第十四章③
3
その時、ロープに繋がれたゼルガディスが、再び立ち上がり、激しい嫉妬を露わにした。
「王よ!お待ちください!その結界は、『愛の告白』のような『純粋な激情』では破れません!必要なのは『破滅』と『絶望』です!」
ゼルガディスは、顔の包帯を震わせながら、一人の男として、ライエルへの嫉妬を爆発させた。
「王よ!貴様の『不治の病』は、騎士への『片思い』などではない!それは、『承認されない孤独』だ!私のように、『師匠のロリ姿への叶わぬ恋心』によって生まれた『真の孤独』でなければ、この結界は破れません!」
ゼルガディスは、『師匠への一途な恋心』を厨二病設定に昇華させ、詠美の『王の威厳』と『恋の病』を同時に否定した。
詠美は、ゼルガディスの言葉に、激しい怒りを覚えた。
「な……ッ!ゼルガディス!貴様、この『王の純粋な恋心』を、『嫉妬の邪な魔力』で汚すか!」
詠美が怒りで全身を震わせた、その瞬間。
ミリーが、静かにクッキーを地面に置いた。
彼女は、初めて真剣な表情を浮かべた。
「ゼル、その通りよ」
ミリーの突然の言葉に、全員が動きを止めた。
「この結界は、『最強の白魔道士』である私自身が、『誰も私の本当の力と孤独を理解してくれない』という、『究極の自己否定』と『純粋な絶望』を込めて作ったものよ」
ミリーは、ライエルを見つめた。
「騎士さん。この結界は、『愛の波動』では壊れない。『絶望と否定』、そして『それを乗り越える確固たる意思』を持つ、『最も異質な魂の叫び』でしか、破れないわ」
ミリーの言葉は、詠美の力の発動条件を、さらに複雑なものにした。
詠美の力は『素の感情の具現化』だが、結界を破るには『純粋な絶望と否定の感情』が必要なのだ。
ライエルは、静かに剣の柄を握りしめた。
彼は、詠美の力が、『彼女の最も嫌いな感情』、つまり『愛する人を失う絶望』から発動すると悟った。
(詠美に、『究極の絶望』を経験させる必要がある。だが、それは……)
ライエルは、「詠美が愛すべきポンコツである」という事実と、「彼女を絶望させて力を引き出す」という、騎士としての倫理との間で、激しく葛藤した。
詠美は、ライエルの顔に浮かんだ『苦渋の決断』を、またしても盛大に誤解した。
(くっ……!騎士め!私の『絶望的なまでの愛の拒絶』を待っているのか!この男、私の『王の威厳』と『恋心』を、最後まで弄ぶつもりだ!)
魔王城の入り口で、「愛」と「絶望」、そして「厨二病」が絡み合った、史上最大の誤解が生まれようとしていた。




