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学年末テスト。

「そろそろ学年末テストだよね。受けさせてもらえるのかなあ?」

暦の上では春を迎えようとしている頃、翔兵が言い出した。院内学級に通級している生徒たちは原籍校での試験を院内学級で受け、成績にカウントされる場合もある。そのため、回りは試験勉強に勤しんでいるのだが、しかし、翔兵や私のところにはテストのお声がけもない。そこで原籍校である中学校に電話してみると、籍が院内学級にある期間は受けられないという返事だったが、他の生徒たちはそのようにしているということを伝え、元気が出てきて、高校のことも考えているところなので、なんとか受けさせてもらいたいと交渉してみた。実際のところ、担任教諭はそのような考えがなかったので、声をかけるという考えは持っていなかったらしい。

交渉の結果、実際の成績にカウントすることはできないが、同じように試験を受けて、その点数の場合の順位を出してもらえることになった。

遅れを取り戻すだの、元の学力まで回復させるだのと言っていた結果はいかに?結果次第でやる気を失くしてしまわないだろうか?本人は受けられるということで喜んでいたが、私は不安だった。

学年末ということで9教科すべての試験範囲を教えてもらい、試験に臨んだ。順位よりも本人の気持ちが落ちてしまうのではということが気がかりでたまらなかったのだ。しかし、学校に復帰してから、いきなり久しぶりの試験を受けるよりは、慣らしという点では良いだろう。


「順位が出たよ。」

数日後のある日。洗濯物を届けに行ったら、翔兵が一枚の紙を差し出した。学校の先生から結果の用紙が届けられたのだ。結果は中の上。入学当初、一度だけ受けた試験は学年10位以内だったことを思えば、まだまだだが、学校に行っていなかった、何もしていなかった一年半のブランクを思えばなかなかの好戦といえよう。

順位には不満そうだが、それほど落ち込んでいないようで一安心。

「学校に戻ったら、もっと順位を上げられるかなあ。」

大丈夫だよ!などと無責任に言う自信のない私。しかし心が折れないようにと祈るばかり。どう言ったら良いのやら。

「…やってみる価値はあると思うよ。」

やっとしぼりだした一言。この順位が全てではない。そして、スタート地点に立ったばかり。そんな翔兵に無責任なことは言えない。そして過剰な励ましも、わざとらしさが伝わるだけだろう。

「戻ったら、元の順位まで上がれるかな。」

何やら欲が出てきたようだ。それに変わったな。幼稚園のころは、かけっこでビリッけつを笑顔で走っていたくらい、負けん気とは無縁ののんびり屋だったのだ。

何やら大きく何歩も歩き出していることを感じた2月だった。

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