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第4話

「まずお前らの立場からわかってもらいたい。お前らはこの国のゲスト、ではない。兵士だ。」

「さらに言えば最下級の兵士だ。代わりはいくらでもいる。たしかに急に異世界に召還されて憤っているかもしれない。そこは許してやる。だが一介の最下級の兵士が上官に横柄な態度をとればこうなることを知ってもらおう」


「お、王様~!!こいつ...刺した!ボクを刺した!!痛い痛い痛い!!」



 後ろにいた、でっぷりと肥えた中年の男性はため息まじりに口を開ける



「王様がこのような場にくるはずもなかろう...ましてや異世界召還ごときで...」


「こ...殺してやる!ボクのチートスキルで!!ボクは勇者なんだ!自然回復能力とかついてるはずなんだ!」



だ、大丈夫なのか?



 半分口から泡を吹きながも懸命に叫んでる

 スタイルのいい女の人を中心に取り巻きが5人ズカズカと入ってウソくさい態度で俺らに話してきたと思えば...

 さっそく剣を抜いてこれだ


 見た感じ股間?

 を小剣で刺されたようだったけど...

 大丈夫なのか?アレ?


 勇者補正ってヤツだろうか



「Cランクの勇者ごときがそのような力、あるはずもなかろう...」



肥えた中年がやはりため息まじりに口を開き、前へ出る



「ここからは説明を変わろう。ああ、わたくしは帝国第2鑑定士トルネオ。先の女性は7将軍が一人、死霊のルーンと言うものだ。以後お見知りおきを。まず貴殿らの職業、魔法ーー」


「ふえええええん!」



 何人目だったか...

 召還されて涙ぐんでた幼女がついに本格的に号泣しはじめた

 

 そりゃあそうだ

 目の前であんな光景見せられちゃ...

 

 刺されたガキは殺してやる!と叫びながらも兵士っぽい男たちに別室へと運ばれていく


 結局召還されたのは13人

 漫画だったら全員リア充高校生だろうけどここに召還されたのは...

 幼女からオヤジ、果ては猫までいる始末

 猫って



 幼女の号泣が鳴り響き、肥えた中年...トルネオの説明が一時停滞しはじめる


 すると先の女...ルーンが幼女の目の前に近づいていく...

 まさか!



「...それが正常な反応だ...急に召還されてとまどう状況かもしれないが忠実であればこちらも悪いようにはしない...」



 ルーンは幼女の頭をそっと撫でる


 一見良い光景だけどその子が泣いてるの...



あんたが原因だよ!!



 最後に美しい顔を、いびつに歪ませ、ニカッと幼女に向かって微笑むと幼女はピタッと泣き止む

 怖い。怖すぎる



「小さい子は得意なんだ」


「そ、それでは説明に戻る」



 ・・・

 

 

 それから鑑定士ことトルネオはステータスについて説明を始めた


 まず職業、魔法、スキルは各1種類ずつまでしか所有できないこと


 そしてそれらはこの世界では生まれつき決定されるもので未来永劫不変であること


 それは異世界者でも例外ではないこと



「...では、俺らを異世界に召還するそちらのメリットは?」



 妙な存在感があるクールっぽいイケメンが質問する...良い質問だ



「ランクですね。異世界者はこの世界の者よりはるかに高ランク持ちが誕生しやすいと言われてる。先程の運ばれた男でさえ<<勇者>>ーーCランクだがこのCランクというランクはかなり珍しい職業といっても過言ではない。ただ呪いスキル<<全攻撃無効>>持ちだったので職業の割には戦場で活躍することはできないだろう...敵に攻撃することが出来ない兵士はちょっとな...まあ鉱山行きになるであろう」


「再度自らのステータスを確認したまえ。職業、魔法、スキルの横にランクがあるはずだ。それがこの世界の全てだ。ちなみにわたくしの<<鑑定>>はBランク。広い帝国といえども3人しかいない」



 トルネオはドヤ顔で辺りを見回す


 そのステータスだが色々と突っ込みたくてしょうがない...



犬童誠一


 職業:斥候(E)


 魔法:森魔法(E)

 

スキル

 疾走(E)

加護

 風の加護(E)



 LVは?HPは?

 なんか大切なモノがすっぽり抜けているような...



「ステータスとやらは理解したニャ。それよりもまず我々の安全面ニャ。我々は不安でいっぱいだニャ。あなたらの都合で召還したからには最低限の安全を我々に提供する義務があるニャ。」



 ね、猫がしゃべった!??



