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第9話

「まず早速ですが皆さんの鑑定タグをみせてください」

「B、C、C...さすがは私たち異世界者と言ったところですね。ケンドー...さんでしたっけオールEなのがちょっと浮いてますが」


 

 ドラと...

 男と女が颯爽と来たと思えば...

 いきなり女が口早に喋りだした


 ドラは少し困ったような顔をしている



「大丈夫...自信を持ってください。例えオールEだとしても、この世界では呪い、飾りスキルや職業持ちが多い。例え全てEだとしても...全て『種アリ』の時点でこの世界の人間より余程有能と言えましょう」



 ...唖然

 いきなり意味不明の下げて~からの上げに目をパチクリする



「ケンドーさんのフォローも終わったところで...さて」

「本日の議題について話し合いましょう。いちおう私は生徒会長もやってたことがあります。こんなこと言ったら私ばっかり頼りにされちゃう流れになっちゃうんですけどね。」



 ...誰? お前??

 俺は自慢じゃないがコミュ障DTの呪いスキル持ちなんで直視は出来ないが...


 あ...

 いやわかった...

 いつもランニング中、胸をユッサユッサしてたアイツだ

 女の体力でようやるなーって思ってたけど...

 こんな強烈なキャラとは驚きだ



「とりあえずニャ...顔合わせってことでお互いの信頼を深めるーー」

「まず皆さんに安心して頂くために私の職業、スキルのバッジを見てください。職業<<英雄>>。Cランクなのが納得いきませんが...困った人を放っておけない私のためにあるような職業ですよね」



 なんとなくだけど

 

 もうこの、今回初めての異世界者の「集まり」は失敗に終わる気がしてきた

 グダグダで終わる気がしてきた

 多分この予測は間違いない

 絶対間違いない



「次にスキルですがーー」

「あの!ちょっとウ○コいってきていいすか?」



 30代くらいの男の人が恐る恐る手をあげ話の腰を折る

 女のほうは信じられない、と言った顔付きだ 



「どうぞニャ。ゆっくりしてくるニャ」


「へへ。ありがとうございます」



 男の人は足早に去っていった


 たしか...サトウとか言ったか

 ドラ曰く信用できるヤツの一人だ



「場が乱れましたね。それも一興。話を再開します。次にスキルですが。<<人心掌握>>これもCランクなのが納得いきませんが...元の世界でも元々持ってたスキルでしたので」


「はい?」


「<<人心掌握>>。生まれつき持ってたスキルでしたので。」



 いや...

 それはないだろう...


 <<英雄>>に<<人心掌握>>って

 どんだけ承認欲求強いんだ

 全然掌握しきれてないのは気のせいか?


 しかし...

 このクチは...

 ランクに不満げだったり...


 うん、ゲームやってるクチだな

 なんというか職業、スキル選びに余念のなさを感じる


 ウィッチタナカさんのヒャッハー適当選びとは大違いだ 

 

 あれ?



 ・・魔法は??


 タナカさんは女の次のセリフを待っているしドラはヤレヤレだぜ・・といった顔をしている



「...だいぶ不安が紛れたようですね?私の強力な能力を知ってもらいまずは皆さんに安心していただく。それだけで私は満足ですし本日の目的は果たせた、と言ってもいいでしょう」



 不安、紛れてないよ


 ん?


 待てよ...


 まさか...


 こいつまさか...


 俺は女の鑑定タグを覗き見る


 そのひとつが黒いバッジで文字は<<創世魔法>>とかかれていた


 たしかドラに聞いた話では黒いバッジは「呪い」、透明のガラスみたいなバッジは「飾り」だったはずだ


 やらかしたな 

 プププ...

 しっかり呪い魔法掴まされてやんの

 しかも<<創世>>て

 先の職業スキルといい、どんだけ国家作りたいんだ



「よく...分からないけど...強力な能力をお持ちなんですね。それは非常に頼もしい。強力な助っ人が来てくれたようで心強いです」



 ウィッチタナカさんはにこやかに話す

 さすが年の功...

 下らないガキの武勇伝にしっかり合わせるスキルをお持ちのようだ


 でも...

 多分その優しさが今回はよくない方向に行く気がする...

