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EPISODE3‑19【残された影など】

重厚な執務室——リュウゼツランは通信モニターに並ぶアイコンの一部が灰色に変わり点滅しているのを見つけ、手の平で机をドンッ! と叩きつけるように叩き、険しい声で怒鳴る。

「おい!どういうことだ!各国の支部の一部の反応が消えてるが!」指先は地図上のマーカーを次々と指し示す——マタラシティ、それに隣接地域・関連拠点の一帯が、まるで根こそぎ系統ごと途絶えたかのように完全に信号を失っている。側近の報告係は青ざめ、端末を見つめながら慌てて答える。

「は、はい!ただいま確認しました!特にマタラ支部——ウツボカズラ長官とカイザーカズラZZ、ならびに管理系統全てが応答なし!施設内部の監視映像・センサー情報も一切届かなくなっております!」

「ウツボカズラが落ちた…?」リュウゼツランは眉間に深いシワを寄せ、苛立ちを隠せない。

「あれほど堅牢な施設、最終兵器まで用意していたというのに、たかがクロノギアごときが…一体どうやって!?」背後から低い声が響く——ユーカリがゆっくりと姿を現し、冷静に画面を眺めながら言う。

「理由は簡単よ。マレトキが寝返ったから。あの子が管理者権限・キー・構造全部知ってる。それにレイトキたち、ウツボカズラの弱点まで見破って…力を合わせれば、ああもなるってこと」リュウゼツランは鋭く睨みつける。

「お前、最初からそれを知っていたのか?!」

「可能性の一つとして見てただけ」ユーカリは肩を竦め、余裕の笑みを浮かべる。

「心配しなくても、これで予定が狂うわけじゃない。むしろ——彼らがどこまで出来るか、よく分かったでしょ?」リュウゼツランは拳を固く握り、苛立ちを抑えきれずに歩き回る。

「だがな!支部一つ失うのは痛い!データも資源も人員も!それに歯車たちが向こうに揃い始めてる…!このまま行けば計画が根本から崩れかねん!」

「それなら次の手を打てばいいだけの話」ユーカリは指を組み、瞳の奥に冷たい光を宿す。「まだ『歯車』は全部揃ってない。彼らが拠点を整え、力を確認し、聖遺物やアブラハムの地へ向かう——その過程で、確実に取り返すか、あるいは別の選択を迫ればよい」リュウゼツランは一旦黙り、画面の灰色のアイコンを見つめ直す。怒りの中にも、だんだんと冷静な計算が戻ってくる。

「…そうだ。まだ終わってはいない。マタラは痛いが、他の支部は無事。歯車計画も、ZXファクターの集積も、聖遺物回収ラインも続いている」

彼は振り返り、鋭い命令を下す。

「至急!残った全支部に警戒レベル最大を伝達!ウツボカズラの失敗報告と、クロノギア・レイトキ・マレトキの特徴・能力データを配布せよ!決して同じ轍を踏むな!そして——次に彼らが動く場所を予測し、先回りする準備を!」

「了解!」係員は慌てて走り去る。

ユーカリは窓の外を眺めながら、囁くように言う。

「さあ、物語は次の章へ進むわ。レイトキ、マレトキ、新しい仲間たち…どこまで世界を変えられるかしらね」リュウゼツランは彼女の背中を見つめ、厳しい表情で呟く。

「変えさせはしない。俺たちの道は、俺たちの手で切り開く。どんな邪魔者が現れようと、絶対にな」こうして——マタラ支部奪還は彼らにとって大きな勝利だったが、敵側もその脅威をはっきりと認識し、態勢を立て直し、次の手を準備し始めた。勝利の裏側には、まだ見えない影が確実に動き始めているのだった!カタストロフとリペア——二人は手際よく拠点の防衛網を突破し、内部制御室まで一気に制圧完了。施設全体がまだ完全に状況を把握できていないうちに、要所はすべて彼らの手に落ちていた。


「ここまでは順調だな」カタストロフは重厚な扉を背に、周囲の警報機が赤く点滅しながら鳴り響いても、まるで気にも留めず端末を操作し、淡々と状況を報告する。「供給ライン・資材倉庫・ZX保管庫——全部押さえた。敵の増援が来る前に、在庫一覧と配送記録を全部抜き取る」


