↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/165

EPISODE5.5-7【火蓋を切るもの】

時は流れ——獅子(未)月のある日。

街の一角に、人間と亜人が肩を並べて働く会社があった。出自や種族の違いを超え、共に汗を流し、笑い合い、同じ場所で生きてきた——そんな、ささやかながら大切な拠点だった。だがその平穏は、突然の襲撃によって脆くも崩れ落ちる。何者かが施設に押し入り、警備を制圧、建物そのものを占拠した——乗っ取られたのだ。逃れてきた従業員たちが怯えながら証言する。

「突然、大勢の人たちが……! 話そうとしたら『ここは我らが使う』って、力ずくで追い出されました」

「人間と亜人が一緒にいるなんて——と言われた。それが悪いことなのですか……?」この一報は瞬く間に広まり、人間と亜人の共生を目指す者たちの胸に、冷たい不安が広がっていく。この手口——この思想——背後にいるのは間違いなく衆生解放戦線。

「ついに動き出したか……」クロノレイトは報告書を握りしめ、指先に力が入る。

「最初の一撃が、ここだったのか」星玲奈は瞳を凍らせる。

「共生の場を狙うことで、恐怖を植え付けようとしている。『人間とつるむと危ない』と——」

「そうやって分断し、孤立させ、自分たちの側に引き寄せる」アザミは拳を固める。

「手口があまりにも鮮やかで、あまりにも冷たい……」メーミンは胸を痛めるように呟く。

「あの会社の方々……何も悪くないのに……ただ一緒に生きたかっただけなのに……」クロノレイトは顔を上げ、決意を込めて告げる。

「これが最初の火蓋だ。放っておけば、次々と同じことが起きる。行くぞ——今すぐに。奪われた場所を取り戻し、そして——俺たちの意志を示すんだ!」こうして——獅子月、襲撃事件発生! 火蓋が切られ、事態は一気に動き出す! 物語、避けられぬ対峙——!クロノレイトが先頭に立ち、仲間たちに声をかける。

「行くぞ——!」続いて星玲奈が隣に並び、瞳を強く引き締める。

「うん。絶対に取り戻すわ」そのすぐ後ろには、デューク、カグラ、久美子、マレトキ、シャウト、リジェ——それぞれに覚悟を宿した面持ちで続く。デュークは拳を握りしめて。

「不当な占拠は許さない。正すために行く」カグラは身構えながら。

「話し合う機会があると信じて。だが応じないなら、力で示す」久美子は胸に想いを込めて。

「怯えている人たちを、放っておけない……」マレトキは瞳を鋭くして。

「向こうが仕掛けてきた以上、迎え撃つだけだ」シャウトは声を張り上げるように。

「負けない! みんなの手で、笑顔を守る!」 リジェは冷静に状況を見据えて。

「無闇に突っ込まない。計画的に進めよう。それが結果的に人を守る」8人の足取りは揺るぎなく、奪われた場所へとまっすぐ進んでいく。こうして——クロノレイトたち8人、現場へ! 一歩一歩、決戦の地へと近づいていく! 物語、いよいよ対峙の時——!彼らが辿り着いた先——占拠された建物の前には、既に三人の姿が待ち構えていた。


一人はチェイモン。緊張した面持ちで立ち、クロノレイトたちの到着を見届けるようにじっと佇んでいる。


そしてその両脇には——

雷の鎧を身に纏い、蒼く電光を帯びた鱗が輝く竜人——カンナカムイ。肩幅は広く、鎧の隙間から雷光が時折迸り、周囲の空気をピリピリと震わせている。


もう一人は雪のように白い肌に、清楚な白い和服をまとった女——雪女。髪も衣も真っ白で、その周囲だけ空気がひんやりと冷たく、淡い雪の結晶がゆらりと舞っている。チェイモンが一歩前に出て、告げる。

「来たね……。ここはもう、俺たちの手に入った。引き返してもらう」カンナカムイが低く唸るように声を響かせる。

「人間と亜人が馴れ合う場所など、不要だ。我らが新たな秩序で塗り替える」雪女は冷ややかな瞳で彼らを見据え、指先から細や白い息が零れる。

「これ以上踏み込めば……凍てつかせるわ」一触即発の空気が辺りを包む——。

こうして——チェイモン、カンナカムイ、雪女が立ちはだかる! 雷と氷の守り、最初の関門! 物語、激突の予感——!クロノレイトは一歩も退かず、真正面から問いかける。

「お前たち衆生解放戦線の憎しみの大元は何なんだ? 人間か? それとも亜人か? はたまた亜人間——亜人と人間の混ざり者か?」チェイモンは紫の瞳を鋭く燃やし、即座に応える。

