第二章 辺境都市フィルドと王の聖衣
1
石畳の道をしばらく進むと、開けた大地に、土壁と木造の建物が密集した『辺境都市フィルド』が見えてきた。
詠美は、土壁に囲まれた町の光景に、がっかりした表情を隠せない。
「な……ッ!これが王城か!?あまりにもみすぼらしいではないか、騎士よ!」
「ふざけたことを言うな。ここは辺境都市の城壁だ。王城などあるわけがない」
ライエルは冷静に制し、城門に近づいた。
詠美は人々の視線がセーラー服の自分に集中しているのを感じ、居心地の悪さに耐えられなかった。
「フン!貴様らはこの『漆黒の戦闘服』の美しさに平伏しているのか!さあ、貴様も胸を張って歩け、騎士よ!」
「貴様こそ、その目立つ格好で無駄な騒ぎを起こすな」
ライエルは衛兵に軽く会釈し、慣れた様子で街に入った。衛兵たちは彼の顔見知りのようで、特に怪しまれることもなかった。
街の中は、土臭い匂いと、活気ある人々の声で満ちていた。詠美は周囲の全てが珍しく、同時に不満だった。
「チッ……なんて野蛮な街だ。空気が淀んでいるではないか!Wi-Fiの電波も届かん!このロードの力を、一体どうやってインターネットに公開すればいいというのだ!」
ライエルは無視し、一軒の看板のない建物の前で足を止めた。
「衛兵団詰所だ。ここで任務の報告をする。お前はここで待て」
「待てだと!?このロードに『待て』と命じるつもりか!無礼にも程があるぞ、騎士!」
「騒ぐな。ここが一番安全だ。変なことを口走って捕まっても知らんぞ」
ライエルは詰所の扉を開けて中へ入っていった。
詠美は扉の前で腕を組み、不機嫌そうに頬を膨らませた。
(チッ……あの冷徹な騎士め。王たる私を差し置いて、先に『王城(衛兵詰所)』に入るとは。まあ良い。まずはこの街で『王の聖衣』と『王の御座』を手に入れる!)
彼女は周囲を見渡し、店の看板に書いてある文字が、日本語でも英語でもないことに改めて絶望した。
「くっ、文字が読めん!翻訳アプリが使えぬとは、なんという試練!」
彼女は仕方なく、近くにいた八百屋風のおばちゃんを指さし、麻の服のポケットにあった銅貨を差し出した。
「おい、そこの老婆!その赤い玉をよこせ!」
おばちゃんは目を丸くし、詠美の奇妙なセーラー服を上から下まで眺めた。
「へえ、お嬢ちゃん、初めて見る顔だね。そんな奇っ怪な格好して。これかい?一個なら銅貨一枚でいいよ」
「フン。余に献上できることを感謝するがよい。さあ、二の玉も持ってまいれ!」
詠美はリンゴをかじりつき、その野蛮な果実のジューシーさに、思わず目を見開いた。
(……う、美味い!日本のリンゴより甘い!チクショウ、この世界、食べ物だけは侮れん!)




