第十二章 恋の病と試される騎士の忍耐
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『古の結界』を越えて数日。
魔王城の山脈は、もはや目前に迫っていた。
一行は、魔王城の周囲に広がる荒涼とした岩場を進んでいた。
詠美は、ポチの背中で、昨日ライエルに『素の感情』を晒してしまった羞恥心と、その結果、絶大な力を発動してしまったという事実に、内心ずっと混乱していた。
その焦りを隠すため、詠美は、さらに「ロリへの愛情」と「ゼルガディスへの命名権譲渡」という、二重の誤った駆け引きを加速させていた。
「フン!ミリー!この荒涼とした大地こそ、『王の孤独』を体現している!貴様の『究極のロリの姿』と、この『モフモフの神獣』の『命名権』を委ねられたゼルガディスの『痛々しい情熱』こそが、私の『不治の病』を癒す『三種の神器』なのだ!」
詠美は、ミリーを抱きしめ、ゼルガディスの『命名権論争の続き』に熱心に耳を傾けた。
「王よ!私もそう思います!このポチの『真名』は、『終焉の孤独』と『騎士への忠誠』を融合させた、『ナイトメア・オブ・メディカル・ハート・ユグドラシル・ラブ』です!」
ゼルガディスは、目を輝かせながら訴える。
「何を!『ラブ』など『低俗』すぎる!通称は『ポッチー』にしろ!」
「な……ッ!王よ!それでは『通称』が『本名』の全てを食ってしまう!それは『厨二病の尊厳』を捨てる行為です!」
ライエルは、二人のやり取りを背中で聞きながら、静かに魔王城の山脈を見上げていた。
彼の左腕の傷は、ミリーの治癒魔法ですでに完治している。
レオンハルトは、いつものように優雅なため息をついた。
「ハァ……騎士くん。君は本当に『聖人』だね。この四重奏のハーモニーに、よく耐えられるものだ」
「慣れた」
ライエルは短く答えた。




