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手続き。

一学期の中間試験を終えたばかりのある日曜日に入塾の手続きに向かった。バッグには中間試験の順位表と印鑑が入っている。この順位表を持参するようにと電話で言われていた。


この時の私は三月下旬から始まっていたアトピーの、脱ステロイドの期間に突入していて、本来ならば家で寝ているべき体調である。だましだましハンドルを握る。痒みもさながら、顔も腫れ、手もすごい状態なので状態で電車に乗ることを思えば、車で行くことができるのは若干の救いであるが、このような少々の緊張を伴う手続きなどの用事はストレスを感じるらしく、かなりの痒みである。今思えば、電車で行かなければならないのであれば、手続きには向かえなかっただろう。


中間試験の順位は入学説明準備の試験よりも格段に上がっていた。この勢いで流れに乗ってしまえば、息切れさえしなければ、大学進学という、本来の目的達成につながる大きなチャンスになるだろう。期待をしすぎてはいけないと思いつつ、期待に胸が膨らむ。

痒みに耐えながら、塾長である吉田先生との面談。月謝やカリキュラムの説明をひとしきり受け、サインや押印を済ませ、現段階での進路の希望などについて簡単に話し合った。志望校に関してはもう少し上の順位を目指すことが必要だといわれた。そして一通りの手続きが終わったところで吉田先生が切り出した。

「こちらが把握しておいたほうが良いことはありますか?」

言うべきか言わないべきか迷って私は口を開いた。もしものときのために知っておいてほしいと思ったのだ。

「本人が言うまで知らなかったことにしておいてください。元不登校児です。中学校は一年生の最初の二ヶ月だけ登校して、その後、三年生から復帰しました。」

私の言葉は、吉田先生への豆鉄砲となった。

「…よく甲南高校に受かりましたね。」

しばしの間のあと、そう言った吉田先生はまだポカンとしていた。甲南高校は偏差値60超えの進学校である。合格したときは私も腰を抜かしたのだから、この先生が驚くのも無理はないだろう。


私の体調も翔兵のメンタルも気がかりな中で、こうして痒みに耐えながらの入塾手続きが完了した。

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