「我らは最初から人間を憎んでいる! 人間こそが愚かなのだ!」声に怒りが込められ、闇色の髪が激しくなびく。

「人間は多くの犠牲を出しながら発展してきた。昔からそうだ——マウスに電極を繋いで実験し、生き物を医療のための道具にし、衣服のためにオオカミや他の生き物の毛皮を剥ぎ取ってきた! そうやって多くの命を踏み台にしてきたくせに——今の人間は何だ? 自分たちに罪はないとでも言うように、傲慢に生きているじゃないか!」その叫びには、長い年月をかけて積もり積もった痛みと憤りが滲んでいる。クロノレイトは拳を握りしめ、真剣な面持ちで受け止める。

「……その痛みは分かる。だが、その過ちを繰り返すのが正しいのか? 憎しみで全てを消し去ることが、本当に答えなのか?」チェイモンは首を振り、強く拒む。

「目を背けているよりはいい! 知らんぷりして笑っている人間たちより、よほど誠実だ!」こうして——チェイモンの怒りの根源が明らかに! 積み重ねられた歴史の痛み! 物語、正義と復讐のはざまで——!雪女がゆっくりと一歩、また一歩とクロノレイトに歩み寄る。周囲の空気が一層冷たく澄み、淡い雪片が彼女の周りをゆったりと旋回する。


そして真っ直ぐに彼の瞳を捉え、透き通るような冷たい声で囁く。


「君だって——本当は憎いんでしょう」


「ストレンジ・プレデターがやったこと……。本来なら普通に暮らせたはずの人たちが、どれほど傷つけられてきたか。それなのに、人間の愚かさをそのまま引き継いだ連中のやり方は何も変わっていない」彼女は言葉を続け、核心を突く。

「データで全てを支配しようとするのだって——大元をたどれば、全部人間が考え出したことなの。制御し、分類し、都合のいいように書き換える……その発想は、昔から何一つ変わっていない」クロノレイトは胸を突かれたように息を詰め、拳を強く握りしめる。

「……それは分かってる。だからといって、同じことを繰り返していいわけじゃない!」雪女は瞳を細め、冷たくもどこか哀しげに告げる。

「同じなのよ。奪う側になっても、根本は何も変わらない……でも、だからこそ——古いものごと、全部消し去るしかないの」こうして——**雪女の囁きが胸に刺さる! 全ての根源は人間の本質にあるのか! 物語、憎しみの連鎖を断ち切る術は——!クロノレイトは二人の想いを受け止め、真っ直ぐな瞳で告げる。

「そうか……。人間の勝手なエゴから、ストレンジの実験体たちを解放するため——動いているのか」声には怒りではなく、痛みと理解が込められている。

「だけどな——もっと分かり合えれば、こんなに争わなくても済むのではないか?」一歩前に踏み出し、闇と氷に包まれた三人に語りかける。

「傷つけられた痛みは、争うことでしか癒せないものじゃない。奪われたものを力で取り返そうとすれば、また新たな痛みが生まれるだけだ。話し合って、歩み寄って、共に変わっていく道だって——きっとあるはずだ」チェイモンは紫の瞳を震わせ、思わず言葉を詰まらせる。

「それは……綺麗事だ。何度も訴えてきた。だけど人間たちは、誰も聞く耳を持たなかった……」雪女は白い息を吐き、瞳をそらす。

「分かり合えるなんて……幻想よ。長い間、そう信じて待っていた。でも何も変わらなかった」クロノレイトは揺るぐことなく応える。

「変わらなかったのは、諦めていたからだ。俺たちが本気で向き合えば——未来は必ず変えられる。俺はそう信じてる」こうして——分かり合う道は存在するのか! 絶望の淵にいる者たちへの呼びかけ! 物語、心の扉が開かれる時——!カンナカムイは蒼い雷光を身に纏いながらも、その声には剣呑さではなく切実な響きが込められていた。

