入学直後。
「本校は進学校で、そこそこの成績のお子さんが集まっています。そのため、試験ではこれまでに取ったことのない順位を取ることがあるとは思いますが、320人の生徒がいたら、320位の生徒がいるのは仕方ありません。ご家庭でもそのように声かけをしてあげてください。」
入学式の日、進路指導の教諭からそのように話があった。そんな矢先に、入学準備説明会の日の午前中に受けた試験の結果が返ってきた。
「すごい順位取っちゃった。」
翔兵がうなだれて結果表を見せてきた。そりゃそうだろう。320人中の250番代なのだから。彼の成績としてはありえない順位である。確かにビックリな数字である。私としても少々ショックではあった。でも、元気に通えることが優先。なんとか赤点を取らないようについていけば、当初の目的である大学進学は叶うだろう。
「仕方ないじゃない。粒ぞろいの環境に入ったんだから。よし、ここからがスタートだよ。」
少なからず、給食を食べるためだけに学校に行っていた生徒は、この学校にはいないだろう。
「でもさあ。これって…。」
翔兵がますますうなだれる。
「まあ、ビックリするよね。変な話をするようだけど、去年一年間、そこそこにお友達とも遊んで、春休みもほどほどにのんびり遊んでの結果じゃない。それに、内申点が足りないのに受かったわけじゃない?当日点が取れたってことでしょ?まだまだ伸びしろはあると思うよ。」
そうである。学校に復帰したとたんに、お友達とよく出かけるようになった。ゲームも相変わらずやっていた。しかし、ゲームの時間は多少なりとも自分でセーブできるようになっているので私からは特に注意はしなかった。
「そうかなあ。」
「そうだよ。一年間、わき目もふらずにガリ勉した結果だったら心配だけど、そうでもなかったじゃない。」
「ママ、この成績を見て、怒らないの?」
そうか。怒られると思っていたからよけいにうなだれていたのね。
「別に、怒る理由もないと思うよ。」
「あのね、国語は現代文は点数が取れたんだけど、古文が全然だったの。」
本当だ点数配分を見ると、古文は0点。
「ホントだね。古文が痛かったね。」
「それにね、数学もあとからミスに気づいたところも何箇所かあったんだ。」
「弱点に気づいているなら良いんじゃないかな。」
ここで叱る、または怒るのが普通の親なのかもしれないが、やる気を持って元気に過ごしてほしい気持ちがあるので、怒るという選択肢は私にはなかった。
普通の親じゃなくて結構。無関心と誤解されても結構。翔兵が元気でいてくれるのであれば。元気な体があればなんとかなる!




