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キミが教えられる立場では?

ガラケーからスマホに変え、ラインが大活躍しだした、そんなある日のこと。

「和也に勉強を教えに行ってくる。」

昼下がりに急に飛び出していってしまった。ちょっと待って。教えるって、キミは教えてもらう立場では?遊びに行くことに対して、そのような口実をつけて出かけるタイプではないので、勉強のことは本当なのだろう。ついでに遊んでくることも想定内だが、教えに行く?キミ、教える立場?

和也くんというのは、小学校のときからゲーム好き同士で仲良くしていて、気の優しい子である。それは良いが、改めて言おう。

『キミは教えてもらう立場では?』

確かに、元不登校児にしては、なかなかの成績を取ってきている。二年生に入院して復帰の準備をしていただけのことはある。しかし、教えるほどの理解力を持っているんだろうか?

しかし、私の心配をよそに、和也くんの家にしょっちゅう行くようになった。夏休み中は入り浸っているに近い状態だった。


「ウチの子がしょっちゅう勉強を見てもらって、ありがとうね。バイト代払わなくっちゃね。」

夏休み明けのこと、参観日で和也くんのお母さんに言われた。イヤミじゃありませんようにと祈る私。

「いえ、ウチこそ入り浸ってごめんね。正しいことを教えられているのか、怪しいところで。」

和也くんのお母さんは、子供たちの友人が家に来ても、お構いをしないかわりに、気にしないタイプの人なので、この点では大変助かった。夏休みの間にラプンツェルの復活を防止するという点でもこちらとしても助かった。


復帰した当初から皆とワイワイやっていたことに対して、先生に頼まれて仲良くしているのかもしれないと思っていた。確かに最初はそうだったかもしれない。「少し気にかけてあげてくださいね。」という程度は言われていたかもしれないが、半年近く経ったこの時期でも和也君をはじめ、色々なクラスメイトから声がかかって仲良くやっているということにはホッとした。

周りの人の話ではもともと、学校ではたくさんのクラスメイトに囲まれている方だったそうだが、復帰してもそれは変わっていなかったようだ。

不登校の経験のある友人の話では、友達とワイワイやって、良くしてもらっていても、自分の居場所じゃないと感じることが原因になることもあるそうだ。

彼の不登校の原因がわかるのはずっとずっと先の、笑い話になった頃かもしれない。

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