第四章②
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「フン!争うのはやめろ、騎士、白薔薇よ!この道は、『真の王の御座』へと続く唯一の道だ!お前たちの『忠誠心』は、私が公平に評価してやる!」
詠美が割り込むと、ライエルとレオンハルトはピタリと言い争いを止めた。
ライエルが、心底疲れた顔でレオンハルトに囁いた。
「おい。やはり、あいつは一度、誰かに頭を叩かれた方がいいんじゃないか?」
レオンハルトは、深紅のローブの袖で口元を隠し、優雅に返した。
「ハァ……無理だね、騎士くん。『ロードの電波』は、物理的な攻撃では治らない。『恋の病』だよ、あれは」
詠美は、レオンハルトの「恋の病」という言葉に、胸の『不治の病』が激しく疼くのを感じた。
「そうか!『恋の病』とは、まさしく『王の病』!だが、その病が私を弱らせることはない!騎士!この『王の病』の原因である貴様は、私の隣に跪け!」
ライエルは、露骨に嫌そうな顔をした。
「嫌だ。邪魔だ」
「何だと!?貴様、王の命令に逆らうか!」
その時、レオンハルトが優雅な笑みを浮かべ、ライエルを挑発した。
「さあ、騎士くん。こんな可憐な『ロード』の命令に逆らうなんて、騎士道に反するんじゃないか?キミは『灰色で無骨な騎士』だが、騎士としての心意気はあるのだろう?」
「お前こそ、『白薔薇の詐欺師』。騎士道について口出しするな」
ライエルはそう言い放つと、レオンハルトに向かって剣の柄を向けた。
「レオンハルト。いい加減にしろ。お前のローブのフリルの数が多すぎる。剣の動きを妨げるし、無駄に目立つ。そのフリルを三分の一に減らせ。それが王城の衛兵としての常識だ」
レオンハルトは、突然の指摘に顔色を変えた。
「はぁ?この『深紅のローブ』は、僕の魔術師としての『美学』だ!このフリルは魔力の流れを整えるための『芸術』であり、『騎士の常識』など、『土くれの常識』でしかない!」
「芸術?くだらん。戦闘で邪魔なものは排除する。俺が今すぐ切り落としてやろうか、白薔薇」
「くそっ、切り落としてみろ!キミの『無骨な剣』で、僕の『繊細な芸術』を汚させるものか!」
二人の喧嘩は、完全に「戦闘服としてのローブのフリルの是非」へと移行していた。
詠美は、二人が自分を挟んで熱い議論をしているのを見て、感動で震えた。
(な、なんと!これが『王を取り合う雄の争い』か!フリルを巡る争い……!騎士は『王の飾り物』としての美しさを求めている!白薔薇は『王の傍に立つ芸術』を主張している!アツい!アツすぎる!)
詠美は、全く関係のない場所で二人が熱く意地の張り合いをしていることを知らず、感謝の涙を流しそうになった。
「ありがとう……騎士、白薔薇よ……。二人の『王への忠誠』、この『不治の病の王』がしかと受け止めた!さあ、行くぞ!『フリル論争』は、魔王城の謁見の間で決着をつけるのだ!」
ライエルとレオンハルトは、互いにフリルを巡る意地の張り合いで睨み合ったまま、同時に深いため息をついた。
こうして、「フリル論争」を抱えたまま、三人の旅は続いていったのだった。