「クロノレイト——退いてくれ、頼む」大きな体を小さくするように肩を落とし、真剣な瞳で彼を見つめる。

「お前を傷つけることはできない。神同士でのタブーに触れることになるからだ」 その言葉に、クロノレイトは眉を上げる。

「神同士……? 俺が?」

「ああ」カンナカムイは頷き、鎧の隙間から雷光が不安げにちりちりと瞬く。

「お前は知らぬのか? 包括として統括へと進化するその身は、もはや単なる人の域を超えている。世界の真理を背負う存在——すなわち神に等しきもの。そなたを傷つければ、それは世界そのものに刃を向けるのと同じ。そうなれば、均衡は崩れ、何もかもが滅びてしまう」彼は一歩も前に進もうとせず、ただ願うように告げる。

「だから頼む——今は引いてくれ。争いたくない。お前も、我らも、傷つけ合うことなど……」クロノレイトはその言葉を胸に刻み込むように聞き、静かに応える。

「……俺が神だなんて、まだ実感はない。だけど、そう言ってくれる君の気持ちは嬉しい。だが引くわけにはいかない。ここにいる人たちの居場所を、未来を、守りたいから」カンナカムイは苦しそうに眉を寄せる。

「そうか……ならば、我らも譲れぬ。どちらも引かぬとなれば——」こうして——神同士の戦いは禁忌! カンナカムイの譲れぬ想い! 物語、破壊への道か、それとも——!雪女は周囲の冷気をそっと和らげ、真っ白な髪をなびかせて、まっすぐにクロノレイトを見つめる。


「レイト……君は、男の中でも美しく気高い魂を持っているわ」


声は氷のように澄んでいながら、どこか温かな響きを帯びている。


「私が男の人に目をつけるなんて——本来なら決してないことなの。それなのに……それほどあなたは重要な存在なのよ」


淡い雪の結晶が二人の間をゆっくりと舞う。


「だからこそ、無事でいてほしい。傷ついてほしくない。そう心から思っている……」クロノレイトはその言葉に驚きつつも、真摯に応える。

「そう言ってもらえて……嬉しい。ありがとう。だけど俺は、大切な人たちを守るために、ここに立ち止まるわけにはいかないんだ。君たちのことも、分かり合いたいと思ってる」雪女は白い頬をわずかに染め、瞳を細める。

「……そう。ならば私の想い、届かなくても構わない。ただ——どうか、その気高さが壊れないように」こうして——雪女の特別な想い! クロノレイトの魂が誰よりも輝いているから! 物語、凍てつく心が少しだけ溶ける瞬間——!チェイモンは紫の瞳を一気に険しくさせ、手のひらから漆黒の稲妻を迸らせる。闇色の雷が空を裂き、クロノレイトへと襲いかかる——!だがその瞬間、カンナカムイが身を躍らせ、蒼く輝く白雷を放った!

「ッ!」二つの雷が激しくぶつかり合い、閃光が辺りを包む——黒い衝撃は白い光によってきっぱりと相殺され、跡形もなく消え去る。チェイモンは驚いて目を見開く。

「カンナカムイ! なぜ止めるの!?」カンナカムイは鎧の雷光を揺らめかせ、低く厳しい声で告げる。

「余計なことをするでない、我らの目的は彼を傷つけることではない。それをすれば全てが崩れる——それが分からぬのか!」チェイモンは拳を握りしめてもどかしそうに叫ぶ。

「だけど! このままでは向こうがどんどん話を進めて、私たちの想いが届かないまま——!」雪女も凍りついたようにその場に立ち、二人の間の緊張に息を飲む。クロノレイトはその光景を目の当たりにし、心の中に複雑な想いが広がる——。こうして——仲間内での亀裂! 黒雷vs白雷、カンナカムイの決断! 物語、守るべきものが揺らぎ始める——!クロノレイトは目の前の光景を捉え、即座に判断を下す。


「仲割れか!? 今のうちだ!」


内側から崩れ始めたその瞬間を逃さず、彼は仲間たちに合図を送り、素早く施設の中へと踏み込んでいく。


「行くぞ! 中の状況を確認する!」


星玲奈たちも続き、一団は扉をくぐって建物の中へと入る。外ではチェイモンとカンナカムイが言い争い、雪女がその間に立ち尽くしている——その隙に、彼らは占拠された内部へと足を踏み入れた。薄暗い廊下には、まだ緊張の気配が残っている。誰もいない……だがどこかに監視の目があるかもしれない。

クロノレイトは声を低く保ちながら告げる。

「慎重に進もう。人質や閉じ込められている人がいないか、確認しながらだ」こうして——内部へ侵入成功! 分断された隙を突いて! 物語、新たな展開が始まる——!施設の奥へ進むにつれ、並ぶ機材、スタジオセット、アナウンスブースの形跡——その全てが明らかになるにつれ、クロノレイトの瞳が確信に輝いた。 彼は周囲を見回し、はっきりと告げる。

