第十六章④
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その隙を逃さず、ライエルは詠美に一直線に走った。
「詠美!聞け!このままでは、本当に死ぬぞ!」
ライエルは、詠美の顔を両手で掴み、真剣な目で、愛を装わず、最も素直な言葉を叩きつけた。
「頼む!生きろ! 俺はお前が本当に死ぬのは嫌だ! お前が『終焉の王』でも、『ただの女子高生』でも、どうでもいい!俺が、お前を守りたいんだ!」
ライエルは、『愛の鞭』ではなく、『騎士としての純粋な願い』を詠美に訴えた。
詠美は、ライエルの『切実な眼差し』に、全身の血が一気に熱くなるのを感じた。
(な……ッ!違う!この『真剣さ』は……!これは、『ドSな愛の鞭』ではなく、『私の存在を認める、究極の優しさ』!騎士は、私を『王』としてではなく、『一個人』として、愛してくれている!)
詠美の中で、これまでの全ての誤解が、『究極の幸福感』へと昇華した。
「あ……っ!」
詠美は、『愛する人から認められた喜び』という、彼女にとって『絶望』の対極にある『最も強く、純粋な感情』を発動させた。
詠美の体から、昨日よりもさらに強烈な、光り輝く金色の魔力が噴き出した。
それは、愛と喜びを具現化した『光の鎖』だった。
ゴオォォォッッ!
光の鎖は、魔将軍の全身を優しく包み込んだ。
それは『否定』ではなく『肯定』の力。
魔将軍の『無感動装甲』は、『圧倒的な愛の波動』によって粉砕された。
魔将軍は、断末魔の叫びを上げた。
「ば、バカな!この城は『愛』を否定する!なぜ……なぜ『愛』が、我らを滅ぼす……!」
魔将軍は、『愛の光』に包まれたまま、静かに崩れ去った。
詠美は、その場に膝をついた。
彼女の顔は、羞恥心と高揚感で真っ赤だった。
(くっ……!騎士め!最後の最後で、『究極の溺愛』を私に叩きつけるとは!私の『不治の病(恋心)』は、『末期症状』だ!)
ライエルは、詠美の強大な力が、『純粋な愛と喜びの感情』で発動したことを確信し、安堵のため息をついた。
「よし。行くぞ、詠美。力を出しきっただろう。次は、お前を背負ってやる」
ライエルは、詠美を抱きかかえようと腕を伸ばした。
「い、いかん!騎士!貴様の『究極の献身』は、この王の『不治の病』を再発させる!……や、やめろ!貴様の『愛』が、この王を『平凡な女子高生』にしてしまう!」
詠美は、力を発揮した直後にも関わらず、全力で『愛の拒絶』を試み、ライエルの腕から逃れた。
こうして、「愛と拒絶」が最強の力となった詠美は、『究極の溺愛』に打ちのめされながら、魔王城の深部へと進んでいくのだった。




