがわかったのかどうかは不明だが、このときばかりはイキイキと自転車のカギを手に玄関を出ていくようになった。

翔兵は自転車をあまり使わない。理由は「疲れる。」「道に迷う。」。めんどくさがりの方向音痴なのだ。

平日は駅までの往復は徒歩だし、塾は距離があるので私が送迎しているので自転車を使う機会は少ない。こんな時くらい乗ってあげないと自転車がかわいそう。

自転車で自力で行動するのは自由でいいと思うんだけどなあ。

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