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第十九章②
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ポチの隣では、ゼルガディスが、宝箱から手に入れた干し肉を、包帯越しに「匂いを嗅ぐ」という行為を繰り返していた。
「ハァ……!この『七十歳の干し肉』の香り!これこそ、師の『七十年の孤独』が凝縮された、『究極の味』に違いない!」
ゼルガディスは、干し肉を食べる前に『命名権』を確定させる作業に入っていた。
「王よ!干し肉の真名は、『ナイトメア・オブ・ポッチー・ラヴ・干し肉の美学・七十歳の孤独・最終確定版(仮)』で異論はございませんか!」
「長い!『干し肉・終焉』でいい!」
詠美が即座に却下する。
レオンハルトは、ゼルガディスのロープの結び目を解きながら、優雅にツッコミを入れた。
「ゼルガディス。干し肉に『七十歳』や『孤独』のフレーバーを求めるのは、『美学』から遠すぎるよ。騎士くんは、ただ『おいしい干し肉』が欲しかっただけだ」
「何を言うか!騎士の『冷酷な愛』を理解できぬ貴様こそ、『孤独な愛の美学』から最も遠い存在だ!」
ゼルガディスは、干し肉を掲げて反論する。
ミリーは、ゼルガディスの背中に乗りながら、クッキーをかじった。
「そうよ、ゼル。愛ってのは、複雑怪奇なものなの。だから、『七十歳の知恵』でも解けないのよ」




