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私立入試三日間。Ⅰ

いよいよ私立入試が始まった。翔兵は三校受験するので、三日間続けての受験。普段の登校時間よりもかなり早く家を出なければならない。しかも弁当持ちで。本人の体調も気がかりだったが、私が寝坊せずに起きて弁当を作れるかということにも緊張した。

一日目―滑り止めの清真高校。和也くんと仲良く自転車に乗って出かけていき、笑顔で帰って来た。「集団面接では爽やか系でいってみた。そしたらね、『知らない奴がいるなあ~。』ってみんなに笑われちゃった~。」といつもと別人キャラで臨んだ様子を楽しそうに話してくれた。

二日目―本命の直木学院。電車で行くので、学校の最寄りの駅に集合することになっている。

「駅の自転車預りってどこにあるの?どうやって預けたらいいの?」

「駅まで行けばわかるよ。すぐ近くにあるから。係りの人がいるからそこでお金を払えばいいよ。」

前払いか後払いか覚えていないが、その場で聞けばわかるだろう。

「場所、わからない。帰りは駅から歩くから送ってって。明日は自転車で行くから。」

電車で出かける機会が少なかった上に、いつもは徒歩か車での送りだった。そのため駅の自転車預りを利用したことは一度もなかったのだ。

帰りの時間がはっきりしない上にスマホなどは持っていけないので迎えに行くのは無理かもしれないし、寒い中を歩かせるよりは自転車の方が楽だろうと、駅との往復は自転車で、ということに決めていたのだが、やたらナーバスになっていた(第一話参照)ので、自転車預りに対してハードルを感じていたようだ。

本命校の入試だけにかなり緊張しているようで、助手席ではうつむいて無言。

直木学院の受験は勝算があるといえばある。内申点を見ない、面接もない上に偏差値としては安全圏ギリギリだが、安心はできない。

「ほら、頑張っておいで。」

ロータリーに車を着け、声をかけると、のっそりとロータリーに降り立つ翔兵に声をかける。

「ありがとう。いってきます。」

消え入りそうな声でそう言って、うつむいたまま駅の階段を登っていった。

この日は帰ってくるなり泣き出した。手応えがなかったから、もうダメだと思う、と。休み時間、何度も泣きそうになったらしい。帰りも涙をこらえて電車を乗り継いで来たのだろう。私まで泣けてきた。

三日目―第二志望の芥川高校。駅の往復は約束通り自転車で行かせようと思っていたが、積もるほどではないが雪が降っている。歩いて行くのか、自転車で行くのかと見ていたら案の定。

「お願い。送ってって。」

やっぱりね。まだナーバス継続中の彼には雪が自転車預りのハードルを更に高くした。

甘やかすのはどうかとは思ったが、これで入試を無事に受けられるならばと2日連続で駅まで送った。

前日の様子を見ていると、どんな様子で帰ってくるか心配だったが、この日は普通の表情かおで帰ってきた。手応えについては「普通」だったらしい。前日よりは手応えがあったようだ。この学校、立地が良いせいか、受験者数が半端なく多かったらしく、高校の校舎だけでは足りず、翔兵たちは大学の教室で受験をした。つまり、倍率も半端ないということになる。レベルは直木学院よりは少し下であっても、決して安心できない。しかもこちらは面接はないが内申点を見るのだ。第二志望はもう少しランクを下げることを考えるべきだったと思っても後の祭りである。受かりますようにと祈るのみである。


とにかく、三日間の入試を予定通り受けられたのだから、あとは祈るのみ。

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