第四章 予備の眷属とロードの誤算
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マルツァの街を出て数時間。
三人の旅は、一見賑やかになったようで、その実態は混沌そのものだった。
先頭を歩くのは、相変わらず冷静沈着なライエル。
隣には、派手な深紅のローブ(詠美の私物)を纏い、ひらひらと優雅に歩くレオンハルト。
そして、最後尾を、木の枝の剣を抱きしめた詠美が、『不治の病』の痛みに耐えるように、頬を赤らめてついていく。
「フン!騎士!貴様、なぜその『予備の眷属』とそんなに近すぎる距離を歩くのだ!私という『王』の威厳を汚すつもりか!」
詠美は、ライエルとレオンハルトが横に並んで歩き、時折顔を突き合わせて話しているのが気に入らなかった。
(くっ……まさか、あの騎士め!私が『白薔薇の魔術師』に『不治の病』を抱いたことに嫉妬しているのか!?やはり、彼は私に『忠誠心からくる魔力の反動』を感じているのだ!)
詠美は、二人の様子を、「自分を取り合う、三角関係の萌えシチュエーション」と完全に誤解していた。
ライエルは、詠美の声には答えず、レオンハルトと顔を突き合わせ、低い声で議論を交わしていた。
「おい、白薔薇。何度言ったらわかる。俺たちの目的地は、『商隊を襲った盗賊団の討伐』だ。マルツァの衛兵団からの正式な依頼だ。魔王城ではない」
「チッ、野暮な騎士だね。盗賊なんて、火炎魔術で一掃すればいいだろう?それより、キミのその衛兵団の正式地図、ちょっと線が太すぎないか?僕の魔術ギルドの地図の方が、遥かに等高線が繊細で美しい。キミの地図はまるで『子どもの落書き』みたいだ」
「何を言う。国が発行する地図は、実用性と正確性が最優先だ。お前のような『装飾過多』の地図は、山中で魔物に襲われた際に読みづらいだろう。お前の地図こそ、『絵画』にすぎん」
二人が真剣に言い合っているのは、「どちらが持っている地図がより優れているか」という、極めてどうでもいい、男のプライドだけに関わる問題だった。
詠美は、それを聞いて、さらに確信を深めた。
(間違いない!彼らは、『王』である私を、どちらが『真の王の御座』へ案内する権利を持つかで争っているのだ!なんてアツい展開!)




