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第11話

(ホントにコイツ誰だっけ...?)



 俺がその場で固まっているとドラがヨコから口を挟む



「ニャ。ドラの名前は米沢ドラ。この部屋の先輩...ということにになるニャ? ハカマダとは...初日以来かニャ? これからは同室ということになるのかニャ?まあとにかく同じ異世界者同士仲良くやろうニャ。」



 初日以来...?

 初日...


 あ!


 そういやいたぞ!

 ボクは勇者なんだ! とか連呼してたヤツ!


 ってか

 女将軍に『色んな意味』で致命的な一撃を受けてなかったか...


 病棟で見かけた気がする

 集中治療室ってとこだろうか...

 俺とは別室で 


 ともあれ男としての重症を乗り越えて今日復帰した、というところだろうか?

 1ヶ月やそこらで治る怪我でもない気がするが...



「...ッ!」



 ハカマダとかいう少年はちょっとビックリしたように固まり



「へ、へえー...病棟で聞いてたけど...ホントに喋るんだねー! なんか面白いなー! さすがファンタジーの世界だ...!」



 結構軽いキャラみたいだ

 見た目、中~高校世っぽいし、この年代はこんなもんか?



「ホントに...面白い...馬鹿げた世界だ...」



 あれ?

 なんか泣いてません!?

 そんな喋る猫に会いたかったのか??



「・・ハカマダ。辛かったろうニャ。苦しかったろうニャ。孤独だったろうニャ。異世界者に対する仕打ち...ドラもどんなもんか思いしらされてるニャ。...大丈夫。これからは異世界者のドラ達がついてるニャ! 協力して元の世界に還るニャ!」

 


 そこまでドラが言うとハカマダはワッーと泣きはじめた



「アイツら...勇者のボクをゴミを見るような目で...!」 


「1ヶ月近くもよく耐えたニャ...ハカマダのツラさは痛いほど分かるニャ...」



 よく成り行きが分からん 

 分からん...けど...

 1つ分かるのは、やっぱこの猫、天才だわ


 瞬時にハカマダの状況を理解し、「同じ異世界者」というワードを使いかけるべき言葉をかける

 あえて最初になんも掘り下げずに社交辞令的な感じで入ったのも良かったな...


 俺だったら「誰?」とか、知ってた、としても「ここにいる経緯は?」とか開幕言ってしまってる

 まぁ良くない空気になっただろうな


 ともあれこの猫は...

 うん。

 

 良い占い師になれるわ

 コミュ力の固まり

 スキルの<<叡智>>...

 というより元々のドラの性格か?



 その後、ハカマダはここに至る経緯をまくしたてるように話始めた


 人と話せない孤独感も強かったんだろう

 彼の口は止まらなかった


 女将軍に刺された後、病棟で安静にしてたこと

 その最中、イカツイ兵士がやって来ては



「お前は<<全攻撃無効>>持ちの役に立たないポンコツだ」

「へへっ...そういえば男としても、もう役立たずだな」

「戦場にも出れない産廃は鉱山にでも行っての垂れ死ぬんだな!」



 と毎日の様に罵られていたこと


 なんでも「鉱山」ってヤツは犯罪を犯し奴隷落ちしたヤツが半永久的に強制労働させられる施設らしい


 賭博漫画の地下部屋みたいなもんか?

 そして...

 病棟のシスターにも半ばシカト状態で冷たくされてたこと...


 まあ、言っちゃえば大半が愚痴だが...

 その環境で1ヶ月はキツいな。

 非常にキツい

 てかあのクソ兵士はそんなことまでやってたのか



「シスターさん達、ってそんなキツかった? 実は俺も病棟にいたことあるけど...あーハカマダ君とは別室だったけどね? そこまでヒドくはなかったからさあ」



 俺は話の最中に口を挟む

 俺ってヤツは基本初対面の人に話かけれるタイプでは無いんだが...

 ハカマダは兵士にやられている境遇といい、なんか親近感がある


「グスッ・・あのメスブタどもぉ...初めの頃は優しかったから...勇者のボクのハーレムに入るための権利をあげるよ! って言ってから...急に態度が豹変して...」


 

 は?



「権利といってもすぐに入れるワケじゃないんだけどね。なんたって勇者だ。物凄い倍率になる。あくまで入るための挑戦権。もし落選してもメイドとしての敗者復活戦ーー」



 ...コイツ

 コイツ馬鹿だ!


 そもそも勇者はそんな事しないだろう...


 ん?

 いや

 小説とか漫画の勇者ってそんな感じだっけ?

 とにかく口にしちゃあダメだろう...



「ハカマダニャ。この世界の勇者ってもんを連中は理解してないニャ。ところでハカマダのスキルの...<<全攻撃無効>>について差し支えなければ教えて欲しいニャ」

 


 ドラはハカマダを馬鹿にするワケでもなく...

 むしろアゲつつ質問する

 ウマいな



「あ、ああ。<<全攻撃無効>>はね...」



 <<全攻撃無効>>...

 名前からしてチートスキルだが実際は「相手」の攻撃を無効にするわけではなく、「自分」の攻撃を全て無効にする呪いスキルらしい...


 ・・なんだそれ?


 罠にも程があるだろ

 ってかあの初めのステ振り、不親切にも程があるだろ


 なんの説明もなく暗い空間に飛ばされ、職業魔法スキル選び

 職業やスキルについての説明ヘルプはなんもなく一度決定したらキャンセル不可

 偉そうな名前のモノは大体地雷だし運良くチートスキルが付こうものなら『実験場』行き


 まさにクソゲーって感じだ

 ってかクソゲーの異世界だしな、ここ


 特にクソゲー化たらしめてる最たる例が「スキル、魔法の複数持ち」できない。


 ここだな

 こういうのって『スキル○○を覚えた!』とかフツーあるでしょ...

