第八章②
2
「聴け、ゼルガディス!貴様の『敗北』により、この『真名』を与える権利は私にある!だが、貴様の『盟主としての情熱』だけは認めてやる!お前も『提案』を述べよ!」
ロープに繋がれたゼルガディスは、顔を上げ、再び厨二病の炎を燃やした。
「フフフ……受けて立つ!『偽りの王』よ!この『神獣』には、『闇の力を司る真名』が必要だ!私の提案は……『アビス・イグニス・ナイトメア・ロード(深淵の炎を統べる悪夢の王)』だ!」
ゼルガディスは、壮大な名前を詠唱し終え、「どうだ」という痛々しい表情を詠美に向けた。
詠美は、モフモフのフワフワした耳を優しく撫でながら、鼻で笑った。
「フン。幼稚だな、ゼルガディス。『深淵』だの『悪夢』だの、『記号的で記号的』だ!このモフモフは、私の『精神安定剤』!もっと『王の孤独』を体現し、かつ『癒やし』の要素が必要だ!」
詠美は、背中のモフモフをそっと抱きしめ、『究極の真名』を提案した。
「我が提案は……『ユグドラシル・ナイトメア・フュージョン・メディカル・ハート(世界樹の悪夢と融合した癒やしの心臓)』だ!通称、『ユグ』だ!」
ゼルガディスは、その「メディカル・ハート」という単語に、激しく動揺した。
「な……ッ!『メディカル』だと!?『終焉』に『医療』の概念を持ち込むとは!貴様、『厨二病の尊厳』を捨てるつもりか!」
「うるさい!貴様の『記号的な闇』では、『不治の病』は治せんのだ!この『モフモフの治癒力』こそが、私の真の力だ!」
二人の壮絶な『命名権論争』は、延々と続いた。
レオンハルトは、道の脇に座り込み、優雅に嘆息した。
「ハァ……僕の『美学』から、これほど遠い光景も珍しい。詠美の『王の孤独』とゼルガディスの『師匠への恋心』が、『究極のネーミング』という名の『醜いアメーバ』を生み出している」
ライエルは、そんな二人の横を通り過ぎながら、ミリーに話しかけた。
「ミリー殿。今日の野営地まで、あとどれくらいでしょう」
「そうねぇ。今のペースだと、あと二時間くらいかしら。『ポチ』もそろそろお腹が空く頃ね」
「ポチ」という名前を聞いた詠美は、モフモフの背中で叫んだ。
「何だ、騎士!貴様、今、『王の神獣』を『低俗なペット名』で呼んだか!?無礼千万!」
ライエルは、一切振り返らずに答えた。
「呼んでいない。聞こえていないふりをしていただけだ」




