第6話
「疲れた...つらい。寒い。死にたい」
一日の「調練」を終えて俺はグッタリとベッドに倒れこんだ
「なんなの...」
俺は己の境遇に自問自答する
結局喋る猫についての疑問が消えないままベッドで就寝...
ひどく固いベッドで就寝して翌朝
文字通り叩き起こされた
すっごいいかつい兵士が鬼のような形相で
「いつまで寝ているんだ!異世界人は食べて寝るだけの産廃か!お前が一分眠っている間に民は一人、魔物に殺されている!!救えた命をお前は見殺しにしたんだ!」
心臓が飛び出るかと思った
怖い怖い...
はっきりいってすごく怖かった
このワケの分からない兵士もそうだけど
この先どうなってしまうのだろう?
という不安も含めて全部
「病室は...良かったなあ...」
シスターの人達の手厚い看護
異世界だから回復魔法でも使うのか? と若干期待したがそれはなかった
変わりに水になんか魔法をかけて飲ませてくれたなあ
回復ポーションってやつだろうか?
「走れ!走れ!死ぬまで走り続けるんだ!!」
ワケのわからんウチに着心地の悪い麻素材? の囚人のような格好に着替えさせられ...
屋外へと連れ出される。
途中、初日に見た異世界人、何人かと合流した
男女問わず
みな等しく生気はなかった
朝の段階ですごい嫌な予感がしていたけど..
こういう系をリアルに体験している俺って...
「走れ!走れ!死ぬまで走り続けるんだ!!」
どうでもいいが
働け! 働け! 死ぬまで働き続けるんだ! っていうセリフってなんのゲームだったか?
ここは地獄だ
いや地獄って何なんだろう?
地獄ってなんだ?
そもそも地獄の定義とはいったい?
あれ。これ異世界だったっけか?
頭がぐるぐるとどうでもいいことで回転しつづけ考えること自体がどうでもよくなってきたところで
俺は吐いた
死ぬまではき続けるんだ。ってくらいとにかく吐いた
そうやって下半身が上半身か、上半身が下半身か、よく分からなくなってきたところで
「休憩~...休憩!各自食料を渡す!順次取りに来るように!」
大きな木の下にはいつの間にだか黄色い箱がありその中から
石のように固いパンと...塩? みたいのを渡される
その場で食えってことかよ...
とりあえず兵士は勿論、他の人からも離れたところで腰をおろす...腰いたい...
パンは今の胃の状態じゃとても食えたもんじゃないけど...塩?みたいのは体がすごく欲しているのがわかる
うう...ジャリくさい...死ぬほどまずい...
でもこれはいま食べないと死んでしまう気する...
「ニャハハ。鍛え方が足りないからそうなるのニャ」
いつの間にだか...
目の前で自分は疲れていないぞ、と言わんばかりにドヤ顔でドラが佇む。
誰だっけ?
コイツ...
「なんで猫がしゃべーー」
「いつまで休んでいるんだ!産廃が!!さっさと移動しろ!迅速にだ!」
兵士がこちらを怒鳴りつける。10分経ってないぞ?
ーーああ、コイツは知ってる
ひたすら走れだの産廃だの連呼してた壊れたラジオみたいなヤツだ。ラジオ教官。朝起こしにきたヤツ。
さすが異世界...猫ミミのメイドが朝起こしにくるのよりインパクトは強い
「ーー大丈夫ニャ」
フッ、とドラは背を向ける
「この世界における午後は座学オンリーニャ。キチガイじみた意味のない運動は午前だけニャ。とりあえずよく乗り切ったと褒めてやるニャ」
イヤイヤ
「一つ言っておくニャ」
「座学こそ本番ニャ。この世界の知らなければならない情報、ルール...生死に直結する重要なことニャ」
イヤイヤ
「この一週間、改めて思い知ったニャ...元の世界とで安全面はもちろんルールや定義が違い過ぎるニャ。<<叡智>>持ちで無かったと思うとゾッとするニャ。ケンドー...ここからが。この座学こそ気合の入れどころニャ。己を守ってくれるのは己だけニャ」
...そう言い残してドラは兵舎に向かっていった。
「なんなの...」
そして午後の座学。俺は爆睡した
座学が終わったらしく元いた部屋に戻される
どうやらこの兵舎とやらで俺は座学含め生活しているらしい
外からみた感じそんなに大きくはなかったな...ちょっとした長屋って感じだ
やはりパンと塩を渡されて部屋に戻る
一つビックリしたのはこの部屋、シャワー(ぽいのは)あるってことだ
こういう監獄みたいなとこは共同使用がセオリーだけど...
この監獄は食事の形式といい異世界人同士での接触を不自然なまで嫌っているふしが...
「冷たい...冷たい...」
シャワーが終えベッドへ倒れこみ
「なんなの...」
俺は己の境遇に自問自答する
一つ言えるのはヤバイ、ってことだ
異世界きたああ!ナニソレ? 状態
とにかく帰らないといけない
元の世界へ
イヤ
その前にその前に...
このヤバイところから絶対抜け出さないといけない...
どうやって?
そういえば
あの存在が意味不明な猫
あいつは色々と知っているようだったな
...って猫にすがるようじゃ俺もいよいよだな
なんかいろいろヤバイ