第九章③
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ライエルは、ゼルガディスの情報に動揺を見せず、ミリーに確認を求めた。
「ミリー殿。ゼルガディスの言う『古の結界』とは、何のことでしょうか」
ミリーは、ライエルの真剣な問いかけに、小さく頷いた。
「ああ、ゼルは正しいわ。あれは私が五十年前、あまりにも強力な魔術を開発しちゃったから、封印するために山脈の裏側に作った『ただの巨大な蓋』よ。誰も通れないから、地図には載っていないわね」
ゼルガディスは、師匠からの「正しい」という言葉に、歓喜の表情を浮かべた。
「見よ、『偽りの王』!私の情報は、『師の絶対的な承認』を得た!この道こそが、『終焉』への道なのだ!」
詠美は、ゼルガディスの勝ち誇った顔に激しく嫉妬したが、魔王城という目標の前では、厨二病のプライドさえ二の次だった。
「チッ……よかろう!騎士!『公式の偽り』は捨てる!これより、我々は『古の結界』を破り、『終焉の王の御座』へ向かう!」
詠美はポチの背中に飛び乗り、ゼルガディスを指さした。
「ゼルガディス!貴様の『情報』は認めてやる!その褒美として、この『王の神獣』の『命名権の最終決定権』を、貴様に譲渡してやる!貴様の望む『終焉の名前』を付けよ!だが、『癒やし』の要素は必ず含めろ!」
詠美は、『命名権』という最大の権限をゼルガディスに与えることで、ライエルの『嫉妬の炎』を最大化させようと、間違った駆け引きをしたのだった。
ゼルガディスは、命名権と、師匠からの承認、二つの歓喜に打ち震えた。
「な……ッ!『命名権』を……!?王よ!この忠誠、しかと受け止めよう!この『神獣』の名は……『ユグドラシル・ナイトメア・フュージョン・メディカル・ハート・改(仮)!!』」
ライエルは、冷たい目で詠美を見た。
「詠美。命名権を譲ったところで、誰も『ユグ』などと呼ばない。そして、目的地はまたも『魔王城への近道』か」
「うるさい、騎士!これは『運命の導き』だ!」
こうして、一行の旅路は、「命名権」をゼルガディスに譲り、「最強ロリ魔道士の結界」を越えるという、波乱含みの新ルートへと変更されたのだった。
ライエルの持っていた公式地図は、焚き火の炎に照らされ、虚しく輝いていた。




