第八章③
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結局、『命名権論争』は、互いの提案を罵倒し合うという形で続き、決着はつかなかった。
モフモフは、詠美の背中から降りると、ライエルに近づき、彼の持っていた干し肉をそっと鼻で突いた。
「フフフ……!見ろ、騎士!『神獣』が、貴様への『忠誠の証』として、食料を要求しているぞ!」
ライエルは、最後の干し肉をモフモフに与えながら、冷徹な目で詠美を見つめた。
「お前の『モフモフ』は、『干し肉』と『世話を焼く者』を求めているだけだ、詠美」
「な……ッ!何を言うか!」
モフモフは、満足そうに干し肉をかじり終えると、ライエルの隣に座り込んだ。
ゼルガディスは、その光景を見て、再び絶望の声を上げた。
「くそっ!『神獣』が『忠実な騎士』になびいた!私の『闇の支配』は、こんな『低俗な現実』に阻まれるのか!」
ライエルは、モフモフを「ポチ」と呼びながら、その頭を撫でた。
「ポチ。次の街まで、あと少しだ。詠美を落とさないよう頼むぞ」
「ワン」
モフモフは一鳴きし、再び詠美を背中に乗せて歩き出した。
詠美は、ライエルとモフモフの『絆』に、激しく胸の『不治の病』が疼くのを感じた。
(くっ……!騎士め!まさか、『モフモフ』を『嫉妬させるための新たな道具』として使ってくるとは!この恋の病、『究極の難易度』だ!)
モフモフの名前は決まらないまま、一行は次の目的地へと向かうのだった。
詠美とゼルガディスの痛々しい会話は、街道の静けさに響き渡り、レオンハルトとライエルの精神を削り続けた。