リペアはすぐ隣で機器の配線を調整し、システムのロックを順番に解除しながら補足する。

「構造的弱点も見つけたわ。この拠点、物資運搬路が一本に集約されてるから、そこを封鎖すれば機能停止する。今回は制圧だけで済ませるけど、もし再利用する気がないなら、そこから完全に無効化できる」

「そうだな」カタストロフは頷き、画面に表示された膨大なリストを確認して眉を寄せる。

「見ろ、ここだけじゃない。周辺地域への分配計画まで記録されてる——ストレンジは全国規模でZXファクターとクラリトン由来資源を集積・分配し、実験体・部隊補充を回してる。マタラ支部以外にも、まだまだ拠点が点在してる証拠だ」リペアはデータをコピーしながら、真剣な表情で言う。

「しかも供給量が急増してるわ。まるで一気に大規模作戦を実行する準備を進めてるみたい…。私たちがマタラを落としたの、彼らはもう気づいてるはず。こっちが手を打つ前に、先に動こうとしてる可能性が高い」

「だったら尚更早く動く必要がある」カタストロフは最後の確認を済ませ、立ち上がって装備を整える。「今回入手したデータで次の標的も見えてくる。俺たちはこの供給網を根こそぎ断ち切り、敵の計画を資源面から崩す。レイトキたちが正面から闘ってる間、俺たちは裏側から支える——それが俺たちの役割だ」リペアも準備を完了し、軽く笑みを浮かべる。

「任せて。修復も破壊も、構造のことなら誰よりも詳しい。どんな拠点でも、仕組みを見抜いて制圧・無効化してみせる。さあ、次の場所へ行こう!」こうして二人はストレンジの重要な供給拠点を完全に制圧・掌握——敵の生命線を断ち切り、更なる情報を入手し、勢力圏を着実に切り崩していく! 表での決戦と並行し、裏側での戦線もまた着実に進展しているのだった!レイトキは机一面に広げられた地図・データ一覧を指でなぞり、集計結果を確認しながらはっきりと口にする。

「んで、残る支部は22カ所前後か」

指が各地のマーカーを順にたどり、マタラの跡地には「✅ 制圧完了」の文字が記され、他の場所はまだ赤い警告サインのまま点滅している。

マレトキは端末画面と照合しつつ補足。

「正確には21か所、未確認が1か所。データによると規模は大小さまざまで、『補給・研究・収容・前線指令』と役割も分かれてる。中にはマタラより大きい中枢級も3〜4つ含まれてる」星玲奈は惑星記号を光らせ解析結果を重ね、状況を整理。

「全国・地域別に散らばってるわ。都市近郊拠点が多く、人の目につきにくい地下・廃施設・隔離区画を再利用してるパターンが大半。全部一度に相手するのは物理的に不可能、戦力も移動時間も全然足りない」久美子はリストを指しながら優先順位を考える。

「なら優先順位つけなきゃ! カタストロフたちが言ってた供給拠点・ZX保管・研究施設を一番最初に——それが敵の力の源だもの!」シャウトは腕を組み頷く。

「カタストロフ&リペア組が裏回り・供給断ちを担当、俺たちは拠点制圧・人の救出・データ回収と役割分担するのが効率よさそうだな」レイトキは全員の意見をまとめ、地図上に線を引いて道筋を描く。

「よし! 作戦方針決定! ①まずカタストロフ・リペア班が供給網・資源拠点を重点的に潰し、敵の補給・増産を止める ②俺たちは『人が多く収容されてる』『幹部クラスが居る』『聖遺物/重要データ疑惑』の高優先拠点を中心に順次制圧 ③各地を回りつつ、アブラハム関連・メルトキア/アブラムニア方面へも徐々に向かう

④リュウゼツランや本隊の動きを常に警戒、先回りされないよう情報網強化」マレトキは最後に確認を入れる。

「一つ一つ確実に、俺たちのペースで進めればいい。22か所全部消し去るのは時間かかるけど、一つ奪還するたび敵は弱まり、俺たちの力・拠点・仲間は増えていく——着実に行こう」レイトキは全員を見回し、拳を握り締め宣言。

