卒業式。
私立高校の入試が終わって約三週間後、卒業式を迎えた。
ああ、良かった。
みんなと一緒に体育館に入場してくる翔兵を見てホッとする私は、そっと涙を拭った。学校に復帰してからの約一年間、たくさん泣いたけどよく頑張った。おこがましいようだが、私も踏ん張り時だと思い、頑張った。卒業証書を別室で受け取ることも覚悟していただけに、感無量である。
モニターに映し出される翔兵は、元気に堂々と卒業証書を受け取り、歩いている。集団の中での生活に疲れを見せつつも、楽しんでいた一年間。遅れを取り戻して、全日制の高校に行くと、急スピードで巻き返した一年間。根性見せたね。
この時期、私は変わったと思う。私立中学の受験をめぐってピリピリしていた頃とはかなり変わった。まず、本人が元気であること。元気な体でいればなんとかなるんだと、気持ちを切り替えられたこと。だから翔兵も立ち上がる気になれたのだろう。
相手を変えたければ、自分が変わること。相手を変えようと思わないこと。ありのままの自分や相手を受け容れること。それがどんなに大事なことか、それをわからないうちは自身も相手も苦しめてしまうこと。当たり前のようで分かっていなかったのだ。
式が終わると、屋外で卒業生と父兄と担任で旅立ちの式が行われた。風は冷たいが晴れた空の下、笑顔が咲き誇る。旅立ちの式はすぐに終わったが、みんななかなか解散したがらず、見守っていると、ある男子生徒が翔兵に近づき、肩車をした。翔兵は友達の肩の上でご機嫌で微笑んでいる。復帰してから、色々と心配していたけど、取り越し苦労で終わった日々に心から感謝した。小柄な翔兵は同級生に可愛がられていたようだ。
私立高校に行くことが決定している生徒は、もうすっかり春休みだが、公立受験チームはまだ完全に春休みとはいかないが、今日だけは受験勉強をお休みする生徒もたくさんいるだろう。
翔兵も、公立はチャレンジ受験でもあるので、油断はできないが、それでももう、本命に受かっているので晴れ晴れとしているようだ。
気長に静かに見守ってくださった先生方、本当にお世話になりました。
同級生のみんな、翔兵と仲良くしてくれてありがとう。卒業おめでとう。
翔兵、よく根性を見せてくれました。おめでとう。