 永久1つのスキルで魔物が出る異世界とかなんの冗談だよ


 特にハカマダの<<全攻撃無効>>とか...

 人生詰んだといっても過言ではーー



「クソッ...このスキルのせいでボクのハーレム計画が...」



 ハカマダは悔しそうに天を仰ぐ

 どんだけハーレム作りたいんだ


 だが



「・・スゴいスキルだニャ!」



 ドラはというと目を輝かせて話す

 

 ハカマダはキョトンとしている

 そして口を開き



「スゴくなんかあるものか!」



と怒ったように喋り始める



「<<全攻撃無効>>は女将軍の攻撃を全く無力化してくれなかったんだ! そのくせ自分の攻撃は無力化? ハッ! バカげてる! チートスキルだと思ってとったのに! しかも捨てるに捨てられない! 最悪のクソスキルだ!」



 ハカマダはスキルに対しての怒りをあらわにする


 そりゃ...怒るよな

 <<全攻撃無効>>が実は、自分の攻撃が無効なんすよー(笑)だもんな...



「ハカマダニャ!よく考えて欲しいニャ!」



 ドラは口を開き



「<<全攻撃無効>>ーー他人に危害を加える事が出来ないーーこれがどういう事か分かるニャ?」


「分からない...けど...」


「異世界者たる我々はーーここから脱出した後、外で生活しないといけないニャ。金が必要だニャ。冒険者でも裏稼業でも何でもやって...泥水をすする覚悟だったニャ!」



 冒険者ーー

 異世界者にとって胸躍るワードだが、こと回復魔法がないこの世界では過酷らしい


 回復出来ないからちょっとの怪我が致命傷

 毒なんて受けようものなら、それは「詰み」を意味する


 この世界にもいわゆる「ダンジョン」というのはある

 が、とても人間が近づけるものではないらしい


 このダンジョンには...

 魅力的な財宝が沢山ある、との噂なので滅亡直前の国が軍をあげての一発逆転の「冒険」をしたり、富豪が犯罪奴隷を大量に雇って財宝を狙ったり...

 

 しかし...

 生きて帰ってくる者すら稀なので非常に効率が悪いらしかく滅多にないらしいが


 ともあれ何十人、何百人クラスの「軍単位」でさえダンジョンは踏破出来ない

 一介の冒険者がダンジョンに入るなんてもってのほか

 というか冒険者自体の数がその過酷さ故、少ないらしい

 冒険者ギルドみたいなのも当然ないんだろうな


 ...ロマンなさすぎだろ、この世界は


 ドラの説明は続く



「異世界者が見知らぬ土地で『信用』を買うーーこれが非常に難しいニャ。ネックだったニャ。...でも...ハカマダの他人に危害を加える事が出来ないスキルは...雇用者からしたら問答無用の何よりの『信用』だニャ! 報酬が桁外れに高い魔族やドワーフ族の仕事も受けれるニャ! 基本人間を信用しないアイツらもハカマダだけは別だニャ!」



 なんでもドラ風にいうと、他人に危害を加えることが出来ない、というだけで「安全な人間」というレッテルがはられ信用されやすい


 特に魔族やエルフ族等の異族...

 金はあるが、その稀少さ故に人手は足りない、だけど人間は信用出来ない...

 そういった層、にだ



 ...そういう考えもあるのか



 半分ドラってヤツは...

 励ましで言ってるのかも知れないが

 聞いてる俺からしたら、この励ましは非常に心地よい

 


「なんでそこで勇者のボクが人に使われなきゃいけないんだよぉ~。絶対働かないからな!」


 は?


 コイツは今の自分の状況分かってるのか? 

 ニートだった俺も人の事言えんが...


 ドラの理論でいくと

 異世界者の稼ぎ頭に間違いなくなると思うんだが...



「異世界の勇者だって働きはするよ。ほらクエストみたいなもんだよ。ハカマダ君はクエスト報酬が初期からとんでもない設定。そう考えたらちょっと勿体ないんじゃない?」



 俺はヨコから口を出すとハカマダは、うーんと考えこむ


 俺じゃあダメか、やっぱ



「あとニャ...魔族やエルフ族等の異族は美人だらけらしいニャ?ちなみにこの世界は...人間より異族のほうが勇者というワードに弱いらしいニャ?」



 ホントかよ 


 その時、ハカマダがピクッと動く



「ま、まあ、勇者なら人助けとかしなきゃいけないからね。とりあえずここから早く脱出しないと! 勇者のボクは困っている人達を救わないといけない!」



 ...ドラすげーな

 ハカマダのツボ、もう理解してるじゃん

 

 とゆうか

 ハカマダの変わり身はえーな 

 コイツの判断要素、女だけじゃん



 ハカマダの目にはもう涙はなく、希望に満ち溢れてた

 ...希望というか、ありゃ外に出てハーレム作る気満々だな

 どんだけ女、好きなんだ

 

 ともあれ同室にハカマダという女好きが入居した

 バッジをみるに


 Cランク職業の<<勇者>>

 呪い魔法の<<未来予知魔法>> 

 呪いスキルの<<全攻撃無効>>だ


 名前だけみると、どんだけチートキャラ作りにいったんだ...って感じだ

 しかし<<未来予知魔法>>が呪い魔法とはな・・

 罠過ぎるだろ、これも


 2枚呪い持ちとか俺だったら切腹もんだが...

 今日のドラの発想を聞いて考えが変わった


 マイナス要素もプラスとして考える

 マイナス面もそれを有効利用しようと考える


 そして...

 ハカマダの味方側に徹底的に回り最後は女をエサに「懐柔」をその場で決めた


 これぞドラ流、だな

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