表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/92

入学式準備。

私の胸中が重みを感じていようがいまいが一日ずつ春休みは過ぎていった。春休み中に生活のリズムがまた狂うのではないか?新学期になって「やっぱり行かない」と言い出すのではないか?ここまでの進歩を認めたいと思いつつも、欲が出てくる。この欲が重みの原因だ。

私の心配とは裏腹に、春休みの間も、生活のリズムが乱れないように朝はきちんと起きる毎日。本人はいたって元気そうである。

「本当に登校が実現するかもしれない。」

どうしても期待が顔をのぞかせる。毎日が葛藤だった。

そして約二週間後、いよいよ学校に行く日が来た。入学式前日の入学式準備だ。この日は、制服ではなく体育用のジャージで登校し、午前中に作業をして下校してくることになっている。そうそう。ほとんど着なかった体育着も一式買い換えたのだ。最初に買ったそれらをほとんど着ることなく不登校が始まったので新品同様だったのだが、サイズアウトしてしまっていた。もったいないが仕方ない。今度は活用できるといいな。いやいや期待しちゃダメ。そんなことを思いながら翔兵を連れて買いに行ったのがほんの二日前のことだった。

まず、自分で起床できた。ミッション一つ完了。朝食もすませ、ジャージに着替えた。さらにミッション完了。本当に彼は出発するんだろうか。

「行ってきまーす。」

お。玄関を出て行った。ミッションさらに完了。とりあえず行くという目的は、今日だけは果たせた。十分だ。


「四人くらいの男にハグされた。“会ってみたかったよ”って知らない奴にもハグされた。」

数時間後に帰ってきた彼はそう言った。なんでもこの日はかつての二年生の教室に集合することになっていて、最初で最後の二年生の教室に足を踏み入れた彼は、知っている男子やら初対面の男子にハグされたらしい。

「へー。ハグされたんだ。」

目頭がちょっと熱くなるのを隠しながらなるべく平静に相槌を返した。


よかったね。気にかけてくれる人がたくさんいて。将兵、あなたは決して一人ぼっちじゃないよ。みんなの中に飛び込んでごらん。ダメだったら、戻ってきてもいいから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