第二章③
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「フン……!いいか、騎士!私の真名を気軽に呼ぶな。私は『終焉の王』だ。この街で、私にふさわしい『王城』と、『真の衣』を探すぞ!貴様は黙って従え!」
ライエルはため息一つでその命令を無視し、宿屋を探して歩き出した。
詠美は、ライエルの後ろを歩きながら、生成りのワンピース姿で周囲の店を睨みつける。
(くっ……こんな『辺境の野蛮都市』に、真の王城などあるわけがない。どうすれば、故郷の魔王城に辿り着けるのだ!)
その時、詠美の視界に、妙に薄汚れた老人が目に入った。
その老人は、怪しげなガラクタを広げた露店で、ひときわ年季の入った焦げた紙の切れ端を、まるで秘宝のように並べていた。
詠美の『王の直感(中二病の悪癖)』が、それに強く反応した。
ライエルが宿の主人と交渉するため一瞬目を離した隙に、詠美は素早くその露店に駆け寄った。
「おい、そこの老人。その焦げた紙切れは何だ?もしや、『古の王族が隠した秘匿の書物』か?」
老人はニヤリと歯を見せて笑った。
「へへ……お嬢ちゃん、お目が高いね。これは、『魔王城への秘匿の地図』さ。炎の加護があるため、半分焦げちまってるが、逆に魔王の力が宿っている証拠だ。特別に、銅貨三枚で譲ってやろう」
「な……ッ!魔王城への地図!?」
詠美は興奮で顔を赤らめた。
(間違いない!やはりこの世界は私を求めている!この地図さえあれば、あの無能な騎士の助けなど不要だ!)
詠美は、生成りのワンピースのポケットに入っていた、ライエルが持たせたばかりの緊急用の銅貨三枚を、迷いなく老人に差し出した。
「フン!感謝するがよい。この地図は、このロードが預かろう!」
老人は満面の笑みで銅貨を受け取ると、詠美の頭を「いい子だ」と言わんばかりに撫でた。
「ありがとよ、お嬢ちゃん。魔王城、頑張ってな!」
詠美は地図を胸に抱き、ふたたびライエルの元へ戻った。
ライエルは宿屋の主人との交渉を終えたばかりで、彼女の行動には気づいていなかった。
「フン。手間取らせおって、騎士よ。さあ、行くぞ。『王の御座』へ向かう道は、既にこのロードの手に落ちた!」
ライエルは警戒する間もなく、詠美の勢いに押される形で、フィルドの街の裏門から強引に外へ連れ出された。
詠美の顔には、「この地図さえあれば、もう冷徹な騎士の地図など不要だ」という確信と、「最高の休息マーク」への期待が満ち溢れていた。