 絶対的予感だ



「助っ人...たしかに私は皆さんを助ける立場にあります。でも言うならば指導者、とでも言っておきましょうか。私はこの異世界でもとりあえずはチート能力者ですし、居てもよいんですがね。ほら困っている人を見ると見過ごせないタチでーー」



 とりあえず異世界者たちの初めての「顔合わせ」は失敗に終わった



 あれから女のよくわからん波乱の生い立ちとやらを小一時間聞かされるハメになった

 兵士が来てようやく解散となったが

 この時ほどクソラジオ兵士の存在がありがたかったことはない


 ちなみにウンコをしにいったサトウさんは戻ってすら来なかった


 その夜ーー

 ドラとケンドーの部屋



「これからが本番ニャ」


「あの台風みたいな女の人って絶対異世界俺TUEEE女バージョンだよね...浮かれてるとゆうか...あんなんでもほんとに信用していいの?」


「ニャ?あの女は信用出来ないニャ。クソビッチニャ。」 



 クソビッチって

 <<叡智>>はそんなことまで教えるのか

 というか

 信用出来ないヤツ呼ぶなよ



「クソビッチは撒き餌だニャ。今頃兵士に...ドラ達の悪巧みをチクってるニャ。」


 

 ...ダメじゃん


 全然ダメじゃん



「ダメじゃないニャ。兵士焦るニャ?焦ってなんとかしようとするニャ?そこに懐柔済みのーー」



ガチャ



「どうも。夜分に失礼しますよ。ドラ君」



 そう言って俺達の部屋に2人

 この世界の人であろう長めの耳が特徴的な中年の男と異世界者の幼女が入ってきた

 異世界者の幼女は初日から幼女って点で目立っていたからな

 ドラ曰く一番信用していいヤツ、らしい

 別に俺が幼女が好きな訳では決してない


 中年の男は...

 ああ、座学でなんか俺達に教えていたヤツか

 ケイローンとか言っていたな

 てかドラよく懐柔する気になったな



「ようこそニャ。賢者ケイローンに眠れぬ王マリュー。首尾は上々だったかニャ?」



 賢者ケイローンに眠れぬ王マリュー?? 

 幼女何者??

 あなた異世界者だよね?


 幼女が不思議そうな顔付きをしている俺を見て少しムッ、とし



「2つ名です」



 と睨む


 ん?

 なんかこの感じは...



「ケンドーくんだったね?きみ、僕の授業寝過ぎじゃない?そんなにツマラナイ?そんなにツマラナイ?ちょっとショックだよ...異世界者にも楽しく分かりやすい授業を目指してやっているのに」



 んー。この人

 やっぱりなんか怒りかたユルいな。

 だから気兼ねなく寝れたんだがな

 ともあれこの世界はラジオ兵士みたいな気違いばっかりではないってことだ



「落ちこぼれのケンドー...プププ...ププ...」



 幼女が馬鹿にしたように呟く

 

 あれっ?

 コイツ...やっぱこーいうキャラ?

 初日に「ふええええん!」とか情けなく泣いてなかったか

 眠れぬ王のマリューさんよ

 大体自作自演っぽい2つ名ってなんだよ


 いや

 いっても相手はガキだ

 ここは皮肉っぽく乗ってやるか



「おお...落ちこぼれたる私めがいるこの場に忙しい中、顔を出して頂き光栄に思います...眠れぬ王。なんのおもてなしも出来ずに申し訳ない...このケンドー、非常に不徳と致すところです...」



 俺が幼女に頭を下げると幼女の顔が一瞬パーッと輝き、また元の表情に戻り



「ん...まあくるしゅうないよ」



 と、まんざらでもない様子をうかべる

 

 チョロいな

 ガキには適当に流行りのアニメの真似でもしてやればすぐ乗ってくる

 

 俺の目測通り今の幼女にはこの自分の置かれた環境...

 「ファンタジー」が目下の流行りってワケだ

 エラそうな2つ名を自分でつけちゃう辺り...

 適当に姫扱いしていればいいだろう



「ケンドーくん!? 僕には? 僕にはなんかないの!?」



 あー賢者ケイローン様か...

 まあそのうちな



「ニャ。マリューはどうだったかニャ? 女将軍は動きそうにないかニャ?」



 ドラはいつの間にか眠れぬ幼女ことマリューに抱き抱えられたまま話す



「ドラちゃん。私のことは眠れぬ王とお呼びする約束。まだドラちゃんと私の関係は婚約者同士。正式な結婚をするまではプライベートでの呼び名は控えるように約束したよ」



 幼女がそっとドラを撫でる

 婚約? 結婚??

 猫と、か

 

 まあなんていうか...

