第六章 新たな目標とロリへの歪んだ忠誠
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イストリアの街を出て数時間。
一行の構成は、大きく変わっていた。
先頭を歩くのは、依然として冷静なライエルだが、その後ろには、豪華なロココ調ドレスの最強ロリ魔道士ミリーが、優雅にクッキーをかじりながら付き従っている。
そして、その後ろに、「予備の予備の眷属」に降格したレオンハルトと、ロリにゾッコンな態度の詠美が続く。
「フン!やはり『真の王』には、『純粋無垢な装飾』が不可欠だ!ミリー!この『王の道』は歩きやすくあろう?」
詠美は、ライエルをチラッと盗み見しながら、ミリーの肩を抱き、わざとらしく熱い視線を送った。
(いいか、ライエル!私が貴様に『不治の病』を抱いたからといって、貴様に『王の愛』を捧げるとは限らない!この『究極のロリ』こそが、私の『新たな恋の病の特効薬』なのだ!せいぜい嫉妬するがいい!)
詠美の意図とは裏腹に、ライエルは何も感じていない様子で淡々と歩いていた。
彼は、詠美の「王の治癒魔法」という説明を無視し、ミリーの圧倒的な治癒能力とデバフ魔術について、レオンハルトと真面目な意見交換をしていた。
「白薔薇。あの少女の魔力制御は、ギルドの最高位魔道士の域を超えている。お前のギルドには、あのような術式が存在するのか?」
「いや、僕の知る限りありえない。あれは『現象を捻じ曲げている』。僕の魔術が『芸術』なら、彼女のは『神の落書き』だね。……全く、僕の『予備の眷属』としてのプライドが傷つくよ」
二人が真剣な顔で魔術論を交わしている間も、詠美はミリーのツインテールに飾られたリボンを弄び、ラブコールを送り続けた。
「ミリー!このリボン、この『究極のフリル』は、我が『終焉の王』にふさわしい!貴様もこのロリの姿を『絶対』に維持するがいい!さもないと、『王の終焉の罰』が下るぞ!」
「やれやれ。うるさい王様ねぇ」
ミリーはクッキーの粉を払いながら、涼しい顔で受け流す。
詠美は、ライエルが一向に自分たちの方に振り向かず、レオンハルトとばかり話している様子を見て、内心焦り始めた。
(くっ……なぜだ!この『究極のロリ・コンボ』を見せつけているのに、騎士の『嫉妬の魔力』が発動しない!?もしかして、私の『不治の病』は、ライエルには『無関心』という名の『最強のデバフ』を食らっているのか!?)
「……ダメだ」
詠美は不意に立ち止まり、大げさに両手を広げた。
「どうしたんだ、ロード。また『不治の病』が進行したのか?」レオンハルトが皮肉っぽく尋ねた。
詠美は首を振った。
「違う!私の『王の御座』が、まだ『不完全』だ!この旅、何か決定的に『欠けている』ものがある!」
ライエルは、ため息と共に尋ねた。
「今度は何だ、詠美。Wi-Fiか?充電器か?」
「愚問だな、騎士よ!それは『庶民の利器』!私が求めているのは、『真の王の乗り物』だ!」
詠美は目を輝かせながら、両手で巨大な犬の形を作り、熱っぽく語った。
「私の『終焉の王』には、絶対的に『白くてもふもふな巨獣』が必要なのだ!背中に乗れるくらい大きくて、フワフワで、私に絶対服従し、『王の威厳』を高める『究極の神獣』!それが欠けている!」
ライエルは、詠美の言葉に呆れを通り越して、警戒を強めた。
「巨獣だと?危険だ。そんなものが街道にいるわけがない」
「何を言うか!私の故郷では、ああいう『神獣』が、『登校用ペット』として人気だったのだ!あと一枠!私の『眷属』の席が空いている!その『モフモフ』が必要なのだ!」
「『登校用ペット』って……。それは、また新しい設定かね?」
レオンハルトが面白そうにニヤニヤする。
詠美が、ライエルの無関心な態度に苛立ち、ロリに縋り付こうとした、その時。
ミリーが、最後のクッキーを静かにかじり終え、詠美の言葉に反応した。
「ああ、『もふもふで巨大な白い犬』ね。心当たりがあるわ」
全員の視線が、一斉にミリーに集中した。
「な……ッ!本当か、ミリー!?」詠美は歓喜に声を震わせた。
ミリーは、いつもの達観した表情で、ツインテールを揺らした。
「ええ。たしか、その辺りに『巨獣の森』と呼ばれる場所があったわ。私の弟子が、昔、『移動手段』として、そういうのを飼っていたわね。ちょうどいい。お茶会のお供に、ちょっと寄り道してみましょうか」
「ミリーの『弟子』が飼っていた……?」
レオンハルトは思わず呟いた。このロリ魔道士の深すぎる背景に、またも恐怖を感じる。
ライエルは、すぐに地図を広げた。
「『巨獣の森』……場所は知っている。マルツァから離れすぎている。任務から外れる」
「黙れ、騎士!これは『王の緊急最重要ミッション』だ!『モフモフ』は、私の『不治の病』を治すための、『精神安定剤』なのだ!行くぞ!」
詠美は、ライエルの制止を振り切り、ミリーを先導役に、新たな目的地である『巨獣の森』へと進路を変更させた。
ライエルは、その場に立ち尽くし、羊皮紙の地図を握りしめたまま、天を仰いだ。
「ああ……また、公式の街道から外れるのか……」
「不治の病の王」の、「モフモフへの切なる願い」により、一行の旅路は、またもや予想外の方向へと進むことになったのだった。




