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涙の証  作者: 泉
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1話 出会い

僕は人には認識できないものが見える。


それは恐ろしく人を死に追いやろうとするもの。


それは自分の願いを叶えられずその場にとどまろうとするもの。


それは何が起こったか分からず自分の事さえわからないもの。


そしてこの世に存在しないもの。

俗に言う「幽霊」といわれているものだ。


だが幽霊が視える以外これといって特徴はない。ただ普通に高校に通う学生だ。

僕は父親の仕事の関係で違う高校に転校することになった。


しかし転入初日にあんな目に遭うとは・・・


「お兄ちゃ~~ん!朝だよ起きて~!下でご飯作ってるから!」

妹の柚葉(ゆずは)がいつもと何も変わらない様に起こしてくる。

「あぁ~いい目覚めだ!朝から可愛い妹に起こされて!」

僕は布団を投げ捨て下に降りる。


ドアを開けると珍しく父親が居た。

いつも通りの仏頂面。

父親はいつも仕事で外国に行っており、帰ってくるとしたら1年に1回帰って帰って来るか来ないかだ。

僕は父親とは何も話さなさい。

挨拶さえも交わさない。

母さんが死んだ後から何も父親とは話さない。

母さんは僕が中学1年生のときに死んだ。


僕がテーブルに座ろうとした瞬間

「行ってくる」と父親が言う。

それは僕に言ってないことはわかった。柚葉と父親は別に仲は悪くはない。

「お兄ちゃん!早く食べないと遅刻するよ!もう柚葉行くからね!」

そういうと柚葉も椅子に置いてあったカバンを持ち家を出ていった。

「なんか機嫌悪かったなあいつ」

そう独り言をいいながら一人寂しく柚葉の作った朝ごはんを食べ進めた。

朝ごはんを食べ終わり、新しい制服を着て家を出る。

「朝なのになんて暑いんだ、、、夏なんて無くなっちまえよ。もう死ぬ、、、」

そんな事を一人言っていたとき。

「はぁ、、、あなたも死にたいのね。」

「うわっ!!誰だ!?」

声の聞こえた方を向く。そこにいたのは少し古くさい白いワンピースを着た、肌の白い自分と同じくらいの歳の女の子だった。

「え!?私が見えるの!?嘘でしょ!?嘘は泥棒さんの始まりだよ!」

「はい。視えます。」

女の人と話すのは慣れていないので会話の広がらないつまらない返しをしてしまったと後悔した。

しかし彼女は子供のように無邪気な顔をして話を続ける。

「あなた名前は!?」

「あ!ちなみに私は倉敷(くらしき) 夏奈(かな)っていうの!」

「見た目からしてあなたは私と同じくらいの歳かなぁ?」

「てか聞いてよ!あたしの事みんな視えないらしくて本当困っちゃってるの!」

「まぁ幽霊だから仕方ないか!」

彼女はテヘッという感じで自分の頭をポカンと叩く。

「少しウザイが可愛い」と思ってしまった。男はこういうのに弱いらしい。

「え~と自分は(みなもと) (しゅう)といいます。歳は16で今年で17になります。それと幽霊とか視えたりします。」

普通に答える。

「え!?幽霊視えるんだスゴーイ!」

「年齢は私よりちょっと年下かぁ~。あ!年は秘密ね!」

別に幽霊の女の年齢には興味はなかった。

「でも君・・・集君の事あんまり見たことないけど最近引っ越してきたのかな?」

いきなり下の名前で呼ぶとかどんだけフレンドリーなんだよ。あ、もしかしてこれが普通で俺がコミュ症なだけなのか。そんな事を思うと悲しくて涙がでそうになる。さすがにそんな事では泣かないが

「集くん?」

大丈夫?と言わんばかりの顔をして彼女が聞いてくる。

「はい!そうです!最近引っ越してきて今日は近くの日ノ出高校に転校するんです。倉敷さんはいつ頃からこの町にいるんですか?」

彼女は腕を組み首をかしげて話す。


「そうだなぁ~。それがいつ頃からこの町にいるか分かんないだよねぇ~。気付いたらそこにいたって感じかな?幽霊の前の記憶が無いんだよね~。それと私の事は夏奈って呼んでいいよ!?」


いきなり女の人を下の名前で呼ぶなんて童貞の俺にはハードルが高すぎる。ふざけるなフレンドリーバカ女!と思ったが

「じゃ、じゃあ夏奈さん。」

童貞なりに少し頑張ってみた。

しかし彼女はニコリと笑い「なぁに?」と聞いてくる。

ヤバい。その後の話を考えてなかった。とりあえず頭に浮かんだ話題を話してみる。

「夏奈さんって、、、綺麗ですよね?」

何言ってんだよ俺と心の中で自分にツッコむ。

「そう!?あなたは私がどういう風に見えるの!?」

とても不思議な質問をしてくる。

「え~と髪は黒くて長いですね。目は切れ長で、鼻筋も綺麗に通っていてとても綺麗な方だと思います。」

自分の顔が赤くなっているのが自分でも分かりとても恥ずかしい。

「えへへ~そうなんだぁ~」

彼女は嬉しそうに応える。

「あ!ていうかさ集君?」

「はい?なんですか?」

「学校は大丈夫なの?」

赤かった顔が一瞬で青くなる。

僕はすぐ学校へ走って向かった。後ろでは夏奈さんが手を振っているが振りかえす余裕もなく無我夢中で学校へと向かった。

しかし走っている途中で夏奈さんと最初会ったときに言われた言葉ををふと思い出した。


「はぁ、、、あなたも死にたいのね。」


しかしそんな事より学校だ。転校初日から遅刻なんてあり得ないと思い走り続けた。

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