第九章 隠された結界とゼルガディスの最後の賭け
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その夜、一行は街道から外れた森の入り口で野営を張った。
ライエルが素早く火を起こし、レオンハルトが魔術で簡単な結界を張る。
ミリーは焚き火のそばでクッキーを焼き、ポチはライエルの隣で丸くなって寝息を立てていた。
詠美は、ポチの背中に敷いたローブの上で、相変わらずゼルガディスと『命名権論争』を繰り広げていた。
「聴け、ゼルガディス!貴様の『アビス・イグニス・ナイトメア・ロード』は、長すぎる上に、『王の乗り物』としての『癒やし成分』がゼロだ!私の『ユグドラシル・ナイトメア・フュージョン・メディカル・ハート』、通称『ユグ』こそが、『不治の病』を治す『希望の光』なのだ!」
「くっ……!『偽りの王』よ!貴様の『メディカル・ハート』は、『死の概念』から目を背けている証拠!『終焉』は甘くない!この『神獣』の名は、『終焉』の二文字を含まねば、『魂の座』に座る資格がないのだ!」
二人の痛々しい声に、ライエルは額を押さえた。
「詠美。ゼルガディス。もういい加減にしろ。ポチはどちらの名前で呼んでも、反応しないだろう。どちらの名前も、『干し肉』の前では無意味だ」
「何だと、騎士!」
詠美がライエルに噛みつこうとした、その時。
ゼルガディスが、ロープで繋がれたまま、立ち上がった。彼の目は、ライエルの持つ羊皮紙の地図に釘付けになっていた。