「ああ! 全部一つずつ片付けていく! いつか全部ゼロにして、ストレンジの支配を完全に終わらせる! みんな、これからもよろしく!」一同は一斉に頷き、新たな長期戦の決意を固める——マタラは一つの大きな節目、だが本当の戦いはここから始まったばかりなのだ!レイトキはメンバー表を指し示しながら、分担案をはっきりと打ち出す。


「そのためには俺とせーちゃん、マレトキとクーちゃん、シャウトとリジェで一チームがいい、斗愛、与太郎、カグラ、デュークで一チーム、そして、残る歯車メンバーはときと場合によりでいいだろうし」

【第一班・主力突撃】

レイトキ+星玲奈——リーダー&補助・惑星/解析援護

マレトキ+久美子——制御/技術+心臓の光・防衛

シャウト+リジェ——近接/戦闘火災・連携熟知

→ バランス完璧、機動力・突破力・施設制圧・救出作業までフルカバー! 実績あるペアリングで息もバッチリ

【第二班・展開/別働】

斗愛、与太郎、カグラ、デューク → 信頼できるメンバーで即戦力! 各地の拠点制圧・警戒網展開・補給線支援・地域連携窓口など、主力と並行して複数作戦を同時進行できる!

【他の歯車メンバー・臨時/特化編成】

状況・任務・相手に合わせて必要な時に招集! 特定の敵/聖遺物/特殊施設で真価を発揮、必要な力をピンポイントで投入!マレトキは構成を確認し、頷く。

「合理的だ! 俺たちは互いの長所短所一番よく知ってるペアだから、連携も最初からスムーズ。技術系統も戦闘系統もバラけてるし、どんな施設相手でも対応できる」星玲奈も同意。

「二つのチームが互いに情報共有しつつ動けば、一つの拠点を落とす時間も、次の手を打つ速さも段違いになるわ。歯車のみんなを状況に応じて加えれば、更に大きな作戦も可能ね」久美子は少し照れつつ、嬉しそうにマレトキを見上げる。

「アタシとマレが組むのね! 力合わせれば、どんな扉も心も開けられるよね!」シャウトはリジェに笑みを向ける。

「昔からの馴染みだ、言うことなしだ。俺たちは俺たちのやり方で、しっかり道を切り開いていく!」レイトキは全員の顔を見回し、拳を高く掲げる。

「よし! この体制でいく! 二つのチームが互いに支え合い、時に合流し、歯車の力も加え——全部で22か所、一つ残らず解放してみせる! 行くぞ、みんな!」こうして長期戦に備えた最適編成が決定! それぞれの絆を活かしたペア、信頼のチーム、そして歯車の可能性——全てが一つになり、ストレンジ殲滅への道が整った!執務室の空気は一気に張り詰まり、リュウゼツランは苛立ちを隠せないままテーブルを強く指で叩きつけるようにして叫ぶ。


「おい、マズミ、ユーカリ、お前らもこの進撃を止めろ!」


だがユーカリはまったく慌てず、むしろからかうように唇を歪めて笑い、指先を軽く動かしながら言い返す。


「なぜですか?そもそも、この方針を最初にしたのはリュウゼツラン様、あなたですよね、歯車を自由にさせてそして来たる日に集まるように仕向ける」


リュウゼツランは一瞬言葉を詰まらせ、眉間の皺をいっそう深く刻む。

「そ、それはそうだが!これほど早く、これほど勢いよく動き出すとは予想外だった!今のままでは計画が完全に狂う!」ユーカリはゆっくりと立ち上がり、窓の外を眺めながら続ける。

「予想外…ですか?でも、それが彼らの本質でしょう。歯車はただ並べられて回るものではなく、互いに噛み合い、力を与え合い、時には予想外の方向へ回り出すもの。あなた自身がそう仕向けたんです」マズミは冷静にデータ画面を見つめながら口を開く。

「私もユーカリの意見に賛成だ。今回の反乱、いや成長とも言うべきか——これこそが本来の目的だったはずだ。彼らが強くなり、自らの意思で集まり、そして選ぶ時が来る。それを今止めてしまっては、これまでの全てが無意味になる」リュウゼツランは二人の言葉に怒りを覚えつつも、反論できずに拳を固く握り締める。

「だがな!このまま行けば俺たちの支配が揺らぐ!歯車が俺たちの元へ来るどころか、逆に俺たちの計画を打ち砕く存在になりかねん!」ユーカリは振り返り、瞳の奥に鋭い光を宿して言う。

