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マイ・プリンス!?

連休明けの教室にて。

「ねえねえ、放課後ティータイムしない?」

典子が、どっかで聞いたようなフレーズで美月を誘ってきた。

「何それ?」

「ま〜、スタバ行こ、スタバ。新商品が出たって」

「たまにはカルピスのあるカフェに行きたいな〜」

「あ〜、また今度ね」

美月はしぶしぶ、典子に付き合うことにした。


二人は、駅前のスタバに来た。それはいいものの、店内はとても混んでいて、とても、座れそうな状況ではなかった。

「どうする?新商品買って、外で飲む?」

美月が尋ねると、典子は、

「う〜ん、座りたかったんだよね〜。今日はやめとくか」

あっさりと諦めてしまう。

そこで典子は、ある店のことを思い出した。

「あ、私、行ってみたかったカフェがあるんだけど」

「え、どこどこ」

「学校の近くの、喫茶店。カルピスが表のメニューに載ってたの」

「あそこ!?あそこさ〜、客がいつもいなくって、閑古鳥が鳴いてるって噂だよ〜」

「良いじゃ〜ん、確実に座れるよ?」

「そりゃそうだけどさ〜」

「行ってみよ、ね?」

かくして二人は、その喫茶店に向かった。ロングヘアーをポニーテールにまとめながら、美月が先導して歩く。


その喫茶店は、「喫茶マイ・プリンス」という看板が出ていた。

「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」

落ち着いた声で迎え入れられる。見れば、三十歳くらいだろうか、女の人がカウンターの向こうに立っていた。

「こんにちは〜」

二人は軽く会釈しつつ、美月が促し、あえてカウンターを選んで席に着いた。

「あら、初めてのお客さんで、カウンターに座るなんて、珍しいですね」

「このお店に来たら、カウンターに座って、お姉さんと仲良くなろう、って決めてたんです」

美月がビミョーにキンチョーしたそぶりで微笑む。

お姉さんを見ると、赤茶のロングヘアーで、大人っぽい。というか、大人だ。担任の先生よりは、年下かな。

「あら、そうなの。ゆっくりしていってくださいね」

ふと気づくと、店内には、音楽が流れていた。ピアノとドラムだろうか。そう思っていると、低い楽器の音も聞こえてきた。美月が聞いたことのない感じの音楽だ。

その美しい音楽に耳を傾けていると、

「ご注文は?コーヒーでいい?」

今度はやや強い口調の男の人の声だ。ふと前を見ると、若い人が立っていた。二十代前半くらいだろうか。

「わ、私は、カルピス」

と、美月。

「あたしはコーヒーでいいです。アイスで」

と、典子。

注文を終えてから彼の横顔を見ると、なかなかのイケメンだった。端正な顔に、爽やかな黒いショート・ヘアー。ボタンを外したワイシャツから、男らしい鎖骨が見えている。

「ごめんなさいね、彼、不器用なの」

お姉さんが笑う。

「あんただって、男の前では無口じゃねーか」

イケメン店員が応じる。

「いつもこんな感じなのよ」

お姉さんは苦笑気味だ。

「あの、お姉さん、名前はなんていうんですか?」

典子が尋ねる。

「山田玲子。玲子って呼んでね。で、彼が、土屋賢太郎くん」

「私は、沢田美月。彼女が、大和田典子です」

「美月ちゃんと、典子ちゃん。よろしくね」

「よろしくお願いしま〜す!」

二人はイセーの良い返事で、声を揃えた。


「その制服って、どこ校だっけ…?」

玲子は首をかしげる。

「あ、これ、実はなんちゃって制服なんです」

「あら、そうなの?よく似合ってるよ」

「ありがとうございます〜」

「てことは二人とも、高校生じゃないのかな?」

「いえ、うちの高校、服装自由なんです」

「ああー、なるほどね!」


と、その時だった。

「はい、カルピスとアイスコーヒー」

賢太郎が、つまらなそうな顔で、注文の品を二人の前に置いた。そんな顔も、様になる美男子だ。正面からモロに見た美月は、そう思いながら、カルピスに口をつける。

「あ、うま!」

そのカルピスは、美月の好みの濃さドンピシャに仕上がっていた。

飲んでいると、聞き覚えのあるフレーズが、耳に入ってきた。

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