第九章②
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「フフフ……騎士よ。貴様のその『俗世の地図』は、『偽り』に満ちている」
ゼルガディスは、いつになく真剣な口調で言い放った。
ライエルは、地図を広げたまま、冷徹な視線をゼルガディスに向けた。
「これは王国の公式地図だ。正確性は保証されている」
「公式?チッ、『力なき者が辿る道筋』にすぎん!貴様らが目指す次の街から、魔王城へ至る『最短ルート』は、その地図の空白領域に存在する!」
ゼルガディスは、鎖を引きずりながら、ライエルの地図の、ちょうど巨大な山脈が描かれている部分を指さした。
「この山脈の奥。かつて、『最強の白魔道士』が、自らの力を封印するために築いた『古の結界』が存在する。その結界を抜けた先こそ、『終焉の王の御座(魔王城)』への真の、そして最も安全な近道なのだ!」
ゼルガディスは、その言葉と共に、ちらりとミリーを見た。
彼の言葉は、「師匠の知る秘密の道」を知っているとアピールするための、最後の賭けだった。
詠美は、興奮でポチの背中から飛び降りた。
「な、なんだと!?『古の結界』に『最短ルート』だと!?そして『魔王城』!?……ゼルガディス!貴様、なぜその『秘匿の情報』を黙っていた!?」
詠美は、ゼルガディスの情報が、これまでの『パニック・コメディ』から、一気に『王道ファンタジー』へと展開を捻じ曲げる可能性を秘めていることに、本能的に気づいた。
(くっ……!ゼルガディスめ!こんな『重要な情報』を隠して、騎士の『嫉妬心』を煽っているのか!卑怯な手だ!)
詠美は、ゼルガディスが自分ではなく、ライエルの嫉妬を誘っていると、盛大に誤解した。