「ここ、放送局だ」星玲奈が蒼銀の瞳を大きくする。

「放送局……! つまり——ここから情報を流せるってこと?」

「そうだ」クロノレイトは機材に近づき、電源が生きていることを確かめながら続ける。

「全国に、いや世界中に——何が真実かを伝えることができる場所だ。だから衆生解放戦線はここを占拠した。自分たちの思想を一方的に流し込むために」デュークが拳を固める。

「占拠した目的がわかった。だが、それならなおさら——このまま渡してはならない」クロノレイトは機材の画面を見つめ、決意を込めて言う。

「逆に使うんだ。人間と亜人が共に生きる道があることを、分かり合える世界があることを——俺たちの声で、届ける」こうして——占拠されたのは放送局! その目的と、逆転の一手! 物語、声が届くその時——!施設の奥、どこかの放送ブースの方から——重厚で凛としたドネイターの声が、かすかに響いてくるのが聞こえた。

「……この放送を聴いている全ての者たちへ」声はまだ遠く、だれにもはっきりと届いてはいない——だが既にマイクの前に立ち、言葉を紡ぎ始めているのだ。

「人間と亜人が共に生きることは、理想ではなく歪みである。共存という名のもとに、弱い者たちが踏みつけられている現実——それを正す時が来た」クロノレイトは足を止め、眉をひそめる。

「既に準備を始めてる……! もうすぐ、放送が始まる」星玲奈は瞳を引き締める。

「一方的な言葉が、そのまま広まってしまう……! 急がないと!」ドネイターの声は続いている。

「犠牲は必要だ。古きものを壊さなければ、新しき世界は生まれない……」クロノレイトは拳を握りしめ、走り出す。

「行くぞ! その前に、俺たちが真実を届ける!」こうして——ドネイターの放送が始まろうとしている! 声と声、想いと想いが重なり合う! 物語、放送室での対決——!放送ブースから響いていたドネイターの声が、最後の一節を紡ぐと同時に——すっと途切れた。

「……以上で、私たちの考えを終わる」音声が完全に消え、施設内は静けさに包まれる。放送終了——。クロノレイトたちは足を止め、その瞬間を受け止める。

「終わった……」デュークが低く呟く。

「既に届いてしまったのか、あの言葉が」星玲奈は唇を結ぶ。

「でも、まだ終わりじゃない。彼女の言葉だけが真実じゃないって、私たちが伝える番だ」クロノレイトは頷き、真っ直ぐに放送ブースの扉を見据える。

「そうだ。俺たちの声を届ける。共存の道があること、分かり合える世界があること——今度は俺たちが話すんだ」一同は扉へと歩を進める。まだ間に合う。周波数は生きている。こうして—、一方的な放送が終了! だが戦いはこれから! 物語、真実の声を届ける時——!放送ブースに駆け込んだ一同が目にしたのは、絶望的な光景だった——。

「っ! 電源が……」スイッチを入れようとしても、機材は一斉に沈黙したまま。全ての電源が落とされていた。しかも——

「ただ電源を切っただけじゃない……」デュークが内部を確かめ、声を震わせる。

「中枢そのものが破壊されている。基盤が焼かれ、回路が断ち切られている。もう、どうやっても放送はできない……施設全体が、完全に沈黙の箱と化していた。星玲奈は手を機材にかけたまま、言葉を失う。

「そんな……最後の最後に、全部を無駄にするなんて……」

「届ける手段そのものを奪うなんて……」久美子が肩を落とす

「誰にも話させないようにするために……」クロノレイトは拳を強く握りしめ、沈むことなく前を向く。

「だが、俺たちの声が届かなくても——真実は一つだ。人々が自分の目で見て、心で感じて、答えを出す時が来る。手段がなくなった今、俺たち自身が証明するしかない!」こうして——放送の道は完全に閉ざされた! だが戦い方は声だけじゃない! 物語、行動で示す時——!背後から、凛とした声が響き渡る。

