第十一章 王の力の秘密と騎士の静かな確信
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『古の結界』を越えた一行は、ライエルの公式地図には載っていない、穏やかな山間の道を進んでいた。
道中、詠美はポチの背中に乗りながら、ずっと無言だった。
(くっ……!なぜだ!あの『究極の孤独の魔力』が、再び発動しない!あんなに強大な力だったのに……!)
結界を破った後、詠美は何度も木の枝の剣を構え、厨二病全開の詠唱を試みたが、黒い鎖の魔力は、指一本も現れなかった。
「フン!騎士よ!貴様、私の『力の再封印』を望んでいるのか!この魔力は、貴様の『邪な嫉妬心』に反応して、『自己防衛』に入ったに違いない!」
詠美は、ライエルが自分の力を封じたと、いつものように盛大な勘違いをした。
ライエルは、冷静に答えた。
「俺は何もしていない、詠美。それよりも、昨日、お前がガーディアンを前にして『素の声』で俺を心配し、『純粋な恐怖』を露わにした直後、力が発動したことに、気づいているか?」
詠美の体が、ピクリと震えた。
「な……ッ!何を言うか、騎士!あれは『王が、下僕の危険を察知した際の、緊急の忠誠心確認の儀式』だ!あれこそ『究極の演技力』なのだ!」
「そうか。だが、俺の知る限り、お前が力を発動できたのは、『終焉の王』として振る舞った時ではなく、『黒崎詠美』としての『強い感情』を晒した時だけだ」
ライエルは、剣の柄を握りしめながら、静かに、しかし強い確信を持って言い放った。
(間違いない。詠美の力は、彼女が『黒崎詠美』としての、純粋な感情――喜び、怒り、恐怖、そして俺への思い――を『厨二病の鎧』で隠さずに晒した時にのみ、発動する。彼女の力は、『素の感情の具現化』だ)
ライエルは、この重要な真実を、今の詠美に伝えても、決して信じないことを理解していた。
彼女の厨二病の鎧は、あまりにも厚い。




