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第10話

「今日、あなたに聖十字四天王の名誉を授けます。これからは赤のケンドーと名乗りなさい」

 

「はあ...どうも...」


「なにか欲しいものはある?」

 

「特に...ないです...」


「なんと欲のない...! じゃ、質問を変えて...この金貨と銀貨、どちらが欲しい?」



「じゃあ金貨で」


「あなたの勇者の試練は失敗に終わった。ケンドーに勇者たる資格はない」


「はい...なんかスイマセン」



 逆にどうすれば成功なんだ?


 眠れぬ王、こと幼女とこんな下らない問答を今日もう30回くらい繰り返している


 調練...という名のランニング、座学の最中、おかまないなしだ

 座学のまぁ...ケイローンさんがなんも言わないのはわかるが...

 あの狂った兵士がなんも言ってこないのが驚きだ


 女将軍の御威光、というヤツだろうか...

 そういえば今日、眠れぬ王様のヤロウは呼ばれてないな...



「あなたに北の勇者の称号を授けます。これからは白のケンドーと名乗りなさい」


 

 ・・いい加減、勘弁してほしい

 恐らくこんな「ごっこ」をしたくてたまらなかったんだろう

 だが回りの異世界者は幼女を幼女らしく扱っているからな...


 やっぱり先日、俺が姫様扱いしたのがマズかった



「ははー! 姫様!」



 とか言っちゃったしな...



「ケンドーに勇者たる資格はない」 



 毎回金貨と銀貨を出してきては最終的に必ずこうなる

 

 金貨も銀貨もいりません、って泉の物語的なこと言ってみても必ず、だ

 野心がない、だと


 だいたい最初の称号授与の流れ、なんなの? いらなくない?

 なんだったらお前結局最終的にそれ言いたいだけだろ、っていうね


 ガキとジジイは同じ話を何回もする、っていうけどコイツは異常、異常だ


 異常といえばこのガキ

 ランニングもそうだけど...

 ほんと汗ひとつかかずに常に全力疾走している


 ...スキルの関係か? 

 ちょっと聞いてみるか



「おお...美しき姫様...姫様ほどの御方。どのようなスキルをお持ちなのか...このケンドー、とっても気になる所存です」



 こうでも言っとかないと教えてくれねーだろうからな

 チョロいぜ

 


「ん、くるしゅうないよ。」



 ・・

 ・・・



「あなたに冬将軍の栄誉を授けます。これからはーー」



 なんかそんな名前の居酒屋なかった?


 ガキはとにかく人の話を聞かない...

 にしてもコイツは異常だ

 あの女将軍といったいどんな会話してるんだ?


 こういう時こそ婚約者らしいドラの出番なんだろうが...

 アイツはアイツで日中は常に忙しそうだ

 恐らく脱出のための「懐柔」や「下準備」をしてるんだろうな


 今は座学の時間だが...

 ドラはいつもガキから離れている

 ・・なんとなく気持ちはわかる



「眠れぬ王、ルーン様がお呼びです」



 座学が終わりかけようとしてた頃、ガキはルーンに呼ばれていなくなった



「これから聖戦に向かいます。我が民よ。吉報をお待ち下さい」



 とか言ってたんで、とりあえずおいたわしや...とか言っておいた



「あのガキ、なんでいつもあんな元気なんですかね? やっぱりスキルとかの関係?」



 座学が終わって俺はケイローンさんに質問する 



 「彼女は...<<狂王>>だからねえー。疲れないんだよ。肉体的に疲労ってものを知らない。睡眠さえも本来必要ないんだけどねえ。ついた名前が眠れぬ王。...まあルーンさんがつけたんだろうけど」


 

 は?

 狂王?

 狂王ってあの狂王?

 まんま訳せば「狂った王」だ


 ププ...狂王

 たしかに頭は狂ってる...よな

 まあ、例によって適当に選んだんだろうが

 ネトゲとかやれなそうだし


 しかし...幼女が狂王か

 カオスだぜ

 男の魔女がいたり、弓を持てない弓使いがいたりなかなかカオスな異世界者達だぜ


 そう考えると...

 俺の<<剣聖>>ってかなり「当たり」なんじゃないか、って思えてきた


 兵士には相変わらず殴られっぱなしだが、まず傷は残らない

 その場ではさすがに痛いが、少し経てば痛みはなくなる

 

 なんていうか...

 机のカドに足ブツケるアレ

 スキル<<贋作>>の補正ではさすがにないだろうしやっぱり職業補正だろう

 

 これはついに俺の時代来たか?

 チート異世界俺TUEEE来たか?



「彼女は恐らく異世界者の中では最強職ニャ。Aランクニャ。チート職ニャ」



 ドラがケイローンさんとの会話に入ってくる



「Aランクって...それ...マズイでしょ。もしかしてこの先実験場とやらに送られたりするんじゃないの?」


「まあ、<<狂王>>を結晶化してもねえー...疲労無効とかは職業特有だろうし...」



 ん?

