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第二十一章③
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詠美の叫びが収まると、辺り一帯は、嵐の後の静けさに包まれた。
黒い鎖は消え去り、カフェのテーブルと椅子は、粉々になっていたが、幸いにも町の人々に怪我はなかった。
町娘は、恐怖でその場に座り込んでいたが、ライエルが持っていた花束を見て、何かを悟ったように静かに立ち去った。
ライエルは、静かに花束を地面に置き、詠美に向き直った。
「詠美。魔力は収まったか」
詠美は、全身を震わせながら、ライエルを見つめていた。
その瞳には、もはや「王の威厳」も「嫉妬の怒り」もない。
ただ、『羞恥心』と『ライエルへの抑えきれない愛』だけが満ちていた。
「き、騎士……!貴様、なぜ……!なぜ、『あんな痛々しい言葉』を……!貴様は、私に『究極の自己否定』という名の『愛の告白』を……!」
詠美は、ライエルの「俺のロードだ!」という言葉を、「世界一厄介だが、俺の特別だ」という究極の愛情表現だと解釈したのだ。