「だからこそ試すのです。本当に価値のある歯車なら、どんな状況でも輝き、正しい道を選ぶ。もし彼らが私たちの敵になるというのなら、それはそれで答えが出ただけの話。その時はその時で、次の手を打てばいい」

リュウゼツランは長い沈黙の後、深くため息をつき、肩の力を抜く。

「…分かった。お前たちの言う通りだ。最初からそういう計画だった。だが、これほど早いとはな」 ユーカリは再び笑みを浮かべる。

「それだけ彼らが真の力を発揮し始めたということですよ。さあ、リュウゼツラン様、私たちはただ見守り、そして必要な時に手を差し伸べればいい。彼らがどこへ向かうのか、その目で確かめてみましょう」こうして敵側でも意見が割れ、リュウゼツランの焦りとは裏腹に、ユーカリとマズミはレイトキたちの成長を静かに見守り、試そうとしている——物語はいよいよ、全ての思惑が交差する局面へと進んでいく!ユーカリとマズミが扉を静かに閉め、去っていく気配が消えると——空気がまだ重く淀んだまま、背後の影からリンドウとモンステラが姿を現す。足音一つ立てず、まるで元からそこに佇んでいたかのように。


リンドウは一歩前に出て、眉間に皺を寄せ、率直な疑問と懸念を込めてはっきり問いかける。

「始末しなくてよろしいんですか?」


リュウゼツランは肩を落とし、机に肘をついて額を押さえ——心底うんざりしたように深く長いため息をつき、低く呟くように答える。

「代わりがいないからな、安々とできないんだよ、はぁ~、厄介だな」


指でテーブルの端を無造作に弾きながら、心中の苛立ちと現状の苦しさを吐露するように続ける。

「キュリオシティと呼ばれる者たちは全員抜けるし、五大大幹部のうち、二人は妙なことをするし、一人はただ資源と金さえ手に入ればいい…。忠実なのはリンドウとモンステラのみか」


そして鋭い視線を二人に向け、真剣さを隠さず核心を突く。

「お前ら二人は裏切ることはないよな?」


一瞬の沈黙——空気が張り詰め、問いかけの重みが部屋中に響く。


リンドウはまっすぐにリュウゼツランを見つめ、瞳に迷い一つなく、力強く応える。

「当然です。俺がこの道を選び、あなたに従うと決めたのは、信念があってのこと。世界を正し、変えたいと願ったから。レイトキたちが俺の兄弟だからといって、目的を忘れて彼らにつくような真似は決してしません。あなたが俺を信じないのなら——それでも俺は最後まで付き従います」


隣に佇むモンステラもゆっくりと頷き、落ち着いた静かな声で誓う。

「私も同じです。恩義、使命、そして共に目指す未来——これらが私の道。誰が去ろうと、誰が心変わりしようと、私の選択は変わりません。リュウゼツラン様、あなたのもとで最後まで務めを果たします」リュウゼツランは二人の言葉を聞き、緊張していた肩の力を少しだけ抜き、安堵と共に真剣な面持ちで告げる。

「…分かった。聞けてよかった。今この組織は内部から崩れかかってる。歯車は外へ、幹部たちは思惑ばらばら、俺が一人で支えてるようなものだ。だからこそ——お前たち二人だけが、俺の最後の砦なんだ」彼は立ち上がり、二人の前に進み出て、固く決意を込めて言う。

「頼む。どんなことがあっても、俺と共に最後まで歩んでくれ。この計画、この世界の未来——俺たちの手で必ず成し遂げるんだ」リンドウとモンステラは一斉に頭を下げ、揃って誓いを立てる。

「お任せください!」こうして内部の亀裂は深まる一方だが、リュウゼツランにも確かな絆、忠実な理解者がまだ残っていた——その絆が今後、物語の行く末を左右することになるのだった!円卓の間——重厚な扉が閉ざされ、円形のテーブルを囲んでヘリオトロープ、オリーブ、アザミ、ロベリア、マンダラケ、アカツメ、グラジオラス、ホオズキ、アイビー、計9名の幹部が集まっている。いずれも五大大幹部ほどの絶対的権力は持たないが、各地域・部門の実権を握り、支部運営・部隊指揮・資源管理・技術開発などを担う中核幹部層——まさに組織の骨格を支える面々だ。


