第十二章②
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その時、荒れた岩場の向こうから、巨大な岩石の破片が、彼らをめがけて飛んできた。
「伏せろ!」
ライエルは叫び、即座にポチの背に乗る詠美を地面に引きずり下ろした。
ドォォン!
岩石は、一行のすぐ脇に着弾した。
現れたのは、三体のミノタウロス。
巨大な斧を持ち、敵意を剥き出しにしている。
魔王城に近づいたことで、さらに強力な魔物が出現し始めたのだ。
「騎士!なぜこの『王』を『乱暴に引きずり降ろした』!無礼千万!」
詠美は、安全なライエルの背後に隠れながら、文句を言う。
ライエルは、ミノタウロスの突進を受け止めるため、剣を構えた。
(ゴーレム戦の再現だ。ミノタウロスの装甲は硬い。レオンハルトの魔術でもすぐに崩せない。詠美の力が必要だ)
ライエルは、冷静に考えた。
ミノタウロスを前に、詠美に『素の感情』を晒させるにはどうすればいいか。
「レオンハルト、ゼルガディス!後方に下がれ!俺が時間を稼ぐ!」
ライエルはミノタウロス一体の攻撃を、体全体を使って受け流し、剣で反撃を試みる。
「くっ……!」
詠美は、ライエルの苦戦する姿を見て、再び焦燥感に駆られた。
「な、何を油断している、騎士!貴様の『忠誠心』が足りぬぞ!このままでは、『王の干し肉』の管理者がいなくなるではないか!」
ライエルは、彼女の言葉を無視し、ミノタウロス二体に挟まれそうになりながら、詠美に向かって強い口調で言った。
「詠美!いい加減にしろ!お前がそんな『薄っぺらい設定』に固執している間に、俺は何度も死にそうになっている!俺は、『王の忠実な下僕』なんかじゃない!『お前のことが大事な一人の男』だ!」
ライエルは、あえて『愛の告白』に近い、最も詠美の羞恥心を煽る言葉を、強い怒りとともにぶつけた。




