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ワードローブ事情。

冬が始まった頃のこと。

「羽織るものがほしい。」

翔兵が言い出した。

「長めのベンチコートがあるでしょ?」

「あれはもう小さいし、あんなのじゃなくってさあ…。」

言われてみれば、大き目のベンチコートは小学校六年生のときに買ったものなので、サイズアウトも当然だろう。次の冬からはラプンツェル生活だったので、外出用の上着は必要がなく、そのままになっていたのだ。確かに普段着としてベンチコートでウロウロしている中学生は見かけない。

「そっか。近いうちに買いにいこうか?」

「うん。それでさ、とりあえず今、羽織るものがほしい。」

今から出かけようというタイミングだったので、とりあえず私の黒のダウンジャケットを貸した。カジュアルショップで買った、シンプルなデザインものなので、パッと見は女物だとわかりにくいだろう。痩せている翔兵にはサイズもちょうどよかった。


「これ、いいなあ。このままお下がりでもらっちゃダメ?」

数時間後に帰ってきたときに翔兵が言った。私が貸した薄手で軽いそれをずいぶん気に入ったらしい。黒というのも気に入った要素の一つだろう。

「それは女物だから、ちゃんとメンズのほうで同じのを買ってあげるよ。」

数日後に私のダウンを買った店に連れて行くと、まったく同じものではないが、メンズのコーナーで黒のシンプルなものを嬉しそうに選んでいた。不審者ルックからは卒業したが、黒は好きなのだ。

そういえば夏にも服を買ってほしいと言われ連れて行ったときも黒のポロシャツをとても気にしていた。

「コレ、いいなあ。でもなあ。またアキラに真っ黒とか言われるかなあ。でも、コレいいなあ。」

とハンガーにかかったそれの前で立ち止まっていた。パンツを明るい色にしたら大丈夫だよ、と一緒に買ってやったらずいぶん気に入って色が褪せるほどにそればかり着ていた。不審者ルックは卒業し、黒を着たいがために「黒を取り入れたコーディネート」を工夫しているところである。

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