第十一章③
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ライエルは、ゴーレム一体の攻撃を弾き、詠美に目を向けた。
彼の剣さばきは正確だが、多勢に無勢、体力が削られていく。
(このままでは危険だ。詠美の力が必要だ。だが、『終焉の王』ではダメだ)
ライエルは、ゴーレムの攻撃を紙一重でかわし、声を張り上げた。
「詠美!いいか、『終焉の王』は引っ込んでいろ!」
詠美は、ライエルの言葉に、驚きと怒りで顔を歪ませた。
「な……ッ!貴様、王の存在を否定するか!」
「そうだ!否定する!俺が守りたいのは、『終焉の王』ではない!『黒崎詠美』だ!」
ライエルは、ゴーレムに背を向け、真剣な目で詠美を見つめた。
「俺を庇って怪我をしたとき、お前は『誰にも理解されない孤独』なんかじゃなく、『俺が死んだら嫌だ!』と泣きそうになっていた!そのままの感情で力を出せ!」
「くっ……!な、何を『愛の告白』のような……!」
詠美の顔が、恥ずかしさとときめきで真っ赤になった。
彼女の胸の『不治の病』が、激しく疼いた。
(こ、この騎士め!まさか、この場で『私の素の感情』を指摘し、『究極の恋愛の駆け引き』を仕掛けてくるとは!)
詠美は、ライエルの真意を『恋愛の駆け引き』と誤解したが、その指摘は彼女の核を突いていた。
詠美は、恥ずかしさからライエルを睨みつけた。その目には、『素の少女の照れと怒り』が宿っていた。
「う、うるさい!わかったわよ!そんなに『そのままの私』がいいなら……!」
詠美は、木の枝の剣を地面に突き刺し、羞恥心と怒り、そして恋心が混ざり合った、純粋な感情の叫びを上げた。
「バカ! ライエルなんか、大っ嫌い! …でも、死んだらもっと大嫌いだから、私の邪魔しないでよ!」
詠美の感情が頂点に達した瞬間、彼女の体から、昨日以上の漆黒の鎖が吹き出した。
それは、彼女の『拒絶』と『独占欲』が具現化した、真の『終焉の王』の力だった。
鎖は、ゴーレムの体を一瞬で締め上げ、『存在を否定』する。
三体のゴーレムは、まるで砂のように崩れ去り、平原に静寂が戻った。
ライエルは、静かに剣を納め、詠美に向かって歩み始めた。
「……見たか、詠美。その力が、お前の『真の力』だ」
詠美は、ライエルが近づいてくる様子に、再び顔を赤くし、急いで『終焉の王』の仮面を被り直した。
「フン!何を勘違いしている、騎士!これは『王が、忠実な下僕の真意を引き出すための、演技力という名の罠』だ!貴様への『愛の告白』ではない!さあ、行くぞ!『嫉妬の炎』に焼かれている暇はない!」
詠美は、ポチの背中で、ライエルから目を逸らしたまま、大声で叫んだ。
(くっ……!ライエルのバカ!私の『素の感情』に気づくなんて!でも、彼が『そのままの私』を求めてくれた……!この胸の『不治の病』、もう手遅れだ!)
ライエルは、詠美の嘘に気づいていたが、微笑みを浮かべた。
彼の戦略は、完璧に成功したのだ。
「ああ、分かったよ、ロード。先導してくれ」
こうして、「愛の告白(という名の指摘)」により力を開花させた詠美と、その真実を知るライエル、そして残りの愉快な仲間たちは、魔王城へと続く平原を突き進んでいったのだった。