「考えていることは分かってるよ」

振り返ると、ドネイターが静かに佇んでいた。その瞳には、迷いのない決意が宿っている。

「私たちの思想を伝えた後に、共存の道があることを伝えようとしていた——そういう腹積もりだったのでしょう。だがね——」一歩踏み出し、はっきりと言い切る。

「それを許すほど、私は愚かではない」冷ややかな空気が流れる中、彼女は続ける。

「二つの声が並んだら、人々は混乱するだけ。『どちらも同じ』と思うだけ。それでは、長い間苦しんできた者たちの痛みが薄れてしまう。正しい道を選ぶということは、時に他の可能性を絶つ覚悟が必要なの」クロノレイトは譲らず、真正面から向き合う。

「だからって、一方の声だけを届け、もう一方を封じるのが正しいのか? 選ぶのはあなたじゃない。聞く人たち自身だ!」ドネイターは瞳を鋭く輝かせる。

「選ぶ時間があるほど、世界は悠長ではない。もう——決断の時は迫っているのだから」こうして——ドネイターの真意! 封じられた声、迫る決断の時! 物語、対峙は避けられない——!外の景色が一変していく——。


かつて人間と共に笑い合い、肩を並べて働いていた亜人たちが、次々とその場を去り始めた。


「一緒にいても、また利用されるだけなのかもしれない……」

「昔からそうだった。何も変わっていなかったんだ……」


長年積もった不信と絶望が、一気に噴き出すように——彼らは共存の地を後にした。


そしてその中の一部の者たちは、胸の奥に眠らせていた記憶を鮮明に思い出す。


「人間は……いつも誰かを犠牲にして生きてきた」


その想いは次第に憎しみへと変わり、彼らは手近にいた人間たちに向かって歩み出す。


「お前たちも、いつか俺たちを踏み台にするんだろう?」

「だったら先に——」


手が出る。怒りが牙となり、爪となり——共存を誓った隣人たちが、突然の刃に倒れていく。悲鳴と怒号が街に響き渡り、かつての絆は無残にも引き裂かれていく。


施設の中からその光景を目の当たりにし、クロノレイトは胸を締め付けられるように立ち尽くす。


「そんな……! 分かり合えるって、信じてたのに……!」


星玲奈は蒼白くなり、手で口を押さえる。

「憎しみが憎しみを生んでる……。誰も悪くないのに、誰もが傷つけ合ってる……」ドネイターはその惨状を静かに見つめ、厳しい声で告げる。

「見なさい。これが現実よ。話し合いだけでは解決できない痛みというものがある。放置すれば、こうして自壊していくだけなのだ」クロノレイトは首を振り、涙を拭いて前を向く。

「違う……! これが答えじゃない! 誰かが止めなきゃ! 俺たちが止めるんだ!」こうして——共存の絆が壊れ、復讐の連鎖が始まる! 街は混乱に包まれ、事態は最悪の方向へ! 物語、今こそ真の力が試される——!ドネイターは一歩、星玲奈の方へと歩み寄り、まるで心の奥底を見透かすように静かに語りかける。


「星玲奈——君も本当はそう思っているんでしょう」


声は柔らかく、だが逃れられぬように響く。


「君は元々——歯車実験を受けて生まれた存在。人間が勝手な役割を押し付けさえしなければ、君が苦しむことも、誰も傷つくこともなかった。クラリトンの侵略だって、今の争いだって——全部、人間が引き金を引いたんだって、心のどこかでずっと思っているでしょう」


星玲奈の体が小さく震える。言葉にできなかった想いが、胸の奥から湧き上がってくる。

「隠さなくていい。それが真実なのだから」ドネイターは手を差し伸べるように告げる。

「さあ、解放しなさい。人間の作った檻から、自分自身を。そして本来あるべき世界へ——」

星玲奈は瞳を潤ませながらも、必死に自分を保とうとする。

「……そうかもしれない。だけど! それでも、その痛みを誰かにぶつけることが、本当の解放なの? 私は……そうは思わない」クロノレイトが彼女の手を強く握りしめる。

「星玲奈……」

「奪い返すことだけが答えじゃない」星玲奈は涙を拭い、瞳を真っ直ぐに輝かせる。

「私は誰かを憎むために生まれてきたんじゃない。分かり合える世界を創るために——この手で守りたい」こうして——心の奥に秘めた想いが暴かれる! 星玲奈の選ぶ道は! 物語、試される信念——!ドネイターは冷ややかながらも重い言葉を紡ぐ。

「世界を守るためなら、犠牲はつきもの。ならば——何を滅ぼすべきか、分かるはずよ」その瞬間——星玲奈の全身から、抑えきれないように黒いオーラが湧き上がり、噴き出した。