 将来美人になりそうなのに色々と残念な子だな

 異世界俺TUEEE幼女バージョンの真っ最中なんだろうか

 

 ...俺みたいに悲観してるヤツなんかよりいいが



「どうでもいいニャ。女将軍の動きはどうなんだニャ?」



 ドラは体の至るところを幼女にモフモフされ嫌そうに答える

 お前はどこのリア充だ



「くんか...くんか...」

 


 幼女はドラの体を嗅いだり撫でまわしたり夢中だ

 あー、これ...

 話しあう気ねえな



「あーそうだ。ケンドーくん」



 存在感が薄かった賢者ケイローンが口を開ける


 というか幼女があんな感じだからこっちがメインなんだろうけどな

 ドラ的にも幼女には余り期待してなかっただろう


「きみさあ? <<風の加護>>持ち、だよね? スキルとかはクソスキルだけど初めから加護持ちの面白い異世界者がいる、って鑑定士から聞いていたけど...やっぱり僕の理論上有り得ないと思うんだよね? 異世界者だから、ってことで上層部は片付けちゃったけど。」


「あーあれはですね。嘘ですよ。嘘。俺のスキル<<贋作>>でステータス名を変えた、というか...どっちにしろクソスキルなんですがね」



 ん?

 これ言ってもいいヤツだったか?

 実際<<贋作>>はクソスキルなんだろうけどコイツのおかげで俺のガンである無駄にランクの高い...<<回復魔法>>を<<森魔法>>に誤魔化せた


 レアランク持ちは即、『実験場』いき...

 その『実験場』を免れたっぽい功績もあるから愛着はある

 

 というか生命線だ

 贋作してたのがバレたら、俺『実験場』行きになるんじゃないの?


 ドラの目の色が変わる



 「ケンドー...」



 ドラには隠すつもりじゃなかったんだが...

 やっぱり怒ってるかな?

 嘘をついたわけじゃないけど...

 隠していたってことにはなるか



「でかしたニャ!」



 ドラはピョンっと幼女から逃げるように飛び退く



「その<<贋作>>とやらは他人に使えるのかニャ!?」

 

「ん?ああ...ちょっと待ってくれよ...ああ出来るっぽいな。なんかドラのステータスが出てる」



 どうやらドラに触った状態なら出来るようだ

 一旦ドラから手を放すと画面は消えてしまう



米沢ドラ


 職業:弓使い(B)


 魔法:幻惑魔法(D)

 

スキル

 叡智(C)

加護

 なし



 画面には『贋作しますか?』と出ている



「ププ...しかしドラよ。ほんとに弓使いなんだな。しかもBランクとか宝の持ち腐れじゃん」


「ニャ!他人のステータスもしっかり見れるのかニャ!」


「ああ、ドラ君みたいなパターンはね。割りとあるんですよ。特にこの世界の住人は。割りといいランクなのに使うことが出来ないっていう事象は。なんせ生まれてすぐに勝手に決まって且つ変えも利かないからね。前聞いたのでスゴかったのは生来魔法を使うことが出来ない鬼族でBランク魔法の<<火魔法>>持ちで生まれた子がいてね。親御さんは嘆いてました」



 <<火魔法>>ってスゴいのか。

 ファンタジーにおける初心者御用達魔法って認識だったが


 ...待てよ

 ならあの魔法は!?



「スイマセン。ケイローンさん。<<回復魔法>>ってどうなんですかね?」


「か、回復魔法!?」



 ケイローンさんがビックリしたように答える



「いや...回復魔法とはね。そのはるか昔でこそ多用されていた魔法らしいけどね? 今使える人はほとんどいないはずだよ。過去の文献からみるに傷ついた体がたちまち治る。熟練によっては病気さえも。そんな便利な魔法が多用されていればこの世界の人達もこんなに死なずに済んでるんだろうけどねー...」


 

 やっぱりヤバい魔法みたいだ

 

 だけど熟練とか面白そうなワードも出ていたな

 俺もいずれ使えるようになるんだろうか



「現在では...北の宗教国家の当主。ただ一人が使えるみたいだね。ポーション製造国家とか言われてるけど。つまりそんな魔法があれば1代で国が建つレベルってこと。回復魔法を付呪したポーションを高値で売って、怪我した人を高値で治療して...」



 ポーションとか胸踊るワードも出てきたが...

 とても庶民には手のでる代物ではないらしい...

 つまり病気、怪我=デッドエンドの俺の考えは間違ってなかったってことだ

 

 よりによって即死ゲーの異世界かよ



「おっと、もうこんな時間か」



 ケイローンさんは顔を上げる



「そろそろおいとまするよ。多分これからしょっちゅう来れると思う...ほら、ルーンさんに言われてそこの眠れぬ王というか姫様を部屋に送らないといけないからさ。」



 ルーン...