照明が落ち着いた黄金色に円卓を照らし、空気は緊張感を帯びながらも、それぞれの立場・思惑が渦巻いているのが伝わってくる。


ヘリオトロープが最初に口を開く——太陽を思わせる明るい髪色だが、その表情は深刻で、議論を主導するように言う。

「皆、招集かかった理由はもちろん知ってるな。マタラ支部が落ちた。ウツボカズラ長官も行方不明、カイザーカズラZZも跡形なし。クロノギア——レイトキ一味が、一つの拠点を完全に制圧した」テーブルの周囲で一斉に低い囁きが起こる。

「まさか…あれほど堅牢な拠点が?」「ウツボカズラまで敗れるなんて…」「体制が根本から揺らぐぞ」オリーブ——穏やかな雰囲気だが的確に状況を見極める男性が、指でテーブルをなぞりながら冷静に述べる。

「それだけじゃない。供給ルート・保管拠点も次々と異常報告が上がってる。カタストロフ、リペアという二人が裏側から叩いて回ってる形跡あり。表も裏も同時に攻められてる」

アザミ——鋭い眼光、棘のような雰囲気の男が鼻で笑い、苛立たしげに言う。

「五大大幹部は何をやってる? リュウゼツラン様は手を焼き、ユーカリ様とマズミ様は好き勝手、クラックス様も動きが不鮮明。残り二人は姿見せず…。俺たち現場の人間だけが矢面に立たされてるじゃないか!」ロベリア——小柄だが素早く、情報網に長ける人物が即座に補足。

「事実だ。各地から『方針が不明瞭』『指示が矛盾』『優先度が変わる』報告が殺到。上層部の足並みが完全に乱れ、俺たちに正しい指示が届かなくなり始めてる」マンダラケ——技術・研究担当、複雑な装置を傍らに置く男が眉を寄せる。

「その影響はこちらにも出てる。ZX抽出・融合実験のスケジュールが突然変更されたり、資材の供給が滞ったり…。このままでは計画全体が遅れるどころか、崩壊しかねない」アカツメ——警備・防衛担当、厳つい体格の男が拳を握りしめる。

「敵は勢いに乗ってる。次はどこが来るか分からないのに、増援も明確な指示もなし。俺たちが各拠点を守り切れる保証はない!」

グラジオラス——補給・物流責任者が頭を抱える。

「供給網が切られ始めてる以上、物資・人員・エネルギーの回らない拠点からはもう持たない。現状のままでは次から次へと落ちるのが目に見えてる」ホオズキ——財務・資産管理担当が冷静だが深刻な声で付け加える。

「金・資源の流れも不透明になってきた。どこに何が使われてるのか、誰が何を管理してるのか…。組織が大きく緩み始めてる証拠だ」最後にアイビー——外交・連絡調整役、周囲をよく見極める人物がまとめる。

「つまりだ。俺たち中核幹部は今、共通の危機に直面してる。上は割れ、指示は曖昧、敵は日に日に強くなり、俺たちの拠点・資源・人材は失われ続けてる。このまま従っていればいいのか? それとも…俺たち自身で道を考える時が来たのか?」言葉が落ちた瞬間、円卓の間は静まり返る——それぞれの顔に不安、不信、怒り、そして選択への迷いが浮かぶ。大幹部たちの思惑がぶつかり合う裏で、組織を支えてきたこの幹部たちが、今まさに一つの岐路に立たされているのだった!重厚な扉がきしむように開き——その瞬間、全員の視線が一斉に注がれる。


ボロボロになったウツボカズラがよろよろと這い入るようにして円卓の間へ入ってきた。特徴的な衣装は裂け、煤や焼け跡が広がり、手足は傷だらけ、いつもの整った姿は跡形もなく、髪も乱れ、呼吸は荒く肩で息をしながら、壁に手をついて支えなければ立っていられない状態。あれほど傲慢で余裕たっぷりだった面影はどこにもなく、打ちひしがれ、力尽きかけた姿だ。