 結晶化?



「おおっと危ない、危ない。じゃ!また後で!」



 ケイローンさんは教室から去っていった



「眠れぬ王ことマリューは職業もさることながら女将軍から金も調達してくるニャ。メンドクサイやつだけど使えるニャ。金ヅルニャ。」



 金ヅルて。

 だいたい幼女に頼ってていいのか


 いや、猫だからありなのか

 その猫と幼女に頼っている俺がなんなんだって話か



「例え異世界者全員が脱出した、としても当面の路銀は貯まりつつあるニャ。金さえあればなんとかなるニャ。」  



 スゴいな

 いつの間に貯めたんだ 

 ってか幼女がスゴいな

 どんだけもらってるんだ



「そういえば異世界者って全員で6人だよな?」


 ここ練兵場...

 というか最近知ったが『ストーム砦』というらしい


 そしてここは俺達が召喚された場所でもあるが...

 なんというか規模はかなり小さい


 なんでも王宮のど真中にバーンと召喚...

 ではなく

 帝都から少し離れた南に位置する場所らしい


 帝都が世界最大の都市...

 なのだがここは...

 刑務所のイメージだな


 ちょっと小さい刑務所...って表現がしっくりくる

 まさに辺境って感じだ



「ニャ。6人ニャ。ドラとケンドーとマリュー、タナカ、サトウ、あとクソビッチ。これで6人ニャ。」


「異世界者って全員で13人いたよな?たしか」



 初日にしっかり数えてたから間違いないはずだ



「いたニャ。13人ニャ。うち2人は、こことはかなり離れてる実験場に即、送りこまれたニャ。初日に<<消去>>スキルで抵抗してたヤツと<<転移魔法>>持ちの女らしいニャ。」



 クールイケメンさん...

 あなたは実験場に送りこまれていたのか...

 ちょっとやるせない気持ちになる



「それとニャ。即戦力がいたらしいんで即強制労働行きが一人ニャ。なんでも<<死霊魔法>>持ちだったらしいニャ。エグい現場に行かされたらしいニャ。」


 

 <<死霊魔法>>...

 死者を蘇らすってアレか?

 ただしアンデッドとしてだ


俺だったら死体だらけの環境で奴隷のようにコキ使われたら1日で発狂しそうだ



「6人...2人...1人...あれ? 数合わなくない?」


「...既に脱走を試みた輩が3人いるニャ。彼らは失敗して...その...戦場に行かされたニャ。」


 

 せ、戦場?

 戦場ってあの?

 回復薬もなく、回復魔法もなく魔物と戦わされるとか...

 無理ゲー過ぎる



「や、やっぱりさ...脱出とか危なくないか? いや、警備はザルだけどさ...女将軍もこの砦に駐在してるんだろ ?とりあえずここを拠点に様子見ながらーー」


「多分我々もそろそろ戦場行きニャと言ってもかニャ?」



 ....え?

 戦闘訓練とか全くしてないんですけど

 というか走っているだけなんですけど



「...近々大規模な戦争が起こるらしいニャ。使い捨ての異世界者は間違いなく駆り出されるニャ。あのアホみたいなランニング。ヤツらは武器をまともに使わせる気ないニャ。一番死亡率が高いらしい斥候兵か一番過酷だと言われてる...兵糧を運んだり、建物を建てたり...なんでもやらされる雑兵。我々は間違いなくそこらにまわされるニャ。」



 なるほど...

 それであのランニング

 たしかに信用出来ない部外者の異世界者に武器らしいもんは持たせたくないもんな...


 体のいい奴隷ってワケだ

 相変わらずこの国の考えにはヘドが出る



「ドラ! いっこくも早く...ここから逃げ出そう! 今すぐにだ!」


「早いニャ。さっきの発言からその発言の変わり身、早いニャ。3人の脱出の失敗を踏まえて慎重をきす必要があるニャ。」



 あれ...3人?

 6人...2人...1人...3人...

 6+2+1+3...



「異世界者。全員で13人だよな? 何回計算しても1人足りない」



 まずストーム砦にいる異世界者が全部で6人

 『実験場』行きが2人

 強制労働行きが1人

 脱出を試みた、元ストーム砦の異世界者が3人


 ・・どう考えても1人足りない



「...ホントだニャ!盲点だったニャ!」


「謎の人物『X』...」



 まさかのミステリー展開だ


 招かれざる客。

 ではないか。あれは1人多い時だ


 消失した客

 忘れさられた客

 多分この人物が脱出のカギを握るだろう...

 なんつって


 ドラと俺はお互い疑問は消えぬまま、モヤモヤしたまま自室へと戻った....



「やあ。ボクの名前は袴田光一。職業は勇者だ。君が同室の人だね? ...なんで猫がいるの?」


 

 あれ? 

 誰だっけコイツ?

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