 あの美しい容貌からは似ても似つかない異様な雰囲気の女将軍だ


 あの初日の...インパクトは忘れられない


 しかしこの残念な幼女

 あの女将軍に気に入られてるんだろうか?

 よく日中に女将軍に呼ばれていなくなるのを目撃する

 残念な頭は女将軍が影響してたりしてな


 そしてケイローンさんは一呼吸置き



「...大丈夫。今日のことは絶対言わない。僕は君達の味方だから」 



 といい残しドラを枕に寝入った幼女を抱いて部屋から出ていった


 というか

 幼女。ガン寝かよ

 「眠れぬ王」設定はどこにいった



「ケンドー。<<贋作>>についてもっと詳しく教えてくれニャ?」


「詳しくってほどでもないけどなー...」



 それからドラにスキル<<贋作>>について知ってる限りの情報を教えた


 ステータスの名前が変わるだけで使えるスキルなどは前と変わらないことや最近贋作出来る種類が増えてきたこと


 前はスキルは<<疾走>><<家事>>だけだったのが

 今、贋作出来るのは<<疾走>><<家事>><<剣技>><<話術>><<スリ>>にまで増えている



「フム...フム...聞けば聞くほどスゴいスキルだニャ !チートスキルだニャ! ムフ...ケンドーのおかげでドラ様大計画の最後のピースが完全に完成したニャ!」


「いや...お前...言い過ぎだろうよ...所詮Cランクだし」



 んニャ? ドラがまだ分からないのか、といった顔でこちらを見てくる



「我々は初日のデブ鑑定士に鑑定されたニャ? いっても国家鑑定士ニャ? しかしケンドーの<<贋作>>はバレなかった。これがどういうことか分かるかニャ?」


「全然わかんない」


「我々がここから逃げ出したとして...多分指名手配されるニャ。これが最大のネックだったニャ。幸いカメラみたいなのはニャいから...指名手配されるとしたら似顔絵と...あとなにが決め手になるか分かるニャ?」


「んー...衛兵にとる態度とか?」


「違うニャ! 鑑定タグのバッジだニャ! 生まれつき発行されるものでトラの子の身分証明書みたいなもんだニャ! 町に入る時には必須のバッジだニャ!」


「へえ。バッジ。何気スゴいんだー。...売ったら金になるかな?」


「...こんなチャチなバッジ、紛失は付き物だニャ! で町に入る時ニャ!ケンドーに<<贋作>>してもらった上でバッジの紛失を装おうニャ! あとは分かるニャ?」


「紛失届けを出す...か?とりあえず町には入れるか?」


「違うニャ! それ、そもそもケンドーの<<贋作>>の過程全く必要ないニャ! ...バッジを再発行してもらうニャ! 再発行されたバッジは...指名手配の指標になるであろうバッジとは似ても似つかないものニャ!」


「んー。だいたい言いたいことは分かったけどさぁ~なんか鑑定士って激レアなんだろ?またトルネオとかいうヤツ出てきて終わりじゃない?」


「ニャハ。国家鑑定士は世界に3人しかいないといえども...それはつまり国家に与してない鑑定士はいる、ってことニャ! 事実ここから南の自由都市クリスタルシティは国家に与してない町で...且つ鑑定士を抱えてるらしいニャ!」



 そんな情報どこで仕入れたんだ...

 

 いや

 ドラはとにかくこの2週間「情報収集」に躍起になっていた

 自前のコミュ力を生かして...

 病棟のシスターやら厨房のメイドやら...

 

 警備がザルだったからこそ出来たことだろうがしっかり脱出を見据えて動いているドラにはただただ頭が下がるばかりだ



「あとはケンドーの<<贋作>>を使ってニセ鑑定士でガッポリ稼ぐのもよし...スキルを隠したい層に贋作屋を開くのもよし...チートスキル俺TUEEEだニャ!! ニャハ! ニャハハハハァァ~~!! ...ゲホッ! ゲホッ...」


 ドラは非常に興奮している

 ほんとに最後の懸念が無くなった、という感じだ


 俺としてもちょっと嬉かった

 ドラの計画とやらをまだ完全に理解はしていないが、この俺のスキルで今のクソ環境が変わる可能性が出てきたのだ


 その日はケイローンさんが持ってきてくれた...久々の肉

 干し肉を2人で分けあって食べた

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