第十五章②
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ライエルは、一歩ずつ詠美に近づき、低い、しかし全力を込めた声で、彼女の最も恐れる言葉を放った。
「詠美。もうやめろ」
「な……」
詠美は、一瞬で顔色を失った。
「俺は、お前との旅に疲れた。お前の『終焉の王』という設定にも、もう付き合いきれない。お前はただの『面倒で、手が焼ける、子供のわがまま』だ。俺は、これ以上、お前を守る義務はない」
ライエルは、あえて冷酷な言葉を選び、詠美の『王の存在』と『騎士からの承認』という、彼女の根幹を否定した。
詠美の顔から、血の気が引いた。
彼女は、ライエルの言葉が『騎士の愛の罠』ではない、『本気の拒絶』であると、初めて悟った。
(う、嘘だ……!騎士が……私の『王の存在』を否定した……!私の『不治の病』を、『わがまま』だと……!)
詠美の瞳に、みるみるうちに涙が溜まった。『終焉の王』の仮面は、完全に剥がれ落ちた。
そこにいるのは、ライエルに拒絶された、ただの女子高生、黒崎詠美だった。
「なんで……っ、なんでそんなこと言うの……!私……私だって、本当は……っ」
詠美は、『大嫌い』と叫んだ時とは比べ物にならない、純粋な『絶望』と『自己否定』の感情に支配された。
その時、ロープに繋がれたゼルガディスが、狂喜の声を上げた。
「これだ!王よ!それこそが『真の孤独』!『愛する者からの完全な拒絶』!師匠が結界に込めた『究極の絶望』と、詠美の『素の魂の否定』が、今、完全に共鳴した!」




