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週末。

「お待たせー、翔兵。」

「来たよー。」

「やっと来たー!」

私たちが着くが早いか、ゲーム機を手に璃子を引き連れて病室を飛び出していった。翔兵の病室は、他の子供たちは外泊でがらんとしていたが、別の病室の友達は外泊していないらしく、みんなで集まれる図書コーナーに集まっているのだとか。洗濯物を入れ替えたり、持参した昼食を冷蔵庫にしまったりしてから見に行くと、小学校高学年くらいから中学生くらいの子供たちがワイワイとゲームに興じていた。璃子はあっさりと馴染み、楽しそうに一緒にゲームに興じている。

こういう時、いつも璃子をごく自然に連れていく翔兵を見ていると、優しいお兄ちゃんだなとほっとする。ケンカをするときもあるが、友達との場所にこうして連れていく様子は、幼稚園の頃から変わらない。


昼食を運ぶワゴンが廊下を往き来しだした頃、翔兵と璃子が病室に戻って来た。私たちが持参した昼食の中のローストビーフを見ると、翔兵が目をキラキラさせる。

「ちゃんと病院食は食べるから、分けてね。たくさん分けて。」

「サラダもたくさん分けてあげるわね。」

「わ、わかったよ…。あ。もう一切れ、いや、二切れ。お願い!」

ニヤリとして言うと、翔兵が苦笑いをしながらおねだりをする。

やっぱりね。ローストビーフは外せないわ。

「お兄ちゃん。焼き鳥食べる?」

ローストビーフを分けていると、今度は璃子が翔兵に言った。

「うん!」

ますます嬉しそうに返事をする。二人でお膳の食事をチェックして、璃子が好きなものを焼き鳥と交換する相談をしている。

トレードが成立すると、二人とも嬉しそうに食べ始めた。璃子が嬉しそうに病院食のお膳の物を食べている。

「あのね。数学がもうすぐ一年生の分が終わるから、二年生の分を始められそうなんだ。」

「えぇ?早くない?」

まさかねー。自己申告だけに、終わりそうだと言っても、本当に理解しているのかしら。

「数学だけめっちゃ進む!」

聞けば、院内学級の後も、この病室のカーテンの中でコツコツやっているんだとか。私が数学で躓いただけに、数学だけとはいえ、こんなに短期間で追い上げているという話は信じがたい。しかし、不登校になる前の彼の成績を思うと、あながち無理なことでもないかもしれない。

「ところで、最近は夕御飯まで食べてるの?」

「うん。なんとかね。起きていられるようになってきたよ。」

「そっか。」

勉強のことは確かに気がかりだが、身体が資本。生活のリズムが整ってきていることにほっとする。

今の彼には、勉強だけじゃなく、色々な点で気力が持続することが心配だ。飛ばしすぎてガス欠になることの方が心配だ。

頑張れ!今は言葉には出さないけど、応援しているよ。


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