「ほう...喋る猫か...なかなか面白い!異世界人はやはり面白いぞ!」



 ルーンは非常にキレイな顔立ちを不気味に歪ませニタァ...と笑う


 この人キャラ変わってないか?

 初め「この世界をお助け下さい!」とか言ってた清楚な女王ぽい雰囲気はいったいなんの茶番だったんだ??


「で、安全面がどうだとか言ってたか?義務がどうだとか。答えは『立場をまだ理解してないお前に驚愕』だ。他に言いたいことはあるか?」



 ルーンは猫のほうに向かい笑いながら話す



「ニャニャ...」



 先程のしゃべる猫は不穏な空気を察したのか押し黙ってしまう



「ほかに質問があれば都度受け付けるぞ。」



...こんな空気のなか質問できたら天下取ってるわ...



「俺たちはこれからどうなる?」



 その時、先程のクールっぽいイケメンが核心をついた質問をぶつける


 ...ナイス!

 こういう時の物怖じしないリア充イケメンは頼りになるぜ!



「知ってどうする?異世界人ごときが。お前は買ってもらったオモチャにイチイチこれからのことを教えるのか?召喚してやっただけでもありがたく思え」



 ルーンは吐き捨てるように答える

 コイツ、教える気あんのか


 「なるほど...どうやら愚問だった、らしいな」



 クールイケメンはうつむき、そして決意したかのようにクッ、と顔を挙げ

 


 「...この場を制圧すれば質問には答えるようになるのか?」



 ....え?

 このクールイケメン、今なんて言った?

 なんかスゴい主人公ぽいセリフが聞こえたんだが...



「アッハッハッ!!ハッハッハッ!ハッハッハッハァ~ハァ~ハァ~....やはり異世界じンンン~たまらん!」



 ルーンはその場で唐突に笑いだす。異様、ともいえる笑い方だ



「鑑定殿!この者は『ネズミ』行きかあ~!」


「はい...非常に稀有なるスキルAランク持ち...<<消去>>持ち故え...職業、魔法も申し分ないのでまず間違いないかと」



 ルーンは不満げに後ろの鑑定士から振り向きなおし



「チッ!残念ーーー」



 ハッ!?

 さっきまでいたクールイケメンがいない!?


 ルーンも何が起こった?という感じに急に身構える



「...おしゃべりが過ぎるぞ」



 クールイケメンはいつの間にか一人の兵士の後ろにいる

 兵士は口から泡を吹いて気絶している


 クールイケメンは倒れ行く兵士からサッと武器...鈍器のようなものを奪い



「これで質問に答える気になったか?」



 とルーンに向かって言いはなつ


 か、かっけえええ!

 スキル?かなんかだろうか?


 まさにチートスキル異世界俺TUEEEを体現したようなヤツだ

 俺との落差が激し過ぎて若干嫉妬すらある



「チッ...!」



 ルーンが観念したかのように唇をかむ



「もの分かりが良くて助かる。なにもあんたらとコトを構えるつもりはないんだ。ただこれから、いくつか質問に答えてその後に俺たちを...自由にしてくれればいい。先のような扱いを俺たちにすれば...次はわかるな?」



 まわりの召喚された異世界者の目が輝く

 よくぞやってくれた!という称賛の眼差しだ


 異世界モノに置ける主人公...それはこういうヤツを言うんだろう

 俺はいつでも部外者だ。現実でも異世界でも

 

 でも内心...安心したというかホッとした

 まさにチート異世界者における場の「制圧」ってもんだ



「では初めの質問として。元の世界に今すぐ帰る方法は?勿論魔王を倒すとかフザケた方法は無し、でだ。異世界に召喚出来たなら戻す方法も近いやり方であるのだろう?」


「さすがはクールイケメン...鋭いぜ!魔王討伐による元の世界への帰還とやらはコイツらの『方便』による可能性が高い....俺たち異世界者を体よく働かせるためのな!」



 えっ?誰??

 このスーツのオヤジ誰?

 解説キャラってやつか?



「では...今すぐに元の世界に帰る本当の方法をお教えいたします!わたくしに危害はくわえないで!絶対くわえないでくださいィィィ!」



 キャラが再度変わったルーンが口を開ける

 この人も忙しいな...なんか半笑いに見えるのは気のせいか?



「まず服をぬぎます。そして私の目の前で土下座をして頭を打ち付けます。この時変顔するのを忘れないように。そして...ププ...こう言います...おおルーン様、この卑しい豚畜生めの頭をーー」


「ふざけるな!」


「そうだ!そうだ!」



 まわりからワーワーと罵声が飛ぶ

 そりゃそうだ。

 この状況でこの女はいったい何を考えているのか...



「どうやらお前とは交渉の余地がないみたいだな」



 クールイケメン...さんは静かに言い放ち...ブレない...



「お前らの敗因...それは召喚してからすぐにこの場に来なかったことだ!俺にスキルを使いこなす、チームを組む時間を与えてしまった、という事実をな!」



 主人公ぽいセリフを言い放ちまた一瞬消えたかと思うと....

 いつの間にかルーンの後ろに立ち手を背中につける



「お前の存在を<<消去>>させてもらった。なーに。帰る方法はお前以外から聞き出すだけだ」



 クールイケメンさんの手がボゥ...と光ったのが見えた

 存在を消去って...

 どんだけチートスキルだよ!

 かんぜんに主人公だよ!



「や...やったか?」



 先ほど解説してた人が意気揚々に喋る

 お前はどこのテンプレ小僧だ

 

 いやこんだけチートなら実際やっちゃったんだろうけどな

 さらば女騎士ーー貴様は俺達をみくびり過ぎた

 せめて苦しまずにーーー



「今すぐ<<消去>>を解除するニャ! 自分にかかってるニャ!」



 え...

 え.....ホントだ

 クールイケメンさんが目に見えて「薄く」なっている



「っ!!」

 


 クールイケメンさんは即座に手を離し...すると薄くなっていた体が元に戻る



「豚畜生めの頭を踏みにじりください!と言います。そして踏みにじられると同時にその場でブヒッブヒ~ッと嬉しそうに涙を流しながら...脱糞します。この脱糞のタイミングが実に難しい。もちろんわたくしも殺すつもりで本気で踏みにじりますがーーー」

 


 ルーンは口元をいびつに歪ませながら狂ったような笑顔で話し続けてる


 ゾゾゾゾゾッ...!

 ヤバイ

 こいつはヤバイ


クールイケメンさんはへなへなと完全にその場にへたりこんでしまう



「ーーー以上が元の世界へ還る方法となります!」


 異様

 もはや誰一人として野次を飛ばすモノはいない

 それほどまでに異様な光景だ



「他に質問がなければ、とりあえず顔合わせはこれで終了となりますが」



 イヤイヤ...

 なにフツーに進行してるんだ...

 クールイケメンの攻撃はとるにたらない出来事とでもいうのか...



「あーそうだ」



 ルーンは大人しそうな女とスーツの男のほうを向き



「女。<<転移魔法>>を発動してたのはお前だな?なかなか良いコンビだいったぞ。気配を<<消去>>と<<転移>>がこうも相性いいとはなあ~。気絶魔法を発動してたのは...そこの...お前か?アレは使いずらいいんだがなあ!うまく『ネズミ』に付呪できたか。いや久しぶりに身構えてしまったぞ!」



 ルーンは少女のように顔を輝かせ話す



「な...なんで...」



 大人しそうな女とスーツの男は勿論、その場の全員が凍りつく


 その時...



「どうして消えてない!」



 クールイケメンさんが声を張り上げる



「あ?どうしたもこうしたも....私も一瞬期待したんだが?単純にとるにたらないクソスキルだったってことだろう。というか飽きてきたな。余興は終わり!終わりだ!」



 ルーンはブツブツと呟き



「待て!まだ俺たちは終わっていない!」


 クールイケメンさんはフラグっぽいことを叫ぶ...


 スゴイな、この人

 俺は完全に心が折れている

 そして少しちびっている


 が

 ルーンの興味は既に失せたようで



「鑑定士殿!そろそろお開きにしよう!食事!食事を持ってこさせる!...最後の晩餐を楽しんでくれ。『ネズミ』くん」



 ルーンはゴミを見るようにポンッとクールイケメンさんの肩を叩き大広間から出る

 それに追随するように鑑定士、兵士も部屋から出ていく

 バカにしたようにニヤニヤと笑いながら

 イヤな笑い方だ



「何故...どうしてスキルがかからなかった....」



クールイケメンさんはその場でうずくまっていた

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