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多忙な夏休み。

甲南高校は夏休みを「夏季休暇」とは呼ばない。「夏季学習期間」と呼ぶ。というのは、お盆以外は月曜から金曜までほぼ毎日、午前中は補習授業があるのだ。そしてそんな日の午後は大半が部活である。確かに「夏季休暇」などと呼ぶのは詐欺に近いだろう。運動部の生徒の大半は、ほぼ毎日、弁当持参で朝から夕方まで学校で過ごす。

さらに夜には塾が週に三回。夏期講習期間ということで、通常なら週に二回だが、夏の間は三回である。ほとんど通常と変わらない生活リズムだ。

おかげで私の弁当作りにも「夏季休暇」はほとんど無く。安全第一のメニューに保冷剤をガッチリと添えた弁当を作る。冷凍のまま入れられるメニューの作り置きも冷凍食品も欠かせない日々。

そして璃子のほうは、補習こそないが、平日の午前中は部活のある日が大半。弁当の必要な日も時折。

平日は寝坊こそできないが、昼間に二人してゴロゴロとしては「ヒマ~。」を連発されるよりは良いし、昼間は自由な時間が増えたのはありがたかった。

実のところ、翔兵がこの流れについていけるのか心配ではあったが、時間をうまく見つけては友達と遊びに出かけたり、何もない日は好きなだけ睡眠とゲームを堪能して乗り切った。

そして、この期間には大学のオープンキャンパスにも出かけた。塾のほうから、一年生のうちに行っておくように言われたためだ。

もし言い出したら付き添うつもりではいた。言い出すまでは、と黙って見ていたが、言い出すこともなく、自分で日程や道程を調べて一人で出かけていった。

「交通費と昼食代をください。」

彼が頼んできたのはそれだけである。成長したものである。


基本、不登校の子供に対しては、周りのの大人は「黙る」が基本である。そして、こちらが無理のない範囲で要望をきいてやることが必要である。かといってこちらから「転ばぬ先の杖」を用意すべきではない。話を聞くときも自分の意見あまり持たないように「黙って」聞く。そして見ているときも「黙る」ことが必要なのだ。自力でやろうとしていることにをわざわざ手を貸す必要はない。自立のチャンスは、そこらじゅうに転がっているのだから。


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