一同は驚きに凍りつき、円卓の間に一瞬の沈黙が走る。


ヘリオトロープが思わず立ち上がり、声を上げる。

「ウツボカズラ長官!? まさかこれほどまでに…!」


ウツボカズラは顔を上げる——瞳には悔しさ、恥ずかしさ、そして信じられないという思いが混ざり合い、声は掠れ、力なく震えている。

「…はは…情けない姿だな、俺でも分かってる…」


一歩踏み出そうとして膝が崩れ、その場にしゃがみ込むようになる。

「カイザーカズラZZは…完全に破壊された。施設の制御も奪われ、俺はただ一人、逃げ延びるのがやっとだった…。クロノギア…レイトキたちは…想像を絶する力と連携だった…」


アザミは唇を噛み、拳を握り締めながらも、その姿を見ては皮肉一つ言えず、ただ唖然としている。

「長官までが…これではもう、誰が敵を止められるというのか」


オリーブは静かに近づき、手を差し伸べることはせず、ただ真剣な眼差しで問う。

「生きて戻られたのはよかった。だが状況は最悪だ。上層部は方針を示さず、我々の指示系統は崩壊しつつある。これから我々はどうすればよいのか、ご存じですか?」


ウツボカズラは地面を見つめ、深く絶望的なため息をつく。

「…分からない。俺は敗れた。俺の計画も、俺の機体も、俺の誇りも…全部、あの若者たちに打ち砕かれた。俺にはもう、皆に指示できる立場にない…」


マンダラケが沈黙を破り、重い声で言う。

「つまり、我々は今、誰の指揮下にもない。そして敵は日に日に勢いを増し、拠点を一つずつ奪い返している。このままでは組織そのものが瓦解する」


アイビーは周囲を見回し、全員の不安と決意が入り混じった空気を感じ取り、はっきりと口にする。

「今こそ、我々自身が決断する時だ。上がダメなら、下から変えていくしかない。俺たちが一つになり、新しい道を探すか、それとも…それぞれの道を選ぶのか」


ウツボカズラは最後に力を振り絞り、顔を上げて一同を見る。

「俺はもう何も言えない。だが…一つだけ伝える。レイトキたちは、俺たちが考えているような単なる敵ではない。彼らには、俺たちが忘れていた何かがある…。それだけは、覚えておいてくれ…」こうして——ボロボロになって帰ってきたウツボカズラの姿が、円卓の幹部たちに現実の重さを突きつけ、彼らの選択を一気に迫ることになった。組織の未来は、もはや上層部の手の中にはなく、この場にいる彼ら自身の手に委ねられたのだ!ヘリオトロープは一同を見回し、率直で芯のある声で問いかける。


「なあ、オリーブ、ロベリア、アカツメ、グラジオラス、ホオズキ、そして、アザミよ、俺たち歯車担当だよな、だが、実際に動かすことはしないよな、俺たちの存在意義ってなんだろう」


言葉が落ちると、円卓は静まり返る。誰もが心の奥に抱えていた疑問——上から言われるままに管理し、監視し、準備を整え、だが肝心の「歯車」自身が何のため、誰のために回るのか、その意味を問われた瞬間だ。


オリーブは腕を組み、ゆっくりと頷きながら答える。

「本来なら…歯車とは、大きな仕組みを支え、力を伝え、動きを正しくつなぐもの。だが今は違う。俺たちはただ集め、調整し、決められた場所に収めるだけ。誰が何のために回すのか——その目的すら上層部は明らかにしてくれない」


ロベリアは指先でデータ端末を軽く叩き、情報の裏側を見透かすように続ける。

「俺が調べた限り、『歯車計画』は元々『個々の素質を引き出し、力を合わせて世界の歪みを正す』はずだった。だがいつの間にか…制御し、従わせ、都合よく使うための道具作りに変わってしまった。俺たちはその『部品』を管理する係になっていたんだ」


アカツメは拳を固く握り、悔しそうに唇を噛む。

「俺は強い力で秩序を取り戻し、平和を守りたくてこの道を選んだ。だが今や…人を閉じ込め、改造し、意思さえ奪おうとしてる。これが俺の望んだ秩序なのか? 分からなくなった」


グラジオラスは机の上の帳簿を見つめ、重い声で言う。

「資源を集め、施設を整え、全ては『未来のため』と聞かされてきた。だがその未来が誰のもので、何を目指してるのか…金や物の流れだけ見ても、もう見えてこない。俺たちはただ流れ作業を続けてるだけなのかもしれない」


