第十九章③
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道中、小さなトカゲ型の魔物が数匹、彼らの前に現れた。
「フン!トカゲの『雑魚の群れ』か!騎士よ、貴様が『愛の鞭』を使わずとも、この王は、『愛の羞恥心ブースト』で倒して見せよう!」
詠美は、木の枝の剣を構えた。
しかし、周囲には、恥ずかしい詠唱をさせるような『愛の試練』も『究極の拒絶』もない。
「大っ嫌い!……なんて、もう言えないし……っ!」
詠美は、『騎士に愛されている』と確信した今、『大嫌い』と叫ぶことが、嘘になってしまい、羞恥心が足りないことに気づいた。魔力が、全く発動しない。
「くそっ……!なぜだ!『愛の力』よ!」
ライエルは、冷静にトカゲの魔物を一刀両断しながら、詠美に向かって言った。
「詠美。お前の魔力の発動条件は、『素の感情の具現化』だ。無理に『王の設定』で感情を作り出すな。ただ、『目の前のトカゲが、お前の大事な干し肉を食い尽くす』とでも思って、素直に怒れ」
詠美は、その言葉に、再び『究極の愛の試練』を感じた。
(くっ……!騎士め!私に『食い意地が張った女』という『恥ずかしい素の姿』を晒すことで、『ありのままの私を愛する』という試練を仕掛けてきたのか!)
詠美の顔が、「食い意地を指摘された羞恥心」で真っ赤になった。
「う、うるさい!わ、私の『大事な干し肉』を食うなんて、死んでお詫びなさい!」
詠美が、『食い意地の羞恥』という、極めて日常的な感情を露わにした瞬間。
ドォォン!
昨日よりも小ぶりだが、確かな金色の光の鎖が噴き出し、残りのトカゲを『存在の否定』で消し去った。
ライエルは剣を納め、無言で前に進み始めた。
彼の目には、「よし、トカゲごときに、そこまで拗れた感情を使わせなくて済んだ」という安堵が浮かんでいた。




