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第二十五章②
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数時間後、灼熱の太陽の下、詠美は完全に熱中症の初期症状を起こしていた。
意識が朦朧とし、幻覚が見え始める。
「うう……騎士……これが、『愛の渇き』……!」
ライエルが心配そうに詠美に近づき、水筒を差し出した。
「詠美、水を飲め。もう我慢する段階ではない」
そのライエルの姿が、詠美の目には『究極の愛の幻覚』となって映った。
「お、おおお……!騎士……!貴様は、『水差しを持つ天使』に……ッ!私に『究極の愛の清涼剤』を与えようとしている……!」
詠美は、水筒ではなく、ライエルの手の甲に思い切り噛み付いた。
「うぐっ!」
ライエルは思わず声を上げた。
「フン!貴様の『愛の痛み』こそ、『究極の清涼剤』!これで、『愛の渇き』は満たされたぞ!」
ライエルは、噛み付かれた手の甲を抑えながら、怒鳴った。
「満たされるか!それはただの脱水症状だ!ミリー!」
ミリーは、困ったように笑いながら、詠美に近づいた。
「やれやれ。詠美の『不治の病』、砂漠でさらに悪化したわね。『愛の幻覚』だなんて。ゼル、捕まえて!」