ホオズキは冷静に、だが真剣な目で周囲を見渡す。

「価値を生み出すのは使われ方だ。どれだけ立派な歯車でも、間違った仕組みに組み込まれれば、間違った未来を回し続けるだけ。俺たちはそれを分かっていながら、ただ黙って支え続けてきた…それが今の俺たちの現実だ」アザミは最初は黙っていたが、やがて鋭い瞳に熱を込め、立ち上がるように言う。

「俺はただ、理不尽なものを壊し、弱い者を守りたかった。だが今の俺たち自身が、理不尽な仕組みの一部になってる。レイトキたちが俺たちの作った枠を打ち砕き、自分たちの道を進もうとしてるのを見て…俺は気づいた。歯車は誰かに動かされるものじゃない。自分自身で回り、自分の道を切り開くものなんだ!」ヘリオトロープは一同の言葉を聞き、瞳に決意を宿してまとめる。

「そうだ。俺たちは歯車担当——だが歯車が止まったり、壊れたりするのを待つ必要はない。俺たち自身が歯車となり、この状況を変えるために動けるんだ! 俺たちの存在意義は、誰かの計画を実行することじゃない。自分たちの信じる未来のために、力を尽くすことだ!」アイビーは最後に静かに言葉を添える。

「だとしたら、選択は一つだ。俺たちはこのまま旧い仕組みに留まるのか、それとも…歯車自身が手を組み、新しい道を創り出すのか」こうして——ただ管理するだけだった歯車担当たちが、自分自身の意味、自分たちの進むべき道を問い直し、今まさに大きな決断の時を迎えたのだ!アザミは勢いよく立ち上がり、拳を震わせ、瞳の奥に燃え盛るような炎を宿して——はっきりと、そして痛切な思いを込めて叫ぶ。

「俺は復讐を果たす!それだけだ、故郷が滅んだ、家族も友達も失った!だから果たさなければならない!ここから先は俺は俺で動く」声は円卓の間に鋭く響き渡り、誰もが息を呑む。棘のように尖った雰囲気の彼から、今まで秘められていた深い悲しみと怒り、そして孤独な決意が溢れ出す。

「故郷が滅んだ…?」ヘリオトロープは思わず問い返す。

「それはいったい…何が?」アザミは唇を噛み締め、目に涙を浮かべながらもそれを見せまいと強く睨みつけるようにして話す。

「俺の生まれた村・地域——クラリトンとの境界にあった場所だ。いつか『融合実験』の対象にされ、ある日突然、一帯ごと消された。家族も、幼馴染も、みんな…俺以外、誰一人残らなかった。それがこの組織の仕業だと知った時から、俺はただ復讐のためだけに生きてきた。上に取り入り、情報を集め、力をつけ…そして今、ようやく時が来た!」オリーブは静かに頷き、深い同情を込めて言う。

「そうだったのか…俺たちは何も知らずにいた。だがアザミ、復讐だけを目的にするのは危険だ。それではお前自身が壊れてしまう」

「構わない!」アザミはきっぱりと拒絶する。

「俺はもう失うものなんて何もない。ただ、奪われたものの代償を、この組織、そして関わった者全員に払わせる! 誰にも止められない。誰の命令も受けない。これから先は完全に俺一人で動く!」ロベリアは心配そうに言う。

「一人では無理だ。敵は強大で、数も多い。私たちが手を組めば…」

「いやだ!」アザミは一歩も譲らず、扉の方へ歩き出す。

「これは俺の問題だ。俺の痛み、俺の怒り、俺の責任。誰にも背負わせない。邪魔するなら、たとえお前たちであっても容赦しない!」ヘリオトロープは立ち上がり、最後に呼びかける。

「アザミ…いつでも戻ってきていい。俺たちはお前の味方だ。一人で全部背負い込まないでくれ!」アザミは扉の前で一瞬立ち止まり、後ろ姿だけを見せながら低く呟く。

「…覚えておく。だが今は、俺の道を行く。さらばだ」そう言うと、彼は扉を勢いよく開け、去っていく——その背中には孤独だが揺るぎない決意が刻まれていた。円卓の間には重い沈黙が残される。誰もがアザミの痛みを理解し、同時に彼が一人で危険な道へ踏み出そうとしていることを心配していた。

「復讐か…」グラジオラスは深くため息をつく。

「それほどまでの想いを抱えていたとは。俺たちは彼のことを何も知らなかったんだな」ホオズキは真剣な表情で言う。

「だが一人で突っ走れば、きっと無理をする。いつか彼が倒れた時、俺たちが支えてやれるように、見守り続けなければならない」ヘリオトロープは固く決意し、扉の方を見つめながら言う。

「ああ。俺たちは俺たちの道を行きつつ、アザミのことも忘れない。いつか彼が俺たちのもとに戻ってきた時、あるいは俺たちが彼を迎えに行く時まで…」こうして——アザミは復讐のために一人で旅立ち、円卓の仲間たちはそれぞれの想いを胸に、ますます複雑で困難な状況の中で、自分たちの進むべき道を探し続けることになった!レイトキは地図を囲みながら、ふと首を傾げ、率直な疑問を口にする。

「なあ、ふっと思ったが大幹部は動くのにその下の幹部は動かないよな」一同は一瞬手を止め、顔を見合わせる。確かにそうだ——ユーカリ、マズミ、リュウゼツランらトップクラスはそれぞれ思惑を持ち、直接姿を見せ、言葉を発し、時に戦い、常に物語の中心に居る。だがそれより下、各地の支部長・部門責任者といった幹部たちは、命令を伝えるか、戦闘に出る以外、自分から動いたり、意見を言ったり、何かを決めたりする様子がほとんどない。マレトキは端末をスクロールしながら分析的に答える。

「そうだ。記録を見ても明らかだ。上層部はそれぞれ独自の権限と行動方針を持ってる。だが中堅幹部クラスは原則《指示待ち》。権限も厳しく制限され、勝手に判断したり方針を変えたりすることを禁じられてる。まるで《回るだけの歯車》って感じだ」

星玲奈は手首の惑星記号を軽く光らせ、情報を重ねる。

「それに理由があるわ。元々『歯車計画』の管理体制——幹部もまた歯車の一部として扱われ、個々の意思や独立性を極力排除するよう設計されてたの。だから上が割れたり、指示が止まった途端、下が完全に凍りついちゃう」久美子は眉をひそめ、納得いかないという表情で言う。

「それじゃあまるでロボットみたいじゃない! 自分で考えて、自分で判断して動くことが許されないなんて…人間らしく生きる権利まで奪ってるようなものだね」シャウトは腕を組み、深く頷く。

「それが組織のやり方だ。上が絶対、命令は絶対。疑問を持つな、逆らうな、自分の意思は捨てろ。長年そうやって教育・調教されてきたから、いざ自由になってもどう動いていいのか分からなくなるんだ」リジェは炎のエネルギーを指先でゆらしながら、静かに核心を突く。

「だけど…それって裏を返せば、今が一番脆いってことじゃない? 上の連中はバラバラ、下は誰も動けない。隙だらけってことだよ」レイトキは全員の意見を聞き、瞳に鋭い光を宿してまとめる。

「ああ。それが今の最大の弱点だ。俺たちがマタラを落とし、ウツボカズラを倒した今、あの組織はもう完全にバランスを崩してる。上は揉めてる、下は止まったまま——つまり、今こそ俺たちが一気に状況を変えられる時なんだ!」マレトキは地図に新たな優先ラインを引きながら続ける。

「それと同時に、これから戦う相手が全部敵じゃない可能性も高まってる。命令が来ないから動けないだけで、本心では納得してない、変えたいと思ってる幹部がきっと居る。そいつらを敵に回すんじゃなく、話を聞いて、俺たちの側に来てもらえる道も探すべきだ」レイトキは頷き、拳を固めて宣言する。

「そうだ! 戦うだけが答えじゃない。俺たちの姿を見せて、俺たちの考えを伝えて、『自分で選んでいいんだ』ってことを知ってもらう。歯車は誰かのために回るんじゃない——自分自身のために、自分の信じる未来のために回るんだ!」こうしてレイトキたちは、敵の仕組みの本質的な弱点を見抜き、単なる制圧作戦から「心を動かし、道を示す」段階へと進もうとしていた——それはきっと、アザミや円卓の幹部たちが居る場所へも届くはずだ!

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