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会いに行きたい。

「翔兵の病室は何号室だ?」

「それが…。」

将兵が入院して間もないある日、父が電話してきたのだが、私はためらった。翔兵は入院するときに、学校のみんなには入院のことを話さないでほしい、そして身内にも見舞いにきてほしくないので病室を教えないでほしいと言ったので、教えて良いものかどうかためらったのだ。なので学校側にも生徒たちには内密にしてもらっていた。

「身内が行ってダメということはないだろう?」

その旨を説明すると父は言った。確かに、ラプンツェルの時期は、顔を見せることも嫌がっていたのだから、ジジババとしては会いに行ける絶好のチャンスである。

「まあ、確かにそうなんだけどねー。」

「まあいい。とにかく教えてくれ。見舞いに行ったらこちらから説明するから。」

翔兵が怒らなければいいけど、と不安になりながら病室を教えると、母がその日のうちに訪問したらしい。翌朝には翔兵のお気に入りのお菓子類が病室の冷蔵庫にいくつか入っていた。

「ばあちゃんが、おやつをたくさん持ってきてくれたの。」

「ごめんね。病室を教えることは、いったんは断ったんだけど。」

「うん。別にいいよ。」

翔兵は気分を害している様子はなく、お気に入りのお菓子にうれしそうにしていた。今思えば、入院直前はかなりナーバスになっていて、あんなことを言ったのだろう。

それからは、母が毎日のように夕方におやつを持参して足を運んでいた。


しかしある日のこと、翔兵がムッとしていた。

「ばあちゃんが用もなく朝早く来たよ。何も朝ごはん食べてる時に来なくてもいいのに。」

休日はどんぐり広場ではなく、自室で食事をすることになっているのだが、そこへ母が現れたらしい。身内だけに面会時間をそれほど気にしていないのは、まあ許容範囲としても、洗濯物を届ける訳でもないのに朝食時はさすがに早すぎるだろう。聞けばその日は父が簡単な手術で入院していたので、早朝に洗濯物を届けたついでに寄ってみたらしい。

「用もないのにさあ…。」

顔を見たいばかりの母の気持ちもわかるが、翔兵の気持ちもわかる。

「おばあちゃんの場合は、顔を見るのが用事だからねー。」

なんとなしにフォローはしてみたが、彼にとっては相当ビックリなことだったようで、またブツブツ言っていた。確かに食事の真っ最中に来られるのは、私もあまり好きではない。しかしこれを母に伝えてよいものかどうか。

結局、今回は穏便を優先して、伝えずに済ませることにした。父の入院も短期間のようだから、たびたびということもないだろう。




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