第十二章③
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「な……ッ!な、な、な、ななななななななななななな何を『究極の告白』を、この戦闘中に!」
詠美の顔は、一瞬で最高潮の赤さに染まった。
彼女の頭の中で、『厨二病の王』と『恋する女子高生』の二つの人格が、激しく衝突する。
(バカ!ライエルのバカ!なぜこのタイミングで!私の『不治の病』を試しているのか!恥ずかしい!恥ずかしすぎる!)
詠美は、ポチの耳に顔を埋め、羞恥心と怒りのあまり、全身を震わせた。
「うるさい!黙れ、騎士!貴様なんか、本当に大っ嫌いよ!私の『大事な干し肉』を食い尽くす『胃袋の番人』のくせに!」
詠美は、『恋心』と『羞恥』が融合した、極めて純度の高い感情を、ライエルに叩きつけた。
その瞬間、漆黒の鎖が、詠美の体から噴き出した。
ザンッ!
鎖は、ライエルを囲んでいたミノタウロス三体を一瞬で締め上げ、岩の装甲ごと『存在を否定』し、彼らを塵に変えた。
戦闘は、一瞬で終わった。
ライエルは、静かに剣を納め、膝をついた。左腕の傷から再び血が滲んでいたが、彼は笑顔だった。
「やはりな、詠美。お前の力は、お前が『素直に怒った時』にしか発動しない」
詠美は、顔を上げることができないまま、強がりを叫んだ。
「フン!何を勘違いしている、騎士!これは『王が、下僕の愛情表現に呆れ果てた際の、冷酷な拒絶の魔術』だ!貴様が『大嫌い』だから、力が発動したのだ!」
ライエルは、その嘘を優しく否定した。
「そうか。だが、俺は知っているぞ。お前が『大嫌い』と叫んだとき、声が『泣きそうに震えていた』ことを」
詠美は、ぐっと言葉に詰まった。
レオンハルトは、ゼルガディスと共に、この一連の「愛と力の開花劇」に、静かに拍手を送っていた。
「ハッハッハ!素晴らしい!騎士くんの『精神攻撃』と『ロード』の『羞恥心爆発』が、最強の魔術を生んだ!やはり、この旅は『芸術』だね!」
こうしてライエルは、詠美の能力の「発動条件」を確信した。
それは、彼女の厨二病の鎧を剥がし、彼女の素の心を開かせること。
そして、その鎧を剥がせるのは、彼女が「不治の病」と呼ぶ感情、つまりライエルへの恋心だけだった。
魔王城は近い。
そして、ライエルには、詠美の力を完全に開花させるための、『最後の情熱的な告白』という重要なミッションが残されていた。




