第20話 約束
「ニャハハハハ!!」
「一体どうしたんだ....ドラくん...」
(高難易度...結晶化...条件...味方による殺害....救済措置....結晶蘇生.....Sラン.....帝国....存在する...)
ああ!
ドラの<<叡智>>がひっきりなしに騒いでるニャ!
死んでいた脳がみるみる活性化されていくニャ!
ケンドーは! ケンドーは!
「生き返るニャ! 絶対生き返るニャ! ケンドーは生き返るんだニャーー!」
「ド、ドラくん....」
ドラの<<叡智>>が言っているニャ!
Sランク魔法<<結晶蘇生>>の存在!
そして『ブラック結晶』の概念!
叡智による情報が正しければ...!
ケンドーはきっと生き返るんだニャ!
異世界にきて期待に胸をふくらませただろうに
地獄のような毎日で
ご飯もロクなものじゃなく
みじめな思いして
ツライ思いして
あげくの果てに死んで終わり?
そんなこと絶対許さないニャ!
助けるニャ....!
ケンドーを助けるんだニャ!
あのDTがこんな不幸であっていいハズがないニャ!
優しくて
気が弱くて
あのケンドーがこんな事...!
ドラが許さないニャ!
不可能を可能にしてきたドラなら必ず助けることが....!
約束したニャ
ドラはケンドーと絶対帰るって約束したんだニャ!
帰った後はどうしようかニャー?
まずはオイシイもんを一緒に食べにいかないとニャア?
ドラは『北海道』だから.....ケンドーにはるばる来てもらうかニャ
海の幸のエグさをあのDTにじっくり教えてやるニャ?
ああ、それとラーメンも...
全くケンドーは相変わらず手のかかるヤツだニャー!
「ニャハハハハ! ニャハハハハ!」
しばらくの間
ドラは狂ったように笑った
目には涙を浮かべながら
「ケイローンニャ? ドラは行かない。『拠点』には行かないニャ」
「!! どうする気、だい?」
順序は至ってシンプル
・ケンドーの『ブラック結晶』を女将軍から取り返す
・Sランク魔法<<結晶蘇生>>を使える人物、又は『ブラック結晶』を探す
・ケンドーを蘇生して元の世界に帰る
「こんなん非常にシンプルなミッションだニャ! 絶対成功させるニャ!」
「ドラくん....簡単にいうけど」
ケイローンは歯切れが悪い
それもそのはず
そのミッションをクリアするには.....
「もちろん帝国は全面的に敵に回すつもりニャアアア! 元々元凶のアイツらだけは許さない。元の世界に帰る方法もアイツらが握っているはず。目的のためには帝国は絶対クリアしなきゃならない、壁ニャ」
「本気かい? その....ぼくの拠点でさ? 幸せまで、とはいかないけどーー」
「ニャハハ。なんとも腑抜けた提案だニャア? これから戦争にむかうはずの異族が。帝国は『共通の敵』にゃんだろう? そんな及び腰でいいのかニャ?」
「!!」
ケイローンが異世界者を助ける理由こそ分からない
が、コイツは間違いなく『異族』側
対して『人間』側の帝国は近々大規模な戦争.....を異族に起こすハズ
ケイローンが異世界者を助けるのは....帝国にダメージを与えるため?
ケイローンはしばし押し黙り
そしてゆっくりと話だした
「ドラくん。やめてくれ。そんなバカな真似。命を危険にさらすようなーー」
「お前に何がわかる、ニャ!」
「!!」
「どいつもコイツも! 異世界者をナメ過ぎだニャ! 方やゴミ扱いするかと思えば方や無力な愛玩動物のような扱い! 悔しいニャ悔しいニャ! 絶対復讐してやる! 我々は家畜じゃにゃい....!」
「ドラ.....くん」
「ケイローンのところには行かない。行かないんだニャ....」
そこまで言うとケイローンは何かの決意をしたかのように
懐に手を入れ喋りだした
「決意は....固いんだね」
「.....」
「君達のことを無力だなんて思わない。本当に力になりたいだけなんだ。ぼくはさあ....このコに誓ったんだよ。『賢者の杖』。異世界者を救う、って。」
懐から出したのは杖と呼ぶにはとても小さい短剣ほどの短さ
先端にはめ込まれた黒い結晶が美しくも妖しく際立たせる
「! .....『ブラック結晶』かニャ?」
「10年くらい前かな? まだ異世界者が『勇者』と、もてはやされてる頃ね? あるパーティが単独で攻めてきたんだ。強かったよすごく。だけどぼくらも強かった。戦いは1日で終わらず2日、3日.....」
10年前.....
まだ異族と人間が均衡状態の時だ
平和な時、とでもいえるのかニャ
『どうしてトドメを刺さない!』
『えっ.....? いやいや? 怖い。怖いって。シリアスな感じ? これ今シリアスな感じ? ってか酒とか飲める? これから酒宴があるんだけどーー』
『なんなんだ....コイツは...コイツらは....まるで俺達のほうが....調子が...狂う....クソッ! 賢者! 一旦帰還魔法を!』
「そういう血で血を洗う戦いが1週間程して、さ」
「ニャ???? 血で血を洗う?」
『今日もやるのかい? ってあれ! 賢者さんだけじゃないの! どうしたの!?』
『助けて......ください....!』
『泣いているの.....?』
『何でも....します!』
ケイローンはゆっくりと昔の話をしだしたニャ
なんか長くなりそうだニャ
そういえばドラが気を失っている間に手当てをしてくれたのもケイローンかニャ
傷口があったかくて余り痛くないニャ