第二十六章⑤
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干し肉が炉に入ると、黒い砂の炎が一気にピンク色に変わった。
そして、列車は「プッシュウウウウウウウ!」という、究極に間の抜けた汽笛を鳴らし始めた。
列車は、『愛の干し肉』の力で暴走し、本来の目的(帰宅への執着)を忘れ、『干し肉を追い求める旅』を始めてしまった。
アストラル・トレインは、「干し肉!もっと干し肉を!」という幻聴を撒き散らしながら、詠美とは逆の方向へ、猛スピードで走り去っていった。
詠美は、自分の『愛の契約』の証である干し肉を奪われ、愕然とした。
「き、騎士……!私の『愛の誓い』の干し肉を、『時代錯誤の蒸気機関車』にくれてやっただと!?これは、『愛の契約の破棄』という名の『究極の裏切り』か!」
ライエルは、手の甲の噛み跡を揉みながら、冷静に答えた。
「詠美。あれは『究極の献身』だ。お前の『干し肉への執着』が、皆を救った。そして、お前は無駄な魔力を使わずに済んだ」
「くっ……!貴様は、私の『究極の愛の裏切り』で、私に『究極の愛の献身』を学べというのか!奥が深すぎるぞ、騎士!」
詠美の『愛の病』は、ライエルの『現実的な問題解決』を『究極の愛の哲学』と解釈することで、ますます複雑化していくのだった。
「さあ、急ぐぞ。干し肉の匂いが、他の魔物を呼ぶ前に」
ライエルは、遠ざかる間の抜けた汽笛を聞きながら、再び砂漠を歩き始めた。




