第十章⑤
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結界が完全に解除された。
その向こうには、穏やかな山道が続いていた。
ライエルは、左腕の傷を押さえながら、呆然と立ち尽くす詠美に近づいた。
「詠美……貴様のその力は……」
詠美は、金色の輝きが消え去った瞳で、ライエルを振り返った。
そして、自分が『素の感情』を晒してしまったことに気づき、猛烈な恥ずかしさに襲われた。
(くっ……!私としたことが!ライエルを心配するあまり、『王の仮面』を外し、『恋する乙女の感情』を晒してしまった……!そして、魔力まで……!)
恥ずかしさを隠すため、詠美は、いつにも増して尊大な態度を取った。
「フン!何を驚いている、騎士よ!この『終焉の王』の力は、貴様の『忠誠心』が引き出したに過ぎん!この結界は、『王の孤独』を試す、『単なる扉』だったのだ!」
詠美は、木の枝の剣を再び構え、ポチの背中に飛び乗った。
「さあ、行くぞ!『不治の病の王』は、『新たな力』を手に入れた!魔王城への道は開かれたぞ!」
ゼルガディスは、目を輝かせながら、ロープに繋がれたまま叫んだ。
「素晴らしい!王よ!その『孤独の力』こそ、『盟主』の道!この『メディカル・ハート』の名付け親として、私も参りましょう!」
ライエルは、左腕の傷を見つめながら、深いため息をついた。
(詠美は、なぜ自分が能力を開花させたのか、全く理解していない。ただ、彼女が俺を庇ってくれたことに、素直に感謝しておくべきだろう)
こうして、「新たな能力」と「究極の羞恥心」を手に入れた詠美は、『古の結界』を越え、魔王城への最短ルートへと進んでいったのだった。