「っ……!」漆黒の気息が周囲を曇らせ、彼女の蒼銀の瞳がかすかに濁る。心の奥底に封じていたはずの痛み、怒り、絶望——それらが一気に表に出ようとしている。

「星玲奈!」クロノレイトは手を伸ばし、彼女の肩を掴む。

「負けないで! それは君の本当の気持ちじゃない!」星玲奈は歯を食いしばり、黒いオーラを抑え込もうと必死に耐える。

「分かってる……。分かってるの……。だけど……」

「人間が全ての元凶だと思えば、憎しみは当然のこと」ドネイターはさらに追い討ちをかける。

「その重圧から逃れるには、答えは一つだけ——」

黒いオーラはますます勢いを増し、星玲奈の意思を飲み込もうとしている。こうして——星玲奈の心が闇に揺れる! 黒きオーラ、忍び寄る絶望! 物語、心の戦いが始まる——!黒いオーラが渦巻き、星玲奈の全身をゆっくりと包み込んでいく——。

「っ……レイト……」伸ばしかけた手が力なく垂れ、瞳から光が消えていく。闇が彼女の心を少しずつ飲み込み、その声は掠れ、冷たく沈んでいく。

「人間……それに与する存在……そうだ、あってはならなかったんだ……」

囁くような言葉が、闇の中から零れ落ちる。

「共存も、手を繋ぐことも……全部、幻想だった。最初から、存在してはいけなかったものたちなんだ……」黒い気はますます濃くなり、彼女の輪郭さえも曇らせていく。

「星玲奈! 目を覚まして!」クロノレイトは手を伸ばし、彼女に届かせようと叫ぶ。

「それは違う! 君が教えてくれたじゃないか——分かり合えるって!」星玲奈はゆっくりと首を振り、闇の向こうから冷たい視線を向ける。

「もう……何も聞こえないの……。消えてしまえば、痛みも争いも、全部なくなる……」こうして——星玲奈、闇に飲まれる! 心が凍り、願いが歪む時! 物語、最も大切な人が遠くに去る——!ドネイターはクロノレイトに向き直り、揺るぎない口調で核心を突く。


「君も本当は分かっているはず。ただ、心の奥底に封じ込めているだけなのよ」


一歩、彼に近づき、瞳を真っ直ぐに射抜くように告げる。


「人間が何をしてきたか、人間に追随する者たちが何を繰り返してきたか——アカシックレコードを持つその身なら、全部知っているんでしょう? 歴史の闇、隠された犠牲、繰り返される過ち……その全てが君の中に刻まれているはずだ」クロノレイトは胸を突かれたように息を詰め、拳を握りしめる。

「……見てきた。数えきれない痛み、悲しみ、裏切り……全部、見てきた。だけど——」

「だけど何?」ドネイターは続ける。「それでも手を繋げると? 過ちは自分たちだけの力で正せると? それはただの逃避よ。真実から目を背けているだけの——幻想だ」クロノレイトは首を振り、強く拒む。

「知っているからこそ、俺は言う! 同じ道を選んではならない! 痛みを知っている者が、新たな痛みを生む側になってはいけないんだ!」こうして——アカシックレコードが示す真実! 歴史の重みと、それでも選ぶ道! 物語、記憶が試される時——!闇に包まれた星玲奈は、ゆっくりとクロノレイトから離れ、ドネイターのもとへと歩み寄る。

「星玲奈……!」手を伸ばすクロノレイトの指先は、空しく届かない。星玲奈はもう彼の方を見ることもなく、ドネイターの隣に佇む。ドネイターはその姿を受け入れ、静かに告げる。

「さあ、行こう。新しい世界へ——」

二人は並んで歩き出し、そのまま施設の奥へと消えていく。闇色のオーラを纏った星玲奈の背中は、あまりにも遠く、見慣れた温かさはすっかり失われていた。

「星玲奈——! 待ってくれ!」叫んでも、声は届かない。扉が閉まり、彼女たちの姿は完全に見えなくなった。クロノレイトはその場に立ち尽くし、拳を握りしめる。

「奪われた……。俺の大切な人が、連れて行かれた……」だがすぐに、心の中の二つの歯車がきりりと音を立てる。リベレスが託した解放の想い、そして自分自身の誓い——。

「だけど、絶対に諦めない。必ず取り戻す。星玲奈が本当の自分に戻るその時まで——俺は決して諦めない!」

こうして——星玲奈、ドネイターと共に去る! 奪われた絆、取り戻すその日まで! 物語、旅立ちの決意——